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4-2・雪と戯れる 

-6時過ぎ-


 直径50センチくらいの雪玉を、両側から俺と紅葉で持ち上げて、直径80センチくらいの雪玉の上に乗せた。積雪が少ないので泥混じりの雪ダルマだが、紅葉は白い息を吐きながら満足げに眺めている。


「雪だるまさんの帽子にするバケツとか、鼻にするニンジンとか、目にする黒くて丸いのとかある?」

「無ーよ!」

「もうっ!準備ワルいなぁ~。」

「雪ダルマを作る予定なんて無いんだから当然だろ!」


 バケツくらいならあるが、面倒臭いので提供する気は無い。

 やや余談になるが、俺は、雪ダルマなど作らずに二度寝をするつもりだった。しかし、紅葉が「なら1人で作る」と言い出して、アパートの前で雪玉を転がし始めたので、見てられなくて、仕方無くダウンジャケット&ブーツ&革手袋で完全防備をした後、手伝ってやることにした。雪にテンションが上がって、はしゃいでいるわけではない。


「この雪、しばらく降り続けるのかな?」

ヒュン・・・どかっ


 寒空を見上げた直後に、背中に雪玉を当てられる。振り返ると、次の雪玉を準備した紅葉が構えていた。


「お子ちゃまは元気だな~。まだ遊ぶ気かよ?」

「お子ちゃまぢゃないもんっ!」


 紅葉が文句を言いながら投げてきた雪玉をヒラリと避ける。もう1個投げてきたので、手のひらで弾く。すると今度は、雪玉を振り上げ、奇声を上げて、腕を振り回しながら突進をしてきた。


「はしゃぎすぎだ!転ぶぞっ!」

「わぁっ!わぁ~~~っ!」


 注意をした直後に、雪で足を滑らせる紅葉。咄嗟に手を出して紅葉の腕を掴んで引っ張り、転倒を防いでやる。


「言わんこっちゃ無い。少しは落ち着け!」

「ぁりがとぉ~!」


・・・と言いながら、紅葉は、握っていた雪玉を顔面にぶつけやがった。


「ぶはっ!冷てっ!!」

「やぁ~い!燕真、雪まみれぇ~~!」

「ぺっ!ぺっ!・・・口の中に雪がっ!こんにゃろ~!」


 顔に掛かった雪を払い、口の中に入った雪を吐き出した。ケラケラと笑う紅葉。アパートの住人達からは「バカを見る目」及び「美少女と戯れる羨望の目」で見られている。


ピーピーピー!

 お戯れ中を妨害するかのように、Yウォッチの通知音を鳴った。


〈起きとったか?〉

「朝っぱらからどうしたんだ?」

〈直ぐに来られるか?〉

「なんだなんだ?まさか『雪ダルマ作るから来い』なんて言うつもりか?」

〈そんなわけあれへんやろ、アホンダラ!この降雪は妖怪の仕業や!〉

「えっ?マジで?」

〈やっぱ気付いてへんかってんな。

 YOUKAIミュージアムが妖怪に乗っ取られてしもうた!今すぐ、助けに来てくれ!〉


 通信内容を聞いていた紅葉が、心配そうな表情で見つめている。


「ジイちゃん、大丈夫なの?」

「チョット行ってくる。オマエは家に帰るか、俺の部屋に待機をしていてくれ。」


 愛車を駆って・・・と言いたいのだが、駐車場に無造作に駐めてあった愛車は、スッカリと雪を被って白い小山のようだ。道路に新雪が積もった状態でバイクを運転するのは怖い。


「移動手段は自分の足しかない・・・か。」

「ァタシも行くっ!」

「来るなっ!遊びに行くんじゃないんだぞ!」

「イヤだっ!行くっ!!ジイちゃん心配だもんっ!」


 此処で「来るな」「行く」の問答をしていても埒が開かない。優先させるべき事は、現場急行と状況把握だ。


「仕方ねーな!俺から離れるなよっ!」

「ぅんっ!」


 俺達は、未開の雪上を踏みしめながらYOUKAIミュージアムへと向かう。


「この雪、妖怪が雪を降らせてるらしいけど、オマエ、気付いてたのか?」

「ぅん!モチロンっ!昨日から妖気ビンビンだったぢゃん。

 だからァタシ、昨日『雪降るかな?』って言ったんだよ。

 でも、『誰かを困らせよう』みたいなヤな感じゎないから、ダイジョブと思ってた。」

「遊ぶ前に言えよな!全然『大丈夫』な状況じゃねー!」


 真冬でさえ、夜中に雪が降っても通勤時刻には融け始めているのだが、妖怪が雪を降らせている所為で、朝が来ても気温が上がらず、積もった雪はほとんど融けてくれない。それどころか、降り積もるばかりだ。


「妖怪に困らせる気が無くても、オマエ以外の文架市民は困ってるぞ。」


 道中では、積雪の予想など一切していなかった文架市民は軽いパニックになっている。自家用車は動くことが出来ず、慌てて冬用タイヤに履き替えたバスがだけが道路にわだちを作りながら徐行をしている。

 ノーマルタイヤで雪道に挑む世間知らずの猛者が、車を滑らせてガードレールや電柱に接触して動けなくなり、ただでさえ走りにくい道路を更に走りにくくしている。

 今日は日曜日なので通学&通勤者は少ないだろうけど、この調子では、駅やバス停は混み合いそうだ。



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