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3-8・紅葉誘拐

-10分後(AM11時)-


 外に紅葉を待たせている都合上、あまり長居は出来ない。今日のところは要点のみを聞いて、話を切り上げ、香山邸から出る。「おとなくし待っているか?」と車を見るが、紅葉の姿は無く、後部座席のドアは開けっ放しになっていた。


「・・・あのバカ、ドアも閉めずに、何処に遊びに行きやがったんだ!?」


 紅葉がジッとしていられない性分なのは気付いていたが、まさか、30分も我慢出来ないほど堪え性が無いとは予想していなかった。大きく溜息をついて、紅葉のスマホをコールする。


「おい、紅葉、何処に行った!?帰るから、すぐに戻ってこい!!」

〈・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・〉

「おい、聞こえてんだろ!?何処をほっつき歩いてんだよ!?」

〈・・・そうか?その声は、博物館にいた男だな?〉


 発信相手を間違えたのかと、ディスプレイを確認するが、発信先は間違いなく紅葉のスマホだ。しかし、知らない男の声がする。


〈ちょうど良い。僕も君達に電話をしたいと思っていたんだ。〉

「・・・・・・・・・誰だよ!?」

〈僕の声、忘れたのか?昨日、博物館で会ったよね?〉

「・・・・・・・・昨日?・・・・・・・・・・・・オマエ、昨日の窃盗野郎か!?

 何でオマエが紅葉の携帯を持っているんだ!?」

〈簡単な事だ!僕と女は一緒にいる!少し考えれば解るだろ!?

 無事に返して欲しかったら、昨日の子供を捜し出して連れて来い!

 あの子供、オマエ等にも見えてんだろ!?〉

「・・・え!?」

〈子供を見付けたら、もう一度、この女のスマホに電話を掛けてこい!場所はその時に指示をする!

 いいか、親父や警察には言うなよ!〉

「・・・ちょっと待て!」

〈守られなければ、女の無事は保証しない!!〉

「・・・・・・・・・・・お、おい!!」


 通話は一方的に切られてしまう。展開が突飛すぎて、思考が追い着かない。


「話はだいたい解った。今から、オマンのアパートに行くで!」

「・・・・・・・・・・・・・・え!?」


 無言で会話を聞いていた爺さんが、状況を察して、俺の肩を軽く叩いた。


「あのボウズ、オマンの所に居るんやろ!?」

「え!?・・・なんでそれを!?」

「ドアホ!昨日、捜索に出たっきり、直帰したやろ!?

 ボウズを見付けたが、ワシには会わしたくない・・・そんな魂胆やろ!

 オマン等の考えてる事くらい、たいていは想像出来るわい!!」

「・・・・・ゴメン、でも行ってどうすんだよ!?」

「祓うに決まってるやろ!」

「・・・・・・・・・・・・・・え!」

「お嬢の気持ちを無視する事になってまうが、お嬢を助ける為や!!

 ボウズを祓って、そのことを窃盗犯に伝える!!

 あのボウズがただの霊で、オマン等が友達ごっこをしとる分には、何も言うつもりはない!

 オマンがボウズ祓うより、妖怪潰すんを考えよるなら、

 被害が出んうちは、何処までやれるか見物しようとも思った!

 せやけど、もうアカン!ワシ等‘退治屋’が守るんは、残留思念やない!生きた人なんや!」


 霊体少年を祓う事には抵抗があるが、爺さんの言い分は正論だ。依り代を守って紅葉に危害が及んだら、退治屋としても、人としても、本末転倒になってしまう。


「・・・・・・解ってる。」

「ただなぁ、もしワシの推測が正しければ、ボウズはもう、オマンのアパートから逃げとるで!」

「・・・・・・・・・・・・・え!?」




-30分後(AM11時半)-


 自宅アパートに到着。爺さんが部屋を覗き込むが、予想通り、霊体少年の姿は無かった。


「やはり・・・」

「・・・どういう事だよ?」

「気付かんか?・・・ボウズと窃盗犯の名前から。」


 霊体少年の名はユータで、窃盗野郎は香山裕太。同じ名前だが、それは偶然ではないのか?爺さんの質問の意図が理解できずに首を傾げる。


「あの2人は同一人物なんや!

 せやから、香山裕太の考えちょる事は、ボウズの意識にも流入する!

 香山裕太が自分を消そうとしよると知って逃げたかて、不思議なことはあれへん!

 ましてや、既に1回襲われとるんやからな。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「香山の家主の話・・・おそらく、香山裕太は、十数年前の事故の呪縛に取り憑かれてしもうとる。

 英雄を諦めた自分が許せなくて、英雄に助けられた自分を憎むようになり、

 やがては、その罪の意識から逃れる為に、十数年前の自分を別人格のように切り離し、

 十数年前の香山裕太を憎むようになったんや!」


 憎まれるだけの為に生み出された思念。しかも十数年も蓄積された膨大な思念。妖怪にとって、これほど憑きやすく、力を発揮しやすい依り代は無いだろう。


「・・・それが、ユータってガキ?」

「せや。大型トラックばっかりが狙われる理由も説明が付く。」


 香山裕太が暴走状態の現状では、いつ、ユータが暴発をしても不思議ではない。


「マズいぞ!爺さんの感知力で、ガキを見付けられないのか?」

「探すんは可能やけど、ワシの感知力は、お嬢ほど高うはあれへん。時間がかかってまうやろ。」


 俺が妖幻システムを装備すれば、索敵力は高まるが、同時に捜索相手も感知をして警戒をされてしまう。妖怪ヌエが暴れ出せば、直ぐに妖怪センサーが反応して居場所を特定出来るが、それを待つわけにも行かない。


「燕真、意地でもボウズかお嬢を捜し出すんや!!」

「あぁ!それしかない!!」


 状況的には詰みかけているが、何もしないワケにはいかない。確率は極端に低いが、動き回れば、爺さんの霊感に霊体少年が引っ掛かるかもしれない。紅葉や香山裕太の手掛かりが見付かるかもしれない。俺達は別行動で、駅西地区を中心に捜索を開始した。




-1時間後・駅西地区-


 利幕町の交差点、香山宅の周辺、国道・・・思い付く場所を中心にして、ひたすらバイクを走らせるが、手掛かりは何も得られず、焦りばかりが募る。


「クソッ・・・どうすれば良いんだ!?」



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