表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
覇権国家計画  作者: 納豆
PR
52/109

第52話:西側戦線 その一


「少尉。西側戦線は、覇権国家計画の障害です」



帝国西側占領地は、「治安維持区域」から「統合防衛線」へと変わり現在は二個連隊が戦闘を続けている。



戦場となっているのは、農耕と漁労を主とする王国。

通称、『豊浦王国とようらおうこく』。


元は、西側複数国家なる連合国だったが、百年前に独立した。

現在は、近代化が遅れている。


本来なら数年で落とせる相手だ。


しかし、海の向こう『霧宮王国』が、兵器供与を開始し、異世界人と思われる者の助言で「近代的な陣地死守戦」へ移行した。



『霧宮王国』の目的は、帝国の国力を削ること、帝国が覇権国家となるまでの時間を稼いでいる。


『覇権国家計画』の最終目的は、強固な相互依存による世界大変阻止。

だが、『霧宮王国』が、それを知っても協力はしないだろう。


一つの国家が強力な力を持つことには変わらない、世代が変われば、いつ暴走するか分からない。


『霧宮王国』は、自分では帝国に勝てないから、『豊浦王国』に兵器供与し代理戦争を行っている。



「少尉。帝国が占領地を放棄すれば、『霧宮王国』は手を引くのでしょうか」


俺は、壁に掛けられた地図を見る。


「中尉。それはダメです」



占領地ではあるが、帝国は平和維持として、俺が仕様書を描いた、大規模なODA(政府開発援助)を行っている。(第35話)


河川は整備され、農地は農薬と肥料により安定し、わだちコンクリート街道により流通が発展した。

それらは、帝国無しでは維持できない。



「少尉。帝国が撤退すると、再び飢えで子供が死ぬということですね」


「投資が無……」


俺は言葉を止めた。


「……帝国は、人道的観点から撤退するべきではありません」



『霧宮王国』の目的は、すでに達成できている。

戦争を継続することで、帝国の国力を削ることに成功している。


参謀本部は、俺が想像するより、遥かに優秀だ。

『霧宮王国』の目的も理解し解決策も準備している。

東の『赤旗国せっきこく』の物量侵攻を停止させる大規模作戦。

『甘い果実』。


俺の仕様書を異例の速さで採用したのも、東の戦力を西に集めるためだろう。

帝国と『霧宮王国』では兵器性能が違うのだ。

帝国が、数を揃えば強固な陣地でも関係ない。


だが、『赤旗国』は完全に止まったわけではない。

まだ東の戦力は動かせない。



「少尉。あなたが『霧宮王国』の異世界人の立場だったら、どうしますか」


俺は椅子に座り直し、目を閉じて直ぐに開けた。


「中尉。費用対効果を合理的に判断します」



『霧宮王国』の異世界人は無能ではない。

帝国と同じく、自国の政治・軍事に深く関わり、百年先を見ている。

『豊浦王国』での戦争は、『霧宮王国』に取って過程でしかない。


『霧宮王国』が、投資に合わなければ、損切りする。



「中尉。『霧宮王国』と同じことをして『霧宮王国』の国力を削ることは可能です」



『豊浦王国』、西側戦線で、鹵獲ろかくした野戦砲は、『霧宮王国』制だった。

帝国政府の追及に、野戦砲を運搬していた民間船が、海賊に襲われただけ、今後は、海軍が民間船を護衛すると、帝国の調査を拒否したのだ。



つまり、西側戦線周辺の海域には、民間船を襲う『海賊』が存在するのは事実だ。


例えば、西側戦線周辺の海域で、帝国の民間船が『海賊』に襲われたとする。


それは、『霧宮王国』の海軍は、自国の民間船しか守っていないということになる。

ならば、帝国海軍が、帝国の民間船を守るために帝国海軍の駆逐艦や砲艦が、護衛することに非難は出来ない。



「少尉。つまり、海賊対策ですか」


「中尉。はい。帝国は民間船を保護するだけです」


その中に、多数の上陸艦が混ざっていても帝国海軍の運用に『霧宮王国』は何もできない。


「少尉。上陸艦も護衛任務に必要だと」


「中尉。偶然です」



帝国は、渡りの絵師や語り部たちに「報道の自由」支援する(第33話)として

旅費を補助している。

ただし『信頼に足る一次情報を基にした発信』という規約だ。

『霧宮王国』の公式声明は、信頼できる。


帝国は「道の駅(PA/SA)網」により、情報の伝達は速い。

帝国海軍が『海上保険制度』を開始すれば、直ぐに注目されるだろう。



参謀本部(陸軍)から海軍司令部(第23話)に、海の相手は海軍司令部に尽力いただきたいと通達(お前たちは無能)すれば、海軍は動くはずだ。


海軍司令部は、流石に管轄外だ。

俺は、作戦趣旨概要を簡単な書類にまとめ上げ、参謀本部に提出した。



案は出したのだ。

採用するかどうかは、参謀本部の判断になるし、採用してからも参謀本部と海軍司令部の軍政になる。

事務職で、少尉の俺は無関係だ。



一週間後。


完璧に調律された楽器のように平坦に微笑む中尉が、無言で特別監察室に入ってきた。

――中尉との、付き合いも十一年目だ。とても嫌な予感がする。



「少尉。海軍司令部は、民間船の護衛任務を受け入れました」


……予感は、違ったようだ。

最近、士官食堂で、微笑む中尉は危険だとの噂を聞いた。

やはり噂など、信じてはいけない。



「少尉。海軍艦型試験池の大佐が、技術実査の担当者に、あなたを指名しています」


「少尉の俺に!、海軍新型艦試験場の場に乗り込めと!?」


思わず、大声で言い返してしまった。


この作戦は、参謀本部から海軍司令部に対して、現場の責任を取れと突き立てられたに等しい。


そこに、参謀本部直轄の特別監察官。

それも若造が乗り込むのだ。

肉体的な危険は皆無でも、空間を支配する重圧に心が押し潰されるのは必至だ



「少尉。あなたが以前提案した、野戦砲を甲板に固定した新造艦の技術実査ですよ」


……昔、海軍司令部に行ったときに雑談の中で言ったことが、あるような気がする。

実践で使用可能な状態まで来ているとは、思わなかった。



中尉から渡された書類を確認した。


『試作強襲野戦砲上陸艦』


砲撃で敵防衛部隊を壊滅させ、そのまま歩兵を突入させる――。


言葉の意味は分かるが、彼らが本気でそれを言っているのだとしたら、理解の範疇を超えている。



俺には、戦術も戦略も分からない。

海軍司令部も、参謀本部と同じく優秀だ。

採用したのだから実戦で有効なのだろう。



海軍艦型試験池へと向かう馬車の中で、俺は『試作強襲野戦砲上陸艦』の運用思想を再確認していた。


「砲撃で敵を壊滅させ、そのまま上陸する」


狂気じみた発想だ。


だが、現代の上陸艦の発展形として考えれば、その理屈は分かる。

ただ兵員を運ぶだけの輸送船ではない。

自前の火力で沿岸防衛を吹き飛ばし、その勢いのまま歩兵を突入させる。


既存の野戦砲を甲板に並べただけの急造艦。

だが、艦砲射撃と揚陸を同時に行うという思想そのものは合理的だった。

技術不足のこの世界で、既存兵器だけで無理やりそれを実現しようとした執念すら感じる。


――悪くはない。


……もっとも。


実際には、どちらの任務も中途半端な「器用貧乏」の鉄屑になる可能性が高いのだが。


海軍司令部が、それを理解していないとは思えなかった。


読んでくださり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ