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狗塚雅仁の視点・文架市へ

-京都府・大江山-


 頭には角がある数十の妖怪が集結をしていた。妖怪の中で‘エリート’と呼ばれる鬼族だ。集団より1段高い岩の上に、威厳のある青鬼と、細身の白鬼、巨漢の赤鬼がいる。

 リーダー格の青鬼は茨城童子、細身の白鬼は星熊童子、巨漢は熊童子・・・鬼族の幹部達だ!


「皆の者!ようやく、御館様の所在が判明した!!

 誇り高き鬼族の力を集結させて、奪還するぞ!!」


 茨城童子が号令を掛けると、群がった鬼達は一斉に咆吼に似た歓声を上げる!



 俺は、木陰に隠れて襲撃のタイミングを図っていた。


「鬼は皆殺しだ!」


 空中で呪印を施し、小声で呪文を唱える。

 山の各所に仕掛けていた呪符が輝き、それぞれの光が繋がって、大江山中腹から山頂を包むようにして、巨大な光の柱が立ち上がった!そして、呪符の光に反応をして、山のあちこちにバラ蒔いておいた銀塊や石つぶてが、白光に包まれながら空に跳び上がり、鬼達の集団を目掛けて、弾丸のように一斉に降り注ぐ!


「ガォォォォン・・・これは!」

「妖怪封じの結界!?」

「いかん!身を守れ!!」


 不意突かれた鬼達は、各々で防御をしたり、障害物に身を隠すが、何体かはハチの巣になって崩れ落ちる!幹部達は妖気で防壁を張ったが、対応が後手に廻ってしまい、石つぶては止めるものの、何発かの銀塊に防壁を貫通されてダメージを負う!


「掛かったな・・・鬼共!!

 オマエ等の動きは事前に察知をしていた!

 必ず、古のアジトであるこの地に集結するだろうと、結界を仕掛けておいたのだ!!」


 俺は鬼達の前に進み出て睨み付けた。奇襲だけで終わらせるつもりはない。目的は「奴等を全滅させる」の一択のみ。


「おまえは!!・・狗塚の!!」

「この結界内では、オマエ等はロクに力を発揮する事が出来まい!」


 左腕の裾をまくり、左手首に巻いた腕時計型のアイテムを正面に翳して、『天』と書かれたメダルを抜き取り、一定のポーズを取りつつ、五芒星を模したバックルに嵌めこむ!


「・・・・幻装っ!!」

《GARUDA!!》


 電子音声が鳴ると同時にベルトが発光して、全身が黒いアンダースーツに包まれる!続けて、五芒星バックルから幾つもの光が飛び出して、それぞれが、中華鎧と現代プロテクターを折中したようなヘルメット、肩当て、胸当て、翼の付いた背当て、手甲、腰当て、脛当てに変化をして装着をされた!最後に腰ベルトに備え付けられたゴーグルタイプのマスクを、手で掴んで顔に装着!妖幻ファイターへの武装化完了!

 間を空けずに、鳥の顔を模したハンドガン=鳥銃・迦楼羅焔かるらほむらを装備して連射!不意打ちで傷を負った茨城童子や星熊童子は構えながら数歩後退をして、次々と小鬼が倒されていく中で、巨漢の熊童子が立ち塞がった!


「奴は儂が潰す!兄者達は、この地を離れろ!!」


 熊童子が、炎を発した大金棒を振り回しながら突進をしてくる!


「鬼封じの結界とは言え、兄者達ならば抜けられるはずだ!!」


 最優先で狙うべきは最高幹部の茨城童子!飛び上がって、熊童子の頭上を越え、銃口を茨城童子に向けた!だが、熊童子は、大金棒を素振りして、空中に炎を飛ばず!


「チィィッ!」


 腕で火炎弾を受け止めるが、飛翔は失速!着地と同時に体制を立て直す!再び熊童子に進路を塞がれ、振り上げた大金棒が振り下ろされた!


「邪魔だ!」


 素早く身を退いて回避しながら、銃口を熊童子に向ける!その間に、他の幹部クラスの鬼達は、霊体化をして姿を消し、その場から離れていった!


「野卑な鬼如きに、仲間意識があるとは思わなかったな。」


 奇襲が失敗をした原因は、鬼が「自己犠牲」を発揮することを知らなかった為。だが、これで理解をした。


「それならば、潰せる‘弾除け’は確実に倒しておけば、次は有利に戦えるようになる。」


 両腕を振り上げながら突進をしてくる熊童子!鳥銃・迦楼羅焔を連射して、熊童子の足を止める!

最初の飛礫で一定のダメージを与えているので、奴の動きは鈍い。接近戦にならなければ、それほど怖い敵ではない。



 熊童子討伐の数日後、逃げた鬼共の情報を求めて怪士対策陰陽道組織(退治屋)の東京本部に来ていた俺は、早朝に文架支部長の粉木さんから連絡を受ける。


〈確証はあれへんけど、おそらく文架市に鬼が入り込んでる。

 うちの若い奴を向かわすつもりやが、念の為にオマンの耳には入れとこう思てな。〉


 18年前、父の命懸けの攻撃で重傷を負った鬼の頭領・酒呑童子は、文架市に逃れて、その地で討たれたと聞いている。


「酒呑童子終焉の地ならば、鬼共が集まっても、何も不思議はありません。」


 狗塚家は鬼退治専門の家系にもかかわらず、念願の酒呑童子討伐は他者に任せてしまった。だからこそ、名門の名にかけて、他の幹部達は残らず仕留めねばならない。


「直ぐに向かいます。」

〈文架市の西にあるの羽里野山ちゅう山や。〉

「了解です。貴重な情報、ありがとうございました。」


 山に潜伏をしているなら、登山の準備が必要だ。俺は、本部に保管してある登山道具一式を借りて、直ぐに愛車・ヤマハ・MT-10を駆って文架市へと向かった。




-文架市・羽里野山-


 時間をかけて山を歩き、1~2日程度はキャンプをして、鬼の足跡を探すつもりだった。だが、山は結界で覆われており、山頂には濃い妖気が立ち込めている。


「起点は山頂付近か。粗雑な結界だ。潜伏しているのは下っ端か?」


 麓から眺める限り、なだらかな山なので、2~3時間あれば山頂には到着できそうだ。


「容易い行程だな。キャンプの準備は不要だったか。」


 キャンプ道具一式はバイクに乗せたままにして、既に着込んでいるベースレイヤー&ミドルレイヤー&アルパインパンツの上に防水透湿ジャケットを着込み、トレッキングシューズに履き替え、帽子&サングラスとネックウォーマー&トレッキンググローブを装着して、バックパックを背負い、山頂を目指す。


「・・・・・・・・・・ん?」


 歩いていたら後ろから走ってきたシャトルバスに追い抜かれた。バスには『麓~3合目・羽里野公園』と標示されている。


「3合目まではバスがあったのか?」


 だが、俺が行きたいのは、公園ではない。遊びに来たわけではない。山頂を目指さねばならないのだ。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 広く整備された道路を歩いて3合目に辿り着いたら、ロープウェイの駅があった。ロープウェイで山頂まで行けるらしい。

 乗り場では、俺と同じようなオール登山(断崖絶壁有り)的の格好をした青年が、軽装のツインテール少女と共にロープウェイを待っていた。


「彼が、粉木さんが言っていた文架市の退治屋?・・・まさかな。」


 見る限り、青年からは緊張感を全く感じられない。何よりも、任務に少女を同伴するなんて有り得ない。


「ただのカップルだろうな。」


 ロープウェイが来たので乗り込んで、一番後ろの席に腰を下ろす。現地(山頂)を一般人のカップルが彷徨くのは好ましくないが、彼等が巻き込まれるかどうかは彼等次第。俺が心配することでは無い。俺に出来ることは、彼等と距離を置くことだけだ。





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