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6-6・狗塚の正論と紅葉の持論

-YOUKAIミュージアム-


 戻ったら、駐輪場には狗塚のバイク(ヤマハ・MT-10)があった。


「アイツ(狗塚)、戻ってるみたいだな。」

「ぁんにゃろぅ!すげームカ付くぅぅっ!!」


 紅葉は、ホンダVFR1200Fのタンデムから飛び降り、慌ただしく駆けていく。


「・・・お、おい、紅葉!!」


 根拠は無いが嫌な予感しかしないので、慌てて愛車を駐めて紅葉を追った。




-店内-


「この、冷血野郎っっ!!!」


 店内に入ったら、紅葉が狗塚の前に立って、両手の平で思いっ切りテーブルを叩いていた。上にあるティーカップが軽く飛び上がって、陶器同士がぶつかる音を立てる。嫌な予感は正解だったらしい。

 カウンター内の爺さんは「何事か?」と眺め、張本人の雅仁は、迷惑そうに紅葉を見つめる。


「・・・ん?」

「『ん?』ぢゃなぃ!!しらばっくれるな!!

 何で燕真を助けなぃ!!?目の前に妖怪ぃるのに無視すんな!!

 ァンタゎ、逃げてる人を見て、何とも思わなぃの!!?

「ああ・・・また、その事か?」

「あ~ゆ~ときって、何だかんだ言いながら助けてくれるパターンぢゃないの?

 マヂで先に行くとゎ思わなかったっ!すっげームカ付く!」


 狗塚は「先ずは落ち着け」と言う意味を込めて、向かいの席に座るように促すが、紅葉は応じない。


「いいか?俺の使命は鬼退治。

 地域の妖怪に対しては、粉木さんのように専門の退治屋がいる。

 これは理解しているよな?」

「・・・だからなにっ!?」

「君の言う『目の前の困った人を助ける』のも解るが、

 目の前のことに捕らわれていれば、

 やがて鬼がもたらす大きな被害を抑えられなくなる。

 だから俺は、先に予想される大きな被害を最小限に食い止めようとしている。」

「あっそう!それで!?」

「君だって同じはずだ。

 彼(佐波木)の戦いを眺めていても、君は邪魔にしかならない。

 戦線を離脱して俺と一緒に行動をすれば、君ができることはいくらでもある。」

「バカにするな!ァタシゎ燕真のジャマぢゃない!!」

「俺が言いたいのは『君が邪魔かどうか』ではなく、

 『君にもできることがある』の方なんだが・・・」

「目の前の怖がってる人達が死んじゃったら、ァンタはどう責任を取るんだ!?」

「それは、俺達や退治屋の考えることではない。

 妖怪が存在するからには、犠牲を出さないなんて不可能なんだ!

 退治屋の業務は妖怪の退治!俺に課せられているのは鬼の退治!

 その過程で、助けられる人も、助けられない人もいる!」

「違ぅもん!!燕真ゎ、沢山の人を護ってるもん!!」


 最初は冷静に対応をしていた狗塚だったが、紅葉に煽られて、徐々に声を荒げる。


「未熟者の論理を持ち出すな!!

 君は、あんな奴と一緒に居る所為で、自分の価値に気付いていない!!

 あの未熟者が、君の才能を潰していることに気付け!!」

「燕真を悪く言うなぁっっ!!!」

「論点は其処ではない!!君は君の才能を活かすべきと言っているんだ!!」

「サイノーとか、そんなの知ったことかぁぁ!!!燕真をバカにするなぁぁっ!!!

 燕真ゎァンタとゎ全然違うっっっ!!!」


 何で紅葉が怒ってるのか解らなかったので、しばらくは黙って聞いていた。


「ん?何を怒っているのかと思ってたけど・・・喧嘩の理由は俺?」


 序盤は、狗塚の言い分が正論で、紅葉は聞く耳を持っていないって印象だったが、いつの間にか「俺の所為で喧嘩になった」みたいな口論をしており、結局は、何で紅葉が怒っているのか解らない。


「おい、紅葉、先ずは落ち着け。」


 とりあえず、怒鳴り散らしている紅葉を羽交い締めにして抑える。


「聞いてよ、燕真!コィツ、燕真をバカにしやがったの!!」

「俺がバカにされたから、ここに到着するなり、店に怒鳴り込んでいったのか?」

「そぅだょ!燕真をバカにしたコィツがムカ付くから!!」


 紅葉は、羽交い締めを解き、俺を見ながら怒鳴り続ける。


「話の辻褄が合ってないぞ!とりあえず、落ち着け!」

「燕真に謝れ!!そぅしたら許してやる!!」

「俺が俺に謝るの?怒鳴る方向が違うぞ、紅葉!喧嘩の内容は何だ!?」

「コィツが燕真をバカにしやがったのっ!!」

「だ~か~ら~・・・それでは話の辻褄が合わないってんだよ!」


「いい加減にせい、オマン等!少し頭冷やせ!!」


バシャァァッッ!!

 次の瞬間、爺さんの怒鳴り声と共に、冷や水が浴びせられた!


「わぁぁっ!冷てっっ!!!」


 ズブ濡れになった俺、袖の当たりを少し濡らした紅葉、髪や上着を少し濡らした狗塚が、同時にバケツを持った爺さんに視線を向ける。


「なんで・・・俺メイン?」

「・・・見せしめや。ちょっとは頭が冷えたか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」×3


 なんで部外者の俺が「見せしめ」を喰らうのかは理解不能だが、おかげで、紅葉の怒りは少し冷めたようだ。その代償で、俺の全身は、もの凄く冷えちゃったけどさ。



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