8-2・闇の侵食
この先、しばらくの話は、後から爺さんや紅葉に聞いた話になる。
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爺さんが虫の息の俺を抱き寄せて服を捲り上げると、腹を中心に、血が鬱血したように体中が黒ずんでいた。
「燕真っ!」
体中が闇に浸食をされて、手の施しようが無い状況だった。霊感の無い俺に鬼印を打ち込んでも、受け皿がゼロなので受け付けることは無い。だが、茨城童子は、『酒』メダルに鬼印を打ち込み、妖幻ファイターに武装化をするたびに、闇で汚染されるように仕向けた。その結果、妖幻ファイターという外殻から、俺の全身が汚染された。霊感の在る者ならば、体が闇に蝕まれ始めた時点で異常に気付いただろう。しかし、霊感ゼロゆえに、闇に汚染されていることに気付けなかった。
俺だけが「都合の良いチートを与えられる」なんて御都合主義は無い。これが、他者に与えられた不相応な力を自分の力と錯覚して、霊感ゼロを‘特殊能力’のように誤解した結果である。
「あとは、死を待つのみ。」
「・・・燕真が・・・死ぬ?
なに言ってんの?そんなワケ無ぃじゃん。
・・・燕真が死んじゃぅなんて有り得なぃ!!」
紅葉が、俺を抱きしめて、何度も名を呼ぶ。
「燕真ゎ死ななぃ!!ァタシが死なせなぃもん!!」
「気持ちや気合いだけではせんない!!オマンにだって解るやろ!!」
鬼印を埋め込まれただけなら、爺さんや狗塚ならば処理ができる。だが、鬼印と酒呑童子の妖気が混ざり合い、妖幻システムを内側から汚染して、俺の体に「侵食」という刃を打ち込んだ。これでは、邪気祓いができない。俺の体は、俺自身がが気付けないうちに、もう保たないところまで、闇に食われていた。
「嫌だ・・・燕真が死ぬなんて、絶対に許さなぃ!
じいちゃんが何にもできなぃなら、ァタシが何とかする!!
ァタシが、燕真の中にある悪い奴を全部追い出してやる!!」
「やめるんや!!除霊術も知らないオマンが何をする気や!?」
爺さんの制止を聞かずに、俺の手を握って念を送り込む紅葉!途端に、俺を蝕んでいる闇が紅葉の霊力に反応をして、紅葉の手に侵入をしてきた!
「きゃぁぁぁっっっっっ!!!」
慌てて、爺さんが紅葉の手を俺から引き剥がして、紅葉の手に憑いた闇を祓う。体の中に流し込まれた霊力は、闇を活性化させる餌にしかならない。紅葉の手段では、何も解決ができないのだ。
「イヤだ・・・イヤだ・・・燕真が死ぬなんて、絶対にイヤっっ!!
お願ぃだょ燕真!寝てなぃで起きてょ!!
寝たふりなんて止めてよぉぉぉっっ!!!」
涙ぐむ紅葉。爺さんは、紅葉に掛けてやる声が見付からずに沈黙をする。
「可能性は極めて低い・・・が、ゼロではない。
佐波木の延命処置をお願いします。」
狗塚が、富運寺を眺める。彼は、現状を諦めていない。
「佐波木の体は、鬼印と酒呑童子の混ざり合った妖気に蝕まれている。
酒呑童子の影響力を排除して、鬼印のみになれば、浄化できる。」
「まさっち・・・それって?」
「つまり、酒呑童子を倒せば、佐波木を救える!」
「無茶や、狗塚!」
「本部からの援軍が向かっているんですよね?」
「2~3時間後には到着する予定や。」
「厳しい戦いになりますが、決して不可能な希望ではありません!」
「・・・狗塚」 「まさっち」
「俺は鬼専門の退治屋として、やるべきことをやります!」
狗塚は、俺を爺さんに託し、妖幻ファイターへの武装化をして、富運寺に突入をする!
「・・・頼んだで、狗塚。」
その直後、爺さんと紅葉の背後から冷たい風が吹いて、氷柱女が出現。氷柱女は、黒ずんで横たわる俺と、泣きながら俺の名を呼び続ける紅葉を見て顔をしかめる。
「酷い有様だな。
・・・此処では、延命も施せまい。」
「ああ・・・そうやな。ワシ等では燕真を動かすこともままならん。頼めるか?」
「あぁ・・・容易い。」
氷柱女が呪文の詠唱をすると、吹雪を帯びた竜巻が舞い上がって俺達を包み、周りがホワイトアウトをする。そして、吹雪が晴れた時には、富運寺から200mくらい離れた空き家の車庫に移動していた。
「オマエの屋敷の土蔵のような整った条件ではないが、どうにかなるだろう。」
「ああ・・・助かったで。」
爺さんは、俺を車庫の中央に寝かせて、周りに「生命維持の結界」を張る為の準備をする。
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