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5-1・結界と紅葉の異才

-YOUKAIミュージアム-


 羽里野山での一連は疑問だらけだった。粉木の爺さんへの報告を終えたあと質問をする。


「なぁ、爺さん・・・黄色い妖幻ファイターは、一体?」

「燕真(妖幻ファイター)と似てたけど、鳥みたいなヤツだったよ。」

「奴は狗塚雅仁。

 千年以上も前から続いておる、朝廷や貴族に仕えた先祖代々の陰陽師の家系や。」


 一般的な退治屋とは違って、組織に所属をしていないフリーの妖幻ファイター。陰陽師だった狗塚の祖先が、約900年前に封印した天狗の力を現代の退治屋の技術で武装化したのが、狗塚雅仁の妖幻システムだ。


「へぇ~・・・そんなのがいるのか?」

「今でこそ、狗塚の陰陽と、退治屋の技術を持ち寄って、

 共有の妖幻システムを使っておるが、考え方はワシ等退治屋とは全くの別もんや。

 退治屋で飯を食っていくつもりなら、あまり深入りをせん方がえぇで!」

「『深入り』たって・・・アイツを呼んだのはジイさんなんだろ?」

「お友達ぢゃないの?」

「特別に親しゅうしてるワケちゃう。狗塚家は、鬼退治の専門やから呼んだんや。」

「オニタイジ?・・・桃太郎さんみたいなの?」

「まぁ、そういうこっちゃ。」

「今回の事件に鬼が絡んでいるって知っていたのか?」

「氷柱女を問答無用で縄張りから追い出すような奴やからな。

 可能性くらいは考えておった。

 そやさかい、厄介思たら直ぐに引き替えせと釘を刺したのに、

 オマエ等と来たら、忠告を無視して、アッサリと巻き込まれやがって・・・。

 ワシが狗塚を呼んでおれへんかったら、確実に死んどったぞ。」

「・・・それを言われると、ぐうの音も出ない。根回しには感謝してるよ。」


 爺さんからの、それ以上の説明はなかった。しかし、「狗塚」には深入りしないとしても、今日の戦いで知り、興味を持ったことが他にもある。


「アイツ、相殺結界ってのを使ってたな。

 結界って、妖怪だけじゃなくて、人間にも使えたのか?」

「名門の血統やからな。結界を使えたとしても、何も驚くことはない。」

「もう少し教えてくれよ。

 今後も、結界を張る妖怪と戦う事になるかもしれないから知っておきたい。」


 結界

  一定の技術を習得した人間、一定の言語や知能を持つ妖怪が使用する。

  術者に有利に働く空間。


 広域結界

  広範囲に薄く張り巡らせる結界。範囲は、術者の力量による。

  発動者が縄張りを目的として使用する結界で、部外者の進入は比較的容易。

  温羅が山全域に張った結界や、絡新婦が優麗高に張った結界が該当する。


 集中結界

  密集した範囲に強く張り巡らせる結界。

  範囲と部外者への強制力は、術者の力量による。

  部外者の進入妨害、閉じ込めた者の脱出妨害、内部での能力低下などが生じる。

  星熊童子のように、戦いを有利に進める等の戦略面に有効。

  ただし、広域結界に比べて術者への負担も大きく、術者の力量を選ぶ。


 結界破壊

  集中結界を破壊する事。

  結界以上の妖力をぶつけて押し潰す、

  もしくは、結界の起点を破壊して結界全体のバランスを崩す。

     

 結界相殺

  広域結界、または、集中結界の内部に別の結界を張って、一部を清浄化させる。

  結界破壊ほどの妖力は必要としない。

  ただし、既存結界を無効化する為に、既存結界の種類を読んで、

  状況に合わせた呪文の詠唱をする為、一定の知識や技術が必要。


「なるほどね・・・

 それでさ、その結界術ってのは、狗塚って奴にしか使えない技術なのか?」

「いや、そないことはあれへん。ワシ等退治屋も状況次第で使っておるで。

 ただし、人間は妖怪のように、逐次、膨大な妖力を保有してるわけちゃうさかい、

 結界術を用いる場合は手順が必要やねん。

 妖幻ファイターに変身をして、システムに内蔵された妖力を利用するか、

 日常的にアイテム(銀塊や護符)に霊力を蓄えとき、

 使用時に妖力に変換をして開放する。

 宝石・金塊・銀塊は霊力を備蓄しやすう、特に金塊は備蓄に適してるけど、

 そんな高価な物を、幾つも所有することはでけへん。

 一般的には銀塊が使用されてる。」

「そっか、血統証が無くても使えるんだな。

 だったら、俺にも教えてくれ。・・・てか、なんで俺には教えてくれないんだよ?

 狗塚ってのに『結界相殺を知らないのか?』ってバカにされたんだぞ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「なぁ、爺さん!」


 粉木の爺さんは、溜息をついて立ち上がり、庭に出て拾った物を持って戻り、卓袱台に置いた。それは直径5㎝くらいの石だった。


「・・・石?」

「オマンも、石には念が残るって話は聞いたことあるやろ?

 金や銀ほどではないが、石にも霊力は溜められる。

 結界を教えて欲しいなら、その石に霊力を込めてみい。

 それができたら結界の作り方を教えたる。」

「・・・わ、わかった。試してみる。」


 石を掌に乗せて、しばらく見つめてから、握り締めて瞑想をしてみる。


「なにやってんの燕真?寝るの?」

「チゲーよ!石に念を・・・。」

「そりゃ、石を握って、目を閉じ取るだけや!念なんてなんも籠もっておらん!

 霊力の‘れ’の字も知らんオマンに、霊力を溜めるなんてできるワケがないんや!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ~~~」


 次に爺さんは、金庫の中から直系2㎝くらいの銀塊を一粒取り出して、呪文が書かれた紙と一緒に卓袱台に置いた。


「呪文を詠唱しながら、銀塊にオマンの中の霊力を一押しだけ送り込んで、

 銀塊の中に溜まった霊力を開放してみいや!」

「・・・・あぁ・・・・・・・うん・・・・」


 手の平に載せた銀塊を見つめてから、紙に書かれた呪文を読み上げてみる・・・が、ぶっちゃけ、俺自身、成功するとは思っていない。


「話にならんわ!」

「あのさ、燕真・・・その銀の石、念なんてカラッポだよ。」

「えっ?マジで??騙したのか、粉木ジジイ!」

「ワシは、ハナっから、オマンが念の開放なんぞ出来るとは考えておらん。

 触れてみて、念が籠もっとるか籠もっとらんかも解らんないような奴に、

 結界の何を教えれば良いんじゃ?」

「・・・・・・・・」

「そもそも、オマンは文架市におっきな龍脈があることや、

 幾つかの隠れた結界があることすら気付いてへんやろう?」

「濃ゆいモヤモヤが流れてんの『りゅうみゃく』っていうんだ?

 ァタシ、結界ってゆーのゎハヂメテ知ったけど、

 文架市の真ん中がキラキラしてて、なんか特別な感じなのは気付いてたよ。

 もしかして全然わかんなかったの?あ~そっかぁ~、霊感ゼロだもんねぇ~。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」


 ヤッベェ~・・・今の俺、泣きそうだ。


「せやから言うたやろ!

 結界を壊すには、それ以上の力で外部から破壊するしか無いんや。

 オマンの場合は、妖幻ファイターになって、力業で結界を破壊する以外には

 対処法なんてあらへん。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 霊感ゼロをバカにされるのは毎度の事だが、さすがに、結界の便利さを知った直後に、才能の無さを宣告されるのはショックだ。


「なんで、霊感の才能が1個も無いオマンが退治屋になれたのか、

 ワシには解らへん。

 せやけど、霊感ゼロゆえに、干渉を一切受けんは、オマンの強みや。

 そう考えるんやな。」


 一応、フォローをしてくれているんだろうけど、気分は晴れない。大きな溜息をつきながら、銀塊をテーブルの上に置いて、スッカリ覚めてしまったお茶をすする。


「わっ!わっ!凄ぃょ、凄ぃ凄ぃ!!」


 先程まで隣で興味津々と銀塊を見つめていた紅葉が、いきなり奇声を発する!振り向くと、紅葉が手の平に銀塊を乗せて嬉々として騒いでいた!


「ねぇねぇ、じぃちゃん!溜まった溜まった!これで良ぃんでしょ!?」


 紅葉が手の平に銀塊を乗せているようにしか見えないが、爺さんは驚いた表情をして、銀塊を慌てて奪い取った!


「は、話は終いや!!燕真では結界は操れん!解ったやろ!!」

「でも、ァタシなら霊力込めができるみたぃだょぉ!

 試しに、開放もできるかやってみょっかぁ?」

「試してみろよ!」

「アカン!もう終いや!!」

「ぇ?なんでぇ!?」

「試すくらい良いんじゃないのか?どうせ、紅葉が込めた念なんだろ!?」

「ええか、お嬢!オマンは結界術は使てはアカン!!」

「ぇ?なんでなんでぇ!?」

「知識が無いままで使えば、命の関わる事もあるんや!

 結界には、身を削るほどの生命力が必要なんやぞ!!」

「あぁ、そっか!でも、なら、ちゃ~んと、ぉ勉強するから!」

「アカン!!そない勉強をしとる暇があるなら、学校の勉強をせい!!

 この話は終いや!!」


 結局、爺さんがそれ以上は取り合わず、会話はほぼ強制的に終了をさせられる。



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