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7-1・優麗高の結界と虎熊童子

 俺達(妖幻ファイター)は優麗高の正門前にバイクを駐めて様子を覗う。悪しき気配は内側から発せられているようだ。


「拙いな。生命力が浮上している。」

「どういうことだ?」

「屋上に発生している呪いで、生徒達の生命力が吸い上げられている。」

「マジかよっ!」


 平穏にしか見えないが、狗塚が言うのなら間違いないだろう。言うまでもなく「生命力を吸っている呪い」とやらを消さなければならない。


「よせ、佐波木っ!」


 狗塚(妖幻ファイター)の制止を聞かずに駆け出して正門を通過。しかし、校庭に踏み込んだはずなのに、目の前には狗塚(妖幻ファイター)がいた。振り返ると、突入したはずの優麗高が建っている。


「なにっ!?」


 ‘内側に入れない’状況は経験したことがある。


「・・・結界か!?」


 鬼は小賢しい。優麗高に‘生命力吸収の呪い’を発生させ、妨害できないように校庭全体を遮断結界で囲んでいるのだ。


「これじゃ、俺達が中に入ることも、紅葉達を脱出させることもできない。」

「だから『待て』と行ったのだ、未熟者めっ!」

「くそっ!」


 結界には何度か痛い経験をさせられているので、一定の警戒はしていたつもりだった。だが、「学校内にいる紅葉を助けなければならない」という感情が優先されて、結界のことを忘れていた。


「1つずつ解決せねば、状況を打破させることなどできない。

 先ずは、結界を読み相殺結界を作る。突入と呪いの排除は、そのあとだ!」


 狗塚(妖幻ファイター)が結界に触れ、目を閉じて意識を集中させ、結界の周波数を確認する。俺は、狗塚の打開策を待つことしかできず、気を逸らせながら見守る。

 ・・・だが!


「黙って見ているとでも思ったか?」


 正門の門柱上に闇の霧が出現して、直径2mほどに広がってから人型を形作る!

 着物を着て腰には日本刀を帯刀して、緑色の肌で、目を布で覆った銀髪の少年。「少年」と形容したが「派手な格好をしている普通の少年」ではないことくらいは直ぐに解った。頭部には鬼族を象徴する角が生えている。


「くっ!貴様も来ていたのかっ!」

「知っているヤツか?」

「虎熊童子!羽里野山で倒した星熊童子と同格の四天王だ!」


 冗談ではない。1秒でも早く結界相殺をしてもらって、紅葉や優麗高生徒達を助けなければならない。


「悠長に戦っている余裕なんてねーんだよ!」 


 妖刀ホエマルを装備して、門柱の上に立つ虎熊童子に突進をする!しかし、次の瞬間には虎熊童子を見失っていた!


「消えたっ!!」


 気付いた時には、虎熊童子が目の前にいた!


「なにっ?」


 虎熊童子が腰に納刀した日本刀の柄に手を添える!


「消えてね~よ。アンタが、すっトロいんだ。」


 後退も防御もできないまま、素早く抜刀した刃を叩き込まれる!


「うわぁぁぁっっっっっっっっっっっっ!!!!」


 全身から火花が発して発して、仰向けに倒れる!たった一撃を喰らっただけなのに、ダメージが大きすぎて全身が痺れ、立ち上がることができない!虎熊童子が俺(妖幻ファイター)の脳天目掛けて、追い撃ちの刃を振り下ろす!


「焦りすぎだ、未熟者!」


 鳥銃・迦楼羅焔を構えた狗塚(妖幻ファイター)が、虎熊童子に向けて光弾を連射!虎熊童子は、俺へのトドメを止め、数発を刀で受け流し、数発を回避しながら距離を空ける!


「・・・狗塚の末裔、熊と星熊の仇だな!」

「鬼は殲滅する!」

「やれるもんならやってみろ、枯れた家系!」


 狗塚(妖幻ファイター)は、光弾の連射を続ける!距離を空けて回避を続ける虎熊童子!狗塚の銃は素早い虎熊を捉えることができない!


「おい、狗塚!」

「君は手を出すな!」


 狗塚(妖幻ファイター)のパワー切れが先か、鬼の足が止まるのが先か、我慢比べの長期戦になりそうだ。


「くそっ!これじゃ、結界を破れない。紅葉を助けに行けない。」


 本来ならは、力の劣る俺が此処で鬼を足止めして、陰陽に精通した狗塚が学校の呪印を取り除きに向かうべきだが、狗塚(妖幻ファイター)は聞く耳を持たない。

 彼の強さは信頼をしている。彼は冷静に戦っている。だが、鬼を目の前にすると「鬼憎し」の感情を最優先にしてしまうようだ。


「俺がやるしか無いってことか。」


 意を決して、優麗高の校舎を見上げる。


「解ったよ。虎熊は任せる。・・・俺は」

「んっ?」


 ベルトのバックルからメダルを抜き取って武装化を解除。生身に戻ったので、優麗高を覆っている悪しき気配は全く感じられない。

 驚いた狗塚(妖幻ファイター)が、攻撃の手を止めてチラ見をする。


「何のつもりだ!?交戦中に武装化を解除するなど、未熟では済まないぞ!」

「『戦う気が無い』って言ったら、さすがに怒るよな?

 だけど、これ以外に、自力で結界を通過して、

 紅葉を助けに行く方法を思い付かない!」


 優麗高の校舎を睨み付けて突進。今度は結界の干渉を受けることなく、校庭に踏み込めた。


「なにぃっ!オマエ、どうやって結界の攻略を!?」

「バカなっ!?」


 狗塚(妖幻ファイター)と星熊童子が、同時に驚嘆の声を上げる。俺は、振り返ってサムズアップを決めた。


「へへっ!スゲーだろ!霊感ゼロだからさ!結界も干渉しないだ!」

「た・・・確かに凄い。

 だが、起動中の結界の中では、妖幻ファイターへの武装化はできないんだぞ!

 陰陽スキルがゼロの君が結界内に入って、何をする気だ?

 君では、呪印を解除するどころか、見付けることもできまい。」

「まぁ・・・それを言われると辛いんだけどさ・・・

 とりあえず、紅葉や学生達の安全確認と避難指示くらいはできる。」

「・・・やれやれ。もう少し熟慮をしてから動いて欲しいものだ。」


 狗塚(妖幻ファイター)が溜息を付く。


「先ずは紅葉ちゃんと合流しろ!彼女なら、結界起点の位置を特定できるはずだ!」

「ああ・・・まぁ、そうだろうなぁ・・・」

「白メダルは持っているよな?」

「当然だろ。」

「ならば、結界起点を見付け次第、その位置に白メダルを置け!

 そうすれば、白メダルの浄化能力が機能して、術式のバランスを崩してくれる!

 妖幻ファイターへの武装化は可能にする為には、結界解除が最優先だ!」


 白メダルには邪気を浄化して封じ込める便利機能がある。ただし、通常の退治屋は、白メダルなど使わずに、自力による結界相殺や呪印解除をする。理由は、白メダルが高額なので、価値を作れる妖怪の封印以外に使っても採算が合わない為。


「うわぁ~・・・赤字かよ?また、爺に皮肉られそうだな。」

「生身で敵の結界内に飛び込んだ君なら、それくらいの覚悟はできるだろう。」


 赤字は嫌だが、事態を打開する手段が他に無いのなら仕方が無い。


「チィ!素で結界を通過するなんて聞いてねーぞ!」


 虎熊童子が追って来ようとしたが、狗塚(妖幻ファイター)が光弾を連射して足止めをしてくれた!


「狗っ!虎熊は任せた!先に屋上に行って待ってるぞ!!」

「この先には、鬼の副首領・茨城童子がいるかもしれん!

 結界相殺はともかく、戦闘では無理をせず、俺の参戦を待て!」

「なんか親切っぽい言い方してるけど、

 『鬼はオマエが倒すから手を出すな』ってことな!?」


 狗塚と行動を共にすることができないのは些か不安だが、文架の退治屋は狗塚ではない。文架で起こる事件は、他者に頼らず俺が解決するべきこと。紅葉が危機に瀕しているなら、尚更、他人には任せる気は無い。

 優麗高の校舎に向かって突っ走る!

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