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3-9・鵺再戦

-更に1時間後・利幕町の交差点-


 捜索の過程で何度も通過をした交差点に戻っていた。何処を捜せば良いのか全く解らない。何も想像出来ないなりに導き出された答えは、紅葉が「この交差点にはユータの念が残ってしまった」と言った事。眼を瞑り、「俺には感知出来ない者」を感知しようと試みるが、やはり何も感じられない。


「なぁ・・・ユータ。

 オマエなら紅葉の居場所・・・もう1人の自分が隠れている場所・・・解るんだろ?

 紅葉を助けたいんだ・・・頼む、教えてくれ。

 俺にはオマエの声を聞く才能は無いけど・・・一度だけで良いから、オマエの声を聞かせてくれ。」


 どんなに願っても、ユータの声は聞こえない。そんな御都合主義が起こるわけが無い。・・・だが。


ピーピーピー!

 左腕にあるYウォッチから発信音が鳴る。


「じいさん、何か解ったのか!?」

〈燕真、妖怪出現や!この反応は、この間と同じヌエやで!!場所は、国道西の廃倉庫や!!〉

「クソッ、こんな時に!!」


 これまでにヌエが出現したのはトラック襲撃の2回と、香山裕太に刺激をされた1回。今回の出現場所は公道ではない=トラック襲撃が目的ではない。


「だったら、何の為に?ガキに俺の声が届いた?」


 バイクに跨がったまま『閻』と書かれたメダルを抜き取って、和船バックルの帆の部分に嵌めこんだ!


「・・・幻装っ!!」


 全身が光に包まれ、妖幻ファイターへの武装化完了!直ぐに朧車を召還して、ホンダVFR1200FをマシンOBOROに変形させ、ワームホールに飛び込んだ!




-廃倉庫-


 ワームホールから飛び出した俺の目に映ったのは、暴れるヌエと、逃げ廻る香山裕太の姿だった。


「ユータっ!今、ソイツ(ヌエ)から解放してやる!」


 マシンOBOROのハンドル脇スロットに『炎』メダルを装填!タイヤから炎を発して、ヌエに突っ込む!


「ガォォォォォォォッッッ!!」


 しかし、衝突寸前で、ヌエは両手でカウルを押さえ込み、力業でマシンOBOROを薙ぎ倒した!マシンOBOROから放り出された俺は、素早く体勢を立て直して構える!直撃による致命傷は与えられなかったが、炎で一定のダメージを与えた手応えはある!


「相変わらず・・・すげーパワーだな!!」


 周囲を見回すと、手首を拘束された紅葉の姿を確認できる。


「心配させんなっ!もうちっと待ってろよ、紅葉!」


 Yウォッチから白メダル取り出して、ブーツの窪みに装填!ヌエとの間に炎を絨毯が出現をする!


「こっちには都合があるんでね!ゴチャゴチャした戦いは抜き!一発で決めてやる!!

 閻魔様の裁きの時間だ!!」


 炎を絨毯を駆け、ヌエ目掛けてジャンプ!空中で一回転をして飛び蹴りの体勢になる!


「うおぉぉぉぉっっっっっっ!!!」

「ガォォォォォォォッッッ!!」


 インパクトの直前に、ヌエが振り回した蛇尾が側面に着弾!弾き飛ばされて何度も地面を転がる!更に、突進してきたヌエに蹴り飛ばされ、壁に激突して、砕けた壁の破片と共に屋外に投げ出された!ヌエは、俺が突き破った穴を更にこじ開けて、外に出てくる!


 その間に、一足遅れて到着をした粉木の爺さんが、紅葉の拘束を解いて保護をして、座り込んだまま俯いている香山裕太に手を差し伸べ、引っ張り起こした。


「なぁ・・・香山、これはオマンが起こした騒ぎの顛末や!シッカリと見ときや!」


 3人が廃倉庫から出て、俺の戦いを見守る。


「くそっ!やはり強いっ!」


 十数年分という重い恨みを依り代にした妖怪。その凶悪さは、これまでの妖怪達とは違いすぎた。


「ガォォォォォォォッッッ!!」


 俺が体勢を立て直すよりも先に、ヌエが突進をしてくる!懐に飛び込まれ、重たい拳や蹴りを叩き込まれ、蛇の尾を叩き付けられる!俺は妖刀を召喚して振り回すが、悉く回避されるか受け止められる!

 何度立ち向かっても、吹っ飛ばされ、壁に叩き付けられ、地面を転がり、まるで歯が立たない!

 博物館での戦いが学習をさせてしまったらしく、炎の攻撃を警戒して、正面からの攻撃ばかりでなく、背後や横からの攻撃を織り交ぜて仕掛けてくるので、狙いすら定められない!


「・・・こんなハズじゃ!!」


 四つん這いになり、全身で息をしながらヌエを睨み付ける。このままでは、妖怪を封印して、霊体少年を解放する事など不可能だ。此処で敗北をすれば、間違いなく「依り代を先に取り除く」選択肢しか、妖怪討伐の手段が無くなるだろう。


「嫌だ・・・せっかく通じ合えそうなのに・・・言葉は聞こえなくても、共有出来そうなのに・・・

 俺が不甲斐ない所為で、全否定をされてたまるか!!」


 ヌエが拳を振り上げながら突進してくる!


「オマエ(ユータ)には俺の声が聞こえるんだよな!?」

「ガォォォォォォォッッッ!!」

「俺は・・・ユータを救ってやるって約束したんだっっっ!!」


 辛うじて立ち上がって構える!しかし、ヌエの攻撃に持ち堪える手段も、一撃を叩き込む手段も、何も思い付かない!



           〈燕真お兄ちゃん!〉

「・・・え!?」


 初めて聞く声が、妖幻システムを通して聞こえる。それが、ほんの僅かの間ではあったが、心を通わせたユータの声である事は直ぐに解った。


〈僕が・・・やるよ!〉


 ヌエの足が止まり、突然、その場で藻掻き始める。周囲に大きな闇の渦が出現し、ヌエと重なるようにして、少年の姿がうっすらと出現する。


「お兄ちゃんは僕を助けてくれたんだよ。」

「・・・なんのことだ?」

「お兄ちゃんが僕を起こしてくれたの。」


 一昨日、大型トラックへの襲撃を妨害する為に、ヌエをバイクで弾き飛ばした。被害者と加害者の違いはあるが、「衝突寸前でトラックの前から退ける」という状況は、十数年前の事故と全く同じ成り行きだった。

 同じ光景が繰り返された事で、妖怪に支配されていた依り代は記憶を呼び起こし、妖怪の中で自我を取り戻した。だからあの時、妖怪の雄叫びが、依り代の声に変化をした。

 そして「十数年前には何も出来なかった無力な自分を覆したい」と考えるようになった。「飛び込んで救ってくれた人を見殺しにしたくない」と言う意志は、会話は伝わらなくても共有した時間を経て、より鮮明になっていた。


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