表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パラレルワールドハレム  作者: 和泉日生
15/18

番外編2 彼岸花の宴

めっちゃ体調を崩す。

この季節に弱いかもしれない。

では!今から第・・・おそらく22回!・・・以降開催!交換会を開催します!」


「おお―――!!!」


「司会はわたくしアンリが務めさせていただきまーす!」


「おお―――!!!」


「みんな盛り上がってますね!早速やっていきましょー!」




「皆さん整列してくださいね。抽選券は列を並んだ人に配ってます。順番は守ってくださいー!」


「大変だね~アンリは。レイナさんはここでまったり出来て、我ながらいい身分だよー。」


私は高いところにあるギャラリー?キャットウォーク?みたいなところに立っていた。ここは警備の手伝いもできるしいいところだね。

あっ。アンリのところへイミーナが歩いて行ってる。仲いいよね。都市でそれなりの地位にいた二人だけど何というかお互いの苦労を分かち合ってる感があるんだよね~。アンリは疑わしいところがあるけどあの仲良しっぷりはほっこりしますな~。

アンリにイミーナが話しかけてる。


「アンリ大丈夫か?見るからに大変そうだぞ。後ろの方まで並ぶ奴はいない。まだいいるからあと少しなんて勘違いせず飛ばすんじゃあないぞ。」


「そうですね。大聖堂いっぱいの人ですからあんまり気負っても仕方ないですね。でも」


高いところから見ると歓談を繰り広げる白と黒の波間から赤いじゅうたんの陸地がちらりちらりと見える。人の海だね~。

普段の礼拝は分散させるからこうも集まらないけど。壮観だね~。


「今日は特別ですから頑張りますよ!」


「ほどほどにな・・・。」


イミーナが演じるように大げさに肩をすくめてる。まあアンリは気合入れるよね。


「人が痛み忘れるにはそれ以上の歓喜で塗りつぶすか・・・。」


私はかつてアンリが言ってた言葉を思い出す。

今日は教会の仲間が一足先に空へ旅立った時へ行われる儀式。この日で悲しみから脱却するためにアンリが作った日だ。亡くなった者たちの遺品を交換するプレゼントとして持ち寄る。初めは悪趣味じゃないかという声も上がってたけれど、故人をしのぶ区切りのイベントは笑顔であるべきという言葉にみんな納得した。

ダン!足踏みの音が大聖堂中に響く。荒々しいそれも大聖堂だとなんか荘厳だ。足を踏み鳴らした主は台の上立っていたイミーナで何か言おうとしている。


「今日は明日を楽しくい来るための現実的な方策さ!皆楽しもう!そしてほかの人が楽しめるよう協力を惜しむなよ!」


いいね、分かってる人もいるだろうけれど言っておくことも重要だね。私はイミーナから視線を別のところへ移す。メーフィアが目についた。かわいらしくてすぐ目に止まっちゃうよ。それに大聖堂のドアの方がざわついてて注目が集まってたからね。人気者の登場の合図だ。


「まだまだ抽選券の配布は終わりそうにないですね。よかった。」


「おめでとうございます。残り物に福がないくらいの微妙な遅さですよメーフィア。」


メーフィアにセロちゃんがタオルを渡してる。そっかメーフィアの今日は朝方の警備だったね。


「まあ間に合ったのはいいんですけどそれでも最悪ですよ・・・。みんなもう交渉は終わってますよ。いまから交渉するのは骨が折れますね・・・。」


みんな友達の遺品を形見としてもらいたい。けれどこのイベントは抽選制だ。ランダムでもらえるものが決まるから遺品がもらえるなんて偶然は起きない。だから交換グループを作ってこれが当たったら交換という風に目当てのものをゲットできるようにするのが鉄則だ。でも朝番が終わった時間にはもう大体のグループが形成されてて仲間に入れてもらうのは難しいんだよね。

あっ。セロさんが眼鏡をくいっとして何か言おうとしてる。


「ほぼ全員と友人のメーフィアさんにはこの程度いいハンデでしょう。」


セロさんはそう言うけどメーフィアは焦ってる。そらまぁ・・・。どっちの感情も分かる。


「どうしましょう!もうみんな先約決まってますよ!私の欲しいものがそのグループ内でほしい人が決まってたらそのグループには入れないですから。」


「いいじゃないですか。結構なことですよ。」


セロさんの言葉にメーフィアはショックを受けてる。

セロさんが呆れるようにメーフィアを見る。可愛すぎて困ってる人を見るような目だ。


「甘えすぎて飼いネコちゃんですよ。いいですか?貴方はいつもちやほやされてます。この手のイベントの時には周りが勝手に近づいていくんです。みんながあなたに仲裁や調停を頼めば大人数でも解決できると思ってます。貴方がいなければそういう事もないんです。」


「・・・?いいことでは?」


メーフィアがきょとんとしてセロさんが軽く頭をかく。


「いいですか?思い出の品が欲しい子もいますが実用的に人気な品も当然競合します。つまりそう言ったものを手に入れるには交渉が必要です。つまりこのイベントは亡くなった方がいて崩れかけた交友関係を再構築する場でもあるのです。貴方がいたらみんなあなたに頼って勇気を振り絞る必要がないのです。」


「そうだったのですか!」


メーフィアが驚いてる。多分その事実に教会で驚くのはメーフィアだけだね。


「確かに毎回このイベントでは幾人も乱入闖入を捌くのが大変でしたが、本来そんな目的があったのですか?!」


「捌いてるせいで友達マッチングにあんまり効果がなかったのです。」


メーフィアはマスコット扱いだったし一人一人誠心誠意対応するからみんな頼っちゃうんだよ。だから友達の友達を量産しちゃう。


「私が今回朝番でよかったのは分かりますが!私がグループに入る方法はどうしましょう!そもそもこっちに答えてほしかったのに!」


メーフィアが涙目でセロさんに懇願してる。セロさんはそれを見てちょっとぞくぞくしてない?


「だから馬鹿なのです。」


セロさんがメーフィアを連れて大聖堂に並ぶベンチに立つ。ニヒルに笑ってるように見えるね。何すんだろ?


「皆さーん!ご注目ください!」


「セロさん!?」


メーフィアがセロさんに駆け寄って目を回してる。お?お!


「いまからメーフィアさん争奪戦を開始します!」


セロさんが叫ぶ。えっ!何いってんの?!セロさん以外が全員びっくりしてるよ!それでも気にせずセロさんは続ける。


「今日の相談はうまくいってますか?何か今一つな気がしませんか?少人数でしか交渉できなくて目的のものをゲットできそうにないなんて不安になっていませんか?」


おやおや。みんなざわざわし始めましたねぇ。


「そこでこの子です。じゃあ始めますよ。」


セロさんは暗い笑いを浮かべながらメーフィアの背中を押す。


「始めるって何ですか・・・?」


メーフィアはギラギラとしたみんなの視線を受けて不安そうに見る。


「大聖堂の扉を開けろ!」


なぜか待機してた人たちが大聖堂の入口の大扉を片側2人ずつで開ける。いつから待機してたんだろ。


「教会内で逃げ回るメーフィアを捕まえてください!そうすればこの子が獲得したグループの子と交渉して欲しいものを持ってきてくれます!」


何言ってるんだって顔でセロさん見てるね。ああ可哀そうなメーフィアさん。


「じゅーう!」


メーフィアが走って大聖堂の外へ向かっていく無茶ぶりを振られて走っていく姿には哀愁が漂う。


「たっ、建物は荒らすとフィレリアさんが怖いので無しでーす。あと二十秒追加お願いしますー!」


「りょうかーい!」


メーフィアの言葉にセロさんが返す。

突然メーフィア争奪戦の開催だ!うっひょー!




「レイナも参加してくれない?レイナはこのイベントはいつも通りやるだろうけど。ほら!今度お菓子が手に入ったとき私たちの分もあげるからさ。


5人くらいのシスターへ声をかけられた。一般の仕事をしている黒服の子だね。よくお話しする友達だ。

うーん。今回のゲームはどちらかというとインドアな仕事をしているこの子たちにはメーフィアの確保は難しいよね。セロはやっちゃったね。こりゃ極端に不利だ。


「ごめん。いつもの方法の仕込みがあるから手伝えないや。」


私はぺこりと頭を下げて謝る。心苦しいけどね。私もやりたいことがある。


「なら仕方ないかー。兵士たちのグループの子に頼んでみようかな。後の調整はメーフィアに投げればいいや。」


そんな話をしているうちにセロさんのカウントが終わりそうだ。みんなお行儀よく並んでる出口の列へ向かっていく。


「さて、私は私の作戦の仕込みをしますか。」


私は協力者を探し始める。でもみんなメーフィア探しにご執心だから残ってる人は変わり者しかいない。

なら、変わり者に話しかけるだけだけどね。


「ねーニーヴェリア?あんたは今回も誰とも組まないんでしょ?いつもと同じ奴お願いできない~?」


「構わない。だが時間までフィレリアさんにプレゼントを受け取ってもらう方法を考えるのを手伝ってもらう。」


目がまっすぐすぎ。この子は本当にぶれないな~。憧れるのは分かるけどフィレリアが好きすぎてちょっと危ういけど・・・。何というか・・・いいなーって思うこともあるんだよね。


「打合せの場所はどうする?外のドタバタ劇を見ながら?」


「いやフィレリアさんの警備を独断でする。」


ぶれないねー。




***大聖堂外***


「はぁはぁ・・・。」


どたどたと壁の向こうから多数の足音が響きます。通り過ぎて足音が小さくなりほっと一息付けました。ふぅ、正直疲れました。十数人を超える人に追い回されて大変でしたが最初のリードを取った分何とか逃げ切れました・・・。


「疲れました・・・。」


私メーフィアは今は倉庫裏にいます。もっと逃げ場所を早く見つけられれば良かったんですが。・・・機転が利かない証明みたいですね・・・そうなると目標はまだ遠いのかなー。


「もう時間は少ない・・・。ですよね?」


この世界の緊張感は高まっていますのんびりしている暇はないです。


「見つけたよ。」


心臓が高鳴る!見つかった!

物思いにふけっていたとはいえ全く気が付きませんでした。後ずさろうとしますが後ろには壁です。


「おやおや、油断をするなんてらしくないじゃないか。子猫ちゃん?」


「ワーさん!」


そこへ立っていたのは長身痩身の麗人ワーさんでした!

でも簡単につかまるわけにはいきません。倉庫の裏には両脇から出口があります。ワーさんが来た方と逆から逃げます。ここで手を抜くのは公平じゃないです悪く思わないでください。


「甘いよ。」


私がワーさんと逆側に走りましたが。そちらにも一人いました。まずいですね逃げ道を塞がれました。あっ!

くるっと回されて壁にドン!顎をくいっとさせられてワーさんが私を見つめます。


「さぁ私のいう事を聞かない悪い子にはこうしないとね。もう逃げられないよ?マスコットちゃん?」


勝ち誇った顔でも嫌な感じがしないのは顔がいいワーさんの特権ですね。でも全力で抗います!


「問題です!私が欲しいものを答えられますか!」


「えっ!?」


私は狼狽したワーさんに頭突きをします。ひるんでいる隙に私はするりと逃げます。


「いいですか!みんなに伝えてください。ただ捕まえるだけ駄目です!私の欲しいものを当ててください!私を利用したいなら私の願いをかなえてくれなきゃ嫌です!」


私は脱兎のごとく逃げます!爆走です!


「くっ!悪い子は捕まえないと!みんな!」


倉庫の上に隠れていた皆がおりて来て追ってきます!

もちろん私より足の速い人がいるので徐々に追いつかれてきます!


「捕まえた!」


私はあえなく地面に伏せるように取り押さえられます。


「その声はフィエさん!」


足が速くて偵察兵をやっているフィエさん!


「メーフィアの欲しいものは成績優秀者に贈られる軽量で頑丈なグリーブでしょ!!」


「っ!?」


近いけど。


「外れです!残念でした!」


私は背中に乗られた状態からぐるりとお腹を馬乗りのフィエさんに向ける。


「そぉい!」


馬乗りの彼女を投げ飛ばします。


「リーズニングからやり直してください!」


「ヒントくらいは頂戴よー!」


「もっと大枠で私の欲しいものを考えて!材質は紙です!そしてみんな見たことがあります!あとこれからはグループで回答権は一回だけです!」


皆がざわついている中、私は駆け出します。


「ふぅ・・・。」


訓練場の台の陰に隠れます。みんなにはここにいることは見られてますが私を捕まえようとしている人はいません。というか私の見えないところで相談しているようでお互いに声も見た目も分かりません。


「もうすぐ開会に時間ですが捕まえられなくてみんな困ってますよ。」


「セロさん・・・」


私に話しかけてきたのはセロさんでした。


「でも、みんなで争って私を捕まえた人が(とく)だなんてそんなの間違ってますよ。みんないつも話し合って決めてるのに・・・。」


わかってます。それじゃこのイベントの意図に合わないって。どんな形でも新しいコミュニティで協力するのが大切です。わたしには耳が痛いことですが。


「あなたが欲しいのはこれでしょ?」


セロさんが色紙を渡してきます。


「!」


ずいぶん古いものです。でも今でも鮮明に覚えています。


「どうしてわかったんですか?」


「あなたの相談に百年以上付き合って来たんですよ?みんなが見たってヒントで何となく見当がつきました。『ここに書いたみんなと一緒に教会を守る。』教会の戦闘部隊が設立されてから何周年だったか忘れましたが。当時の部隊みんなで書いた色紙です。その当時の部隊長のエイラさんの遺品です。」


そうです。私たちの根底にあるもの。それだけじゃないみんなと一緒に守るというのは『みんなも』守るという事。


「懐かしい顔もいっぱいですね。これが欲しいのは自分から言った方がいいんじゃないですか?」


そうですね名前を見ているだけで温かい気持ちになれます。

でも守れなかった人たちはいっぱいいます!どうしてそのためにあんなに頑張ったのに!この色紙へ署名している人たちも4分の1は最後に抱きしめた時は冷たい体だった!私が弱いから!

だから私は。


「そうですねこれはみんなに見つけてもらうものじゃないです。わたしから宣誓するものです。」


私はみんなが見える台の上に立ちます。何事かとみんなが注目して私を見つめます。


「私は今回の鬼ごっこの終了を宣言します!」


皆さんざわつきます。当然ですこのままでは、皆ばらばらで欲しいものが手に入らなくなります。


「私に賛同してくれる人だけ私の提案するやり方についてきてください。私は提案します。交換会のイベントで手に入れたものを一月ごとに交換するイベントを開催することを提案します!」


皆さん困惑しています。だって、これって今回みたいに小さなグループを作ってほしいものを交換することがずっとつづくということです。欲しいものを手に入れても手放して。そして交換する以上綺麗に保たなくてはいけません。

手に入れるためにずっと大変な思いをして手に入れてもすぐ手放すしかなくて大変な思いで維持します。正直嬉しいものではないと思います。


「誰かが亡くなってから交換なんて悲しいです・・・!だって手に入れたものの良さを共感できないんですから!」


皆息をのみます。


「だったら欲しいものがいいものだったって共有して共感したほうがいいじゃないですか!無くさないでねって!託してまた笑顔でまた使いたかったんだよねって。死んじゃって、どこに置いてあるか分からないなんてことも無いようにみんなで生き残ってだれも死なないプレゼント交換会にしましょう。いえ、誰も死なないプレゼント交換会だけを開催しましょう!」


今のイベントは誰かが亡くなること前提です。そんなの哀しすぎます。だったらみんな死なない。死なせないことを再度決意するための宣言をします。




***大聖堂のレイナさん***


「お騒がせしてすみませんでしたー!」


メーフィアを先頭に鬼ごっこしていた人たちがぞろぞろとか言ってくる。

メーフィアがいい笑顔だ。いい落としどころ見つけたのかな?


「準備は終わったのか。」


私が今回のイベントの仕込みにいそしんでいるとニーヴェリアが近づいてくる。


「ニーヴェリアは欲しいものが決まった?」


「あんたに相談したけど決まらなかったぞ。フィレリアさんのデータには欲しいものは記載されていない。というかあの人は私たちに欲望を開示してくれない。」


欲望って・・・。もうちょいいい言い方なかった?ていうか決めないと私のやり方を手伝ってくれないって言ってるんだけど・・・どうしよ?適当なこと言ってみるか。


「データブックじゃなくて別のアプローチで考えてみたら?」


「くわしく」


ドアップだよ・・・。振り向いた瞬間ニーヴェリアの顔しか見えない。せめて笑って。いやそれも怖いな。


「教えてくれ。お願い。一週間分のお願い。」


一週間にそんなに関わんないじゃん。マジで遊撃部隊だし。文武両道どこにでもいるしどこにもいない。


「会った日で一週間。」


心読めるならフィレリアの心読めばいいじゃん。それに会った日だけカウントしてもほとんど食堂のすれ違いレベルの接点ばっかりで誤差レベルだよ。自分の鞄の中をのぞきながらすれ違う人くらい記憶に残らないレベルだよ。

まぁニーヴェリアは心が読めないから困ってるけどね。


「あれじゃない?ニーヴェリアがフィレリアをサポートするのに便利そうなものを狙えばいいんじゃないの?」


直接のプレゼントが分かんないなら間接的にってね。


「そうかその手があったのか!!!」


ううわっ!めちゃくちゃ五月蠅い耳元で叫ばれた。キーンとする耳を押さえてニーヴェリアをにらみつけるけどこっちを見てない。やっぱあほだなー。フィレリアの業務の代行マニュアルとか作れるくせに本当にアホ。


「で・・・それはなんだ?」


ニーヴェリアが振り向いて聞いてくる。顔近づけないでよ・・・。さっきの大声がトラウマになってるから。


「自分でね。」


「そうだ!」


今度はちゃんと離れててキーンとはならなかった。そんなに速攻で思いつくなら聞かないでよ。


「測量器具だ!」


ニーヴェリアはまるで大発明のように絶叫する!


「そう・・・。」


私はもうニーヴェリアを見ないで私の準備を続ける。本当は大した準備じゃないけどニーヴェリアの近くだと疲れて大した準備になるね。

そんなこんなでイベント本番が始まっていった。

私は大聖堂の二階から壇上のフィレリアをみる。ちょうど初めの挨拶をするとこだ。視線をその後ろの席に移す。シスターとは思えない服装をした見慣れない人が座ってるね。よくみたらその壇上に座れなかった人たちが壇上の側面で椅子に座ってる。彼女たちはそう・・・。一足先に旅立ってしまった仲間たちのソロルスの人。家族だよ。


「これよりプレゼント交換会の開催を宣言します。」


アンリが壇上の中央に立ち開会を宣言している。静寂の中フィレリアがアンリの元へ歩み寄る。

フィレリアは来賓席へ向かって一礼をする。


「まずは皆様にご足労頂いたこと厚くお礼申し上げます。そしてせっかく久しぶりの出会いにもかかわらずこのようなことになり痛恨の極みです。そして突然家族を失った悲しみは計り知れないほどです。それにもかかわらず過酷な旅を経てご来訪いただき、大変感謝しております。

これより皆様とともに道半ばで私たちと別れた友たちを見送り。そして安心して旅立てるように健やかな姿をみせていきます。これよりプレゼント交換会を開催いたします。」


みんなが拍手で迎える。しんみりするのは挨拶だけだよね。あとは笑った安心させるお祭りだ!

このイベントはシスターのためだけじゃないのよねん。亡くなった人のソロルスの方を招待してまず彼女たちに遺品を選んで受け取ってもらう。その余りが私たちのプレゼント交換会の景品になる。そしてその景品に喜ぶところを見てもらって自分たちの家族がいかに慕われていたか見てソロルスの方は故人を偲ぶんだよ。ソロルスたちのためのイベントでもある。・・・そのあとシスター同士でプレゼント交換会の景品の交換なんてするけどそれはご愛敬。


さて、つつがなくイベントが進んであっという間に私の投げる番になってた。ドラムロールとともに目の前の丸板が回転させられる。私は持ち手のついたいわゆるダーツというやつだよを握って狙いを定める。丸板に無数の数字が書かれてて針の刺さった数字に対応した商品が渡される方式。なので、私は矢を構えてくるくる回る丸板を狙う。


「外すなよ。」


「やだなー外すわけないじゃん。」


私は冷や汗をかきながら笑って圧力をかけてくる人に返す。目がマジで怖いっすよニーヴェリアサン。


「お前の動体視力なら回ってても狙う番号が分かるはずだ。34番だ。」


どすの利いた声でニーヴェリアがささやいてくる。ぴったりとくっついて体温が伝わってくる。吐息がくすぐったい~!なのに拍動の音が聞こえないのがなんか不気味。いやたまたまだけど・・・。

目線の隅にニーヴェリアの瞳が見えるけど・・・って!ハイライトが見えなくて怖いよ!


「ちょ!っ・・・。緊張に弱いんだからやめてよ!」


「既定の回転速度を下回ると順番が後回しだぞ!」


もう!勝手だな!

えぇっと!えぇっと! ! あった!34!34あった! 狙いを定めてイージーだよ・・・!猫ちゃんの木登りを目で追うより簡単なんだから・・・。


「あっ!・・・。」


【やった】瞬間に自分がこんなに緊張してたんだって気が付く時ってあるよね。現実から逃避しようとするけど悲しいかな、私の動体視力は自らの過ちを鮮明に見せてくれる。

あーあ。34の射線上には乗ってるでも止まらないことは分かっちゃう・・・。戻ってくるたびここに止まんないかなって思うけど突き刺さったのは別の数字だった。ああ諸行無常。ああ無慈悲。


「128番の景品でーす!猫の目ライトが当たりました!」


終わった。ニーヴェリアが睨んでる。


「約束は果たされなかったな・・・。」


「まって!私のプレゼントの時手伝ってくれるって!」


ニーヴェリアが腐ったパンを山の底に埋まっていた汚物を見るように私を見てくる。


「あんたが契約したのは神様じゃない。」


薄情だ!畜生だ!


「だけど私に天啓をくれた。フィレリアの欲しいものではなく私がフィレリアの欲しいものになる。サポートというフィレリアの助けに。それに、困っている相手に恵みを与えるのはフィレリアっぽくてよかろう?」


フィレリアだったら無償じゃない?そう思いながら私の番を迎えた。


「えっと・・・。フィレリアさんの番ですが・・・代行でニーヴェリアが投げるそうです。」


特に戸惑うことなくアンリが紹介する。いやニーヴェリアの代行で投げて本人の番に投げないのは変で仕方ないけれど、いつものことだからね。


「いい?ニーヴェリア。真ん中高めに投げればいいから。」


私の言葉に無言でうなずくニーヴェリア。いいね。彼女の頭の数式によって精妙巧緻な投擲がされることは疑いがない。私は細工した矢をニーヴェリアに渡す。

細工と言っても簡単にするみたいなズルいものじゃないよ。簡単に切れちゃう糸を矢に巻き付けてそれの両端を支柱に取り付ける。支柱は私の指に着けてある糸につながっていてそれで動くようにしてある。


「さっきまで震えていたやつとは思えないな。」


ニーヴェリアがこっちを見て感心してくる。いやあんたのせいで震えたんだけど・・・。

私の狙いは巨獣用の竿だ。鹿とか熊とかを釣るための奴だね。


「巨獣用の竿なんて誰もいらないだろ。」


ボソッとニーヴェリアが言ってくる・・・!呆れてるみたいに嘲笑交じりだ!


「なにおぉ!」


あたまキた!かなり需要あるんだよ!これ!


「陸で釣りをするならこれを使わなきゃいけないの!人を釣るのにも使えるんだよ!訓練がつらくて脱走した人を簡単に吊り上げられるの!」


「レイナはみんなから嫌われることを狙っているのか?私はフィレリア以外どうでもいいがな!」


「そういう事も必要なだけだよ!」


「早く投げてくださーい。」


アンリが投げることを促してくる。でも嫌われて快感を覚える変態なんかじゃない!逃げたら訓練不足で逆に危険になるからだよ!


「みんな私の厳しさがやさしさだって知ってるよ!だから!」


「うるさい。辛子を鼻にねじ込んでやる。」


いっ・・・!


「ぎゃぁぁっぁぁぁ!」


私の鼻の中に辛子がねじ込まれた。私の鼻の奥が叫びをあげる。激痛というには少し違う刺激。痛みにプラスして爽快感を攪拌機にかけて過激な部分だけを抽出したようなフィールが私を襲う。私は気付いたら地面に転がっていた。外聞もなく地面に転がる!


「それ!」


ニーヴェリアが投げてやがる!私は悶絶しながら指で糸を操る。

集中!ルーレットがスローに見える。だからこそ私はこのルーレットに制約をかけた。感覚を研ぎ澄ませれば簡単に狙ったところへ狙える!でも集中するってことは体の感覚が敏感になるってことで・・・。


「ふわぁ。くしょぉぉぉん!」


私の鼻から乙女が、というか人体から出してはいけない黄色い物体が飛び出し地面にまき散らされる。


「退場です♡」


フィレリアがぶちぎれた。




***から騒ぎの終わり***


「本日はお越しいただきありがとうございました。教会の城壁の外にいる都市の兵士に安全に合流できるようにこちらのシスターがお送りいたします。」


「フィレリアさん本日はとても楽しかったです。あの子が愛されてたって・・・。幸せだったんだって分かってよかったです。」


シスターのソロルスの皆さんの代表の方が私に挨拶をすると笑顔で返します。皆さんそれぞれの家族を思い出して思い思いの表情を浮かべています。ただ一つ共通してことは晴れやかであることです。この瞬間でやっと安心します。


「今度は都市でお会いしましょう。パーティーも手配しますからみんなで笑いましょう。」


私が笑います。私は教会の長ですから。都市に行くときは重い意味を持っています。ですからたまには楽しいことをしたいのは本心です。会いに行くということは亡くなったみんなを忘れていないという事。それが彼女たちの慰めになっていればよいのですが。




***フィレリアの上の階***


俺はシスターのソロルスたちが帰っていく姿をむこうからみえないところで見ていた。


(ほとんど裸じゃん・・・。)


帰っていく人たちの服装を見て俺はドン引いていた。上下のセパレート水着みたいな面積しかない服を着て歩いていた。それも一人二人ではなく全員だ。あまりに痴女であるその姿に開いた口が開かない。悲しいかな男のサガとして目を離せなかった。


「何をしてるんですか?」


心臓が高鳴る。やましいことを・・・していたから、だけど・・・声をかけられて肝が冷える。振り向いてエネの顔を見たらばれていないことが分かった。


「いや・・・。なんでも・・・。・・・・・・なんで都市の人たちあんな格好してるの?」


やはり気になって聞いてしまった。このままでは二重の意味で悶々として夜も寝れない。


「あれですか?」


エネはいたって普通のことを聞くように聞き返してくる。ローカルグルメ系のバーチャルメディアの現地民のリアクション見たいだった。


「いや露出凄すぎでしょ・・・なんであんなんなの?」


「ああ。たしか大分前でしたけど都市で条例が出来てですね。城壁があって建物が密集していますから、下水施設などしっかり整備していても太陽での殺菌が不十分なんですよ。水浴びも二、三日に一回ですし」


しれッと言ってるけど科学力凄くない。普通わかんないでしょ紫外線の殺菌能力なんて。何で知ってるの?


「ですから、午前と午後で30分間日光浴が義務付けられてるんです。その際、できるだけ素肌で日光浴することが定められているということで、いちいち脱ぐのが面倒で利便性を求めてあの格好が流行して普及したのです。あれにマントを羽織ることが多いですね。多分教会を出たら羽織ると思います。」


冬に寒そうだし・・・。いや都市の方は温暖で気象は通年で安定してるんだっけ。


「この施策で不衛生からくる病人が減って有用性が知れ渡っています。ですので、長年続く政策なのです。実験の末にたどり着いた長年の知恵ですね。色々研究して今のスタイルが都市での暮らしに最適だってわかったのです。」


一人の人間が長年生きれば寿命によって引き継いで一から勉強なんてしなくていい。太陽の殺菌とか分かるのも不思議じゃないのか?


「長生きできるのもいいことがあるな。」


「長生きは毒でもあり薬でもあります。」


エネの後ろから見えたのはフィレリアさんだった。


「お疲れ様です。でもどうして・・・。まだ忙しいんじゃないですか?」


俺の言葉にフィレリアさんは一冊の本を渡してくる。装丁は立派じゃないしボロボロだ。


「せっかくのプレゼント交換会ですからケイさんにも参加してもらいたくて持ってきました。」


フィレリアさんは笑っている。そうかこれは亡くなったシスターの思いがこもっている本か。開いてみるとびっしりと文字が書いてある。この開いたページにはこの世界の風土が書かれていた。


「この世界は人が老いることなく老衰で亡くなる人がいません。病死もほとんどないので都市や教会の事務方のような安全な場所では昇進するための椅子が開きません。教会ではできる限り役割役職をローテーションさせていますが、やはり幹部格には機密もありますから。本当の意味での昇進は難しいです。でもこの子は地政学や時勢などの勉強にともっと教会のためになるよう勉強して昇進を目指していた手記を残していました。彼女の夢はもう叶わないですが。努力を引き継いであげてください。」


努力を引き継ぐ。それは世代が変わる世界の強さだ。俺は頷く。




***さらに上の階***




「いてててて。消毒用の辛子を鼻に突っ込まなくてもいいのに・・・。」


ニーヴェリアに突っ込まれた辛子がすっごい染みる。レイナさんを悶絶させるなんて大したもんだよ。

なんて一人で思ってるのは寂しいだけだね。

ニーヴェリアはみんなとトラブル起こしてないかな?まぁメルアシアがいれば丸く収めてくれるだろうけど。

ニーヴェリアはすごい奴なんだけどね。建設の測量とか投石機の弾道計算とか数字の計算に関することは教会で一番。理論化とかもうまいんだけどフィレリアフィレリアで他の人ことなんて見向きもしないからもったいないんだよね。建築のなんでもフィレリアが直接お願いしなきゃやらないし手癖でやってることを洗練させるのにもまたまたフィレリア。教会がピンチなんだしもうちょっと協調性を持ってほしいけど。


ソロルスの人たちが帰っていくのが高くからでも見える。泣いてる・・・。私がもっと頑張ってたらあの涙は流さなくてよかったのかな。手が震える。足が震える。




***屋根の上***




屋根の上からあたしは闇を焔で照らす。教会のシスターたちを見ていた。


「今回の襲撃でみんなは納得したの?そう・・・。」


「・・・。」


「そうだったの。残念だね。これから教会と都市はどうなると思う?」


「・・・。」


「そうなると私たちも厳しくなるかもね。そういえば人の味って。どんな味?」


「・・・。」


「いや、みんなはそれしか食べられないのに私が食べるわけにはいかないよ。お酒が生きるのに必要な生き物がいたとして、嗜好品として飲む人間が残り少ないお酒を飲める?


「・・・。」


「うん分かった。今は待つんだね『お父さん』。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ