第十二歩 受け継がれなかったバトン
最近は自然が牙をむいてきますが頑張って乗り越えれたらいいですね。
俺たちは正門の前にいた。俺とメルアシアの二人でとある人を待って居た。
「あっ!ハルさん!」
メルアシアが手を振る先には正門前から町へ入っていく長身の少女に手を振る。その子は控えめに手を振り返す。
「あの子訓練所の前をよく通って村の外に行ってるよな。何というか儚げな雰囲気だけど外に出て大丈夫なのか。」
この世界で生きているということは俺より逞しい可能性の方が高いんだが・・・。それでも儚く消えてしまうんじゃないかと危惧してしまうほどか細く感じてしまった。目が虚ろでこちらを見ているか分からない。
「大丈夫だよ。昔はすごかった人だから。」
[昔は]ってところに引っかかる。そう思っていたらハルが近くまで来ていた。彼女は植物を摘んだ籠を腕に下げていた。そうだ俺たちはグリスの腱鞘炎の薬を買いに来たんだった
「あぁあぁ。こんにちは。メルアシア。訓練でけが人が出たのかしら?悲しいことだわ。あぁ。」
やはり第一印象と違わないたおやかな声が俺の耳をくすぐる。
「グリスが腱鞘炎になっちゃってね。そのお薬の薬草貰えないかな?」
「あぁ。残念だけれど今は持ってないわ。適切な薬を使わなければ早い回復は認められないってお医者様の口癖だものね。」
割と思ってたけどこの世界って化学レベルというかそういうものが時代に比して高い気がする。薬効成分とか説明できないみたいだけれどゆえに迷信じみた万能薬は出てこなくて、個別に対応した薬が出るのも経験からでてきたものだろう。ケーミス教が道徳程度っていう事が変な妄信を防いでるのかな。
「もう一度採取に行った方がいいかしら?」
あらあらといった感じでハルさんが頬に手を当てて困っている。儚げだけど体力があるのかまた行く気満々だ。
「うーん。グリスが今戦力外になるのは困るからね・・・。」
「でももうすぐ暗くなるけど。」
俺がそう言うとチラッとメルアシアは見てくる。
「じゃあケイが守ってあげたら?」
・・・メルアシアは。というかメリトット的に俺を護衛側にしていいの?
「あぁ!それなら大変安心だわ。素敵ねぇ。」
ハルさんがパンと手をたたくと俺の手を取ってずんずんと正門の方に進んでいく。
「おっおい!」
俺は戸惑ってハルに声をかけるが全く聞いていない。夜空に模した空間をエスカレーターで昇っていくような恍惚に満ちた顔が浮かんでいた。
俺はメルアシアを見るが笑って送ってくる。手を振るなよ・・・。
(大丈夫なのかな。)
そう言っているうちにハルは手を引いてずんずん進んでいく。思ったより大分力が強い以外ではあったがそれも含めて困惑したまま進んでいく。
***南方の森***
「あぁ。私の自己紹介がまだだったわね。」
ハルさんが森についてすぐに思い出したように手を離して振り向いてくる。ドキッとする。美しい人だがそういう意味じゃない。妖しさというかカリスマというか。彼女だけの世界に引き込まれるような何かがあった。
「私はハル。仕事は・・・。あぁあぁ。薬草取りをしているわ。」
・・・。森に来たせいか真夏に突如かかった冷たい霧のように背筋が凍える。
「俺はケイだ。知ってると思うけどトロイメライからきたこの世界にお願いに来た。」
そうだったのねー。知らなかったわ。
ハルさんは俺の方を見ないでそう言う。それにも違和感があったがそれより。好奇の目で俺のことを全く見ない。強引なところもあったし、やっぱり儚げな雰囲気だけじゃない豪胆さも感じる。
「では行きましょうか。」
俺たちは目当ての薬草のある付近にまで森を進んだ。木漏れ日が多少は道を照らしているが薄暗くなっていく。ハルさんはいつもこの道を歩いているのか。なんというかひんやりして薄暗くて・・・毎日来ていたら気が滅入ってしまうように感じるのは慣れていないだけだろうか。
「こんな森だ。獰猛な獣がいて危険だろ?いつも一人なのか?」
俺は悪い足元に気を付けながら周囲にも警戒してハルに尋ねる。先ほどまで照らしてくれていた木漏れ日がなくより薄暗い。シィクロウィーンの危険もあるだろうが身近なのは獣だと思う。
「ええ。その方が私も落ち着けるわ。」
落ち着けるって本当に豪胆なだけなのか・・・?正直危機感が欠如しているように感じる。
「目当てのものはここよ。」
何となく違和感を感じながらも俺たちは目的地へ着く。
そこは花畑だった。日の届かない道中とは異なり太陽の日差しが輝きまるで天使の降臨する舞台のように燦燦と輝いていた。
「そこで待っててね。」
そう言うと薬草を摘み取り。そして近くにあった石碑に祈り始める。
「今日は二度目ね。みんな。」
お墓なのか?綺麗にされている石碑には名前のようなものが刻まれていた。
「みんな。今日は新しい仲間を連れてきたの。ケイさんっていうわ。」
亡くなった人があの下に眠っている。だから俺のことを伝えてるんだろうな。すごく親しかったんだな・・・。誰にも向けたことがなさそうな屈託のない笑顔で報告している。
「ほら!彼がケイよ!見たことない?当然よこの世界にいない男性なんだから!」
すこし・・・何というか故人と話しているというには本当にそこにいるかのように話してるような・・・。
「ケイも!ほらこの子たちも歓迎しているわ!この子たちの名前はヴェンターにイーヴェ。それに・・・。」
すがすがしい笑顔でこっちに振り向いてつらつらと人の名前を挙げ続ける。やばい・・・。いままで感じていた違和感の理由が分かってくる。この人は多分現実を生きていない・・・っ!失ったものの夢にとらわれている!
「あぁあぁ。ケイさんはびっくりしていますわね。仕方ないわよね。だって私が村長をやっていた村の子全員なんだから。」
ハルがケラケラと談笑する。でも俺にハルの声のほか風のさざめきしか聞こえていない。
「あぁあぁ。やっぱり姿は見えてないのね。これって死んじゃって体を失っているってことよね。」
ハルの言葉にぞわっとした感覚が首筋を襲う。この人は精神が崩壊している・・・。
「でもみんな落ち込まないでね!死んじゃったからって終わりじゃないんだから!聖書によれば男性が現れたら新しい命が生まれるの!つまり死んじゃったけど皆生き返れるのよ!新しい命ができるならそれは魂がこう見えてるものからだわ!」
恍惚な表情で熱く語り続ける。明らかに錯乱している・・・。この人は村を失って狂ったんだ。
***その日の夜村長の家***
俺は家のみんなで夕食を食べていた。俺の食べているパンは特別なものらしい。来客用のパンで一気に焼いて古くなったパンではなく、そこそこの頻度で焼いているものらしい。申し訳なくて忍びない。でも、メルアシアと同じものを食べさせてもらったら、吐いて無駄にした。なので大人しく特別仕様のものを食べてる。古いパンでもほかの村よりいいごはんらしい。
ただ、いまは特別製のパンも味を感じない。
「なあ・・・。ハルについてだけど。」
俺は躊躇しながらもメルアシアに話しかける。
「お墓の前でその話してたね。」
見てたのか・・・。いやさすがに警備無しに外に出してくれたってことはないか。
「あの人の過去に何があったんだ?」
ある程度想像はできるけど俺はメルアシアに聞いてみる。
「ハルはねメリトットほどじゃないけど大きな村の村長だったの。」
大きな村・・・。いやそうなのだろう。ハルは多くの人がいたことを示唆していた。数十名程度の人数だ。俺の時代だとピンとこなかったけど多分この世界で村は十数人でもおかしくない。
「その村はどうなったんだ。」
滅んだのは分かる。でも具体的にはどうなったのか。聞く怖さがあるが躊躇しても仕方がない。
「ハルを残して全滅した。」
っ・・・!まさか。いやその可能性もゼロじゃないとは思っていた。でもたった一人を残して全滅するなどと・・・。ハルさんの精神が完全に壊れないようにほかの村に移住してもらったのだと思っていた。いや本当に全滅など普通はあり得ないだろう。
「普通怖気づいたり怪我で逃げたりがあったりするけど、みんな勇敢な戦士だったからね。仕事をしながらも腕に自信のある戦士がいっぱいいたんだよ。」
メルアシアは家にいた全員がうなだれる。頼れる仲間だったのだろう。
「彼女は有数な指揮官だったよ。シィクロウィーンの襲撃の多い村で近隣ではその村が最優先で狙われてたの。一番北の山に近かったからかな?ハルはその襲撃に耐え続けていたの。するとその村には他の村から自分の村を守るためにいろんな村から人がきて大きくなっていった。」
ハルは人口の増えないこの世界で自分の力で村を大きくした。まさに傑物だったのか。
「でも大きくなっても危険な村には変わりなかった。ずっと綱渡りをしていたからね。足を踏み外しちゃったんだよ。」
砕けた口調だけどメルアシアの表情は暗い。
「私たちが救援に行ったけど間に合わなかった。すでに村が崩壊していたよ。すでにシィクロウィーンが去っていて・・・弔うしかできなかった。」
「その時ハルはどうしていたんだ?」
グリスが奥の方から出てきて一枚の紙を出してくる。顛末書だ。
「ハルはその時はまだ正気を保っていたよ。近くの村に逃げてきていたの。彼女は襲撃されて一番に狙われたみたい。足を怪我して私たちの救援要請のため近くの村へ送り出されてたの。」
シィクロウィーンは知性がある。欲望が強いから近場の村を狙う傾向があるけれどそれなりに経験から対策してくることもあるだろう。
「ハルが村についての報告を聞いたのは村が崩壊した後、だった。足の怪我はすごく重傷でそれでも戦力が一人でもかけたら困るから一人で引きずって近くの村に着て。ずっと早く戻らなきゃって焦ってたって。でも次にその村に関われたのは無くなった報告だったの。ずっと悔いてた。数日は部屋に引きこもってたよ。」
レリアンは席を立つ。村長を起こすためもあるだろうが、自分がこの場にふさわしくないと言ってるようにも見えた。
「出てきたときには今みたいに狂ってた。『私のせい、私が化け物に足を折られたから、私をかばって・・・だれかはおなかを貫かれて。私が走れなかったから・・・だれかとだれかは家につぶされて黒焦げ。私の足が動かないから逃げるとき支えてくれた・・・あの子たちは形見を託して追手のシィクロウィーンに突撃していった。私をかばって疲れてたはずなのに。』そう叫んだあと狂ってしまった。」
それ以上はメルアシアは語らなかった。
***翌日ハルの寄宿舎***
俺とメルアシアは寄宿舎のホールにいた。
「今日はハルは薬草を摘みに行ってなんだよな。」
「うん。本当は摘んでほしいものがあったんだけど別の人に頼んでもらったんだ。」
今日は俺の提案でハルの住んでいる寄宿舎に来ていた。仕事のない日はずっと引きこもっているとのことでここに来れば絶対に合えるとのことだ。
「やりたいことがあるって聞いたけど何するの?」
メルアシアが尋ねてくる。正直俺もハルさんを癒せる手段なんてない。でも何もしないよりはましと思って来ただけだった。
こんこんとハルの部屋のドアがノックされる。
「はい?誰かしら?」
パサリとドアの隙間から紙が差し込まれる。ハルは手に取ってその紙を手に取ると目を丸くする。
「『久しぶりハル!あんた祈っては寝て祈っては寝てばっかりらしいじゃん。あたしたちは今は別の村で頑張ってるの!会う時そんな姿見せたら召使だからね。じゃあね。』」
ハルが読み上げる。
「ヴェンターより・・・。」
ハルは自室の扉を開く。そこには誰もいない。ハルはキョロキョロ周りを見る。そのまま走り出した!
「・・・あれでいいの?」
メルアシアが聞いてくる。おれも正しいのか分からない。でも。
「ずっと殻に閉じこもっていてそっとしてても何も変わらない。殻にノックして前を向ける言葉をかけないと。彼女はすごい指揮官だったんだろ?今は一人でも前を向いていないとだめだろ?」
メルアシアは笑ってくれる。多分村にいる人としては下手に動きにくいけれど、みんな何とかしたいこと。その一例だったのだと思う。
「いやいや。ハルは薬草取りとしてもすごかったんだよ。危険を避ける術を知ってるし薬草も似たものを見分ける知識に長けていたよ。そんな人が薬草取り専念できないのはちょっと困るな。」
思ってたよりすごかった。てっきり消去法かと。
「でもそもそもハルがシィクロウィーンとの戦いで指揮してくれたら薬草の必要量が減るよね!」
そうすればハルは専業しなくて済むってことか。
「ねぇ!ハルどこ行くの!フロントでばたばたしてっ!」
寄宿舎のフロントの方から焦った声と扉を勢いよく開く音がここまで聞こえる。
「さすがに追った方がいいね・・・。」
メルアシアは少し汗をかいてみてくる。クレーンゲームで雪崩で逆に出口が詰まってしまったような微妙な焦りが俺たちを駆け巡った。
***南側の森***
ハルが町の外に出て行ったということはみんなの言葉で分かった。その先は誰に聞くでもなく分かった。
「森が騒がしい・・・。何かあったんだよな。」
俺とメルアシアは剣を握って目を見合わせてから森を進む。明らかに騒々しい。・・・いってしまえばシィクロウィーンの気配がする。
「これってハルはなんでかシィクロウィーンが森にいるのを知ってたのに加えて。部屋の外にいつも置いてある薬草籠がないことに気が付いて誰かが危険にあってるってわかったのかな?」
この森に通ってきた長年の勘か。いよいよシィクロウィーンの気配が大きくなってくる。
「いやーーー!」
叫び声が聞こえる!知らない叫び声だ。
「今日薬草取りを頼んだ子だよ!」
メルアシアが知らせてくる。そんな子は絶対に守らないとな!
俺たちは走り出す。そう遠くない俺たちはすぐにシィクロウィーンの影を捕らえられた。
「やぁぁぁ!」
メルアシアが飛び込んでシィクロウィーンに切りかかる!すさまじい跳躍で一気に距離を詰め1体をそのまま切り捨てた。
あと2体!
「一体引き付けるわ!」
その声の方を見るとハルさんが叫んでいた。
「一緒に一体かたづけるよ!」
メルアシアの言葉を受けて俺はシィクロウィーン1体と相対する。
「大丈夫。サポートするから。」
予期しなかったけど俺の試験として最適か。紗陽に頼らずに訓練だけで戦う初めての機会だ。
(臆せず攻める!)
俺は自ら切りかかる。スミちゃんの作った斜陽の複製じゃないけどやって見せる。
「はあぁぁ!」
シィクロウィーンの攻撃は分かっている横なぎにしゃがんで躱して刃をシィクロウィーンの胸を斬りつける。
「固い!」
シィクロウィーンの体に刃が刺さる。でも切り抜けられない。くそ!みんな簡単に切り裂いていたのに自分でもできてたのに・・・!今の自分にはできないなんて!
そう悔やんでいてもシィクロウィーンは止まってくれない。俺を掴んで地面に叩きつけようてしやがる!
「合格だよ!」
メルアシアがシィクロウィーンの上半身と下半身を真っ二つにする。俺は叩きつけられるよりマシな着地をする。くそ。まだまだだな。修行が足りない。
「ハルを助けに行くよ!」
俺たちはハルの方を見る。ハルは武器を持たず丸腰でシィクロウィーンから逃げ回っている。
「何で森の方へ逃げるんだ!」
足元の悪い少し森は浮遊できるシィクロウィーンが有利だ。木の間隔も空いてそれを助長している。
少しずつ両者の差が縮まっていきシィクロウィーンがハルめがけて腕を地面にたたきつける。それをハルがぎりぎりで避ける。するとすぐ横の木がシィクロウィーンに倒れ掛かり押しつぶす!木が腐っていたようでシィクロウィーンの衝撃が最後の一押しとなっていたようだ。
ハルは倒れているシィクロウィーンの背中を駆け上がっていく。
「倒木ぐらいじゃ倒せない!逃げろ!」
その声は間に合わずシィクロウィーンが起き上がってハルと倒木を上空に吹っ飛ばす。
「ハル!」
「大丈夫!」
立ち上がったシィクロウィーンの顔面に別の木が激突する。
「あれは!」
「倒木の可能性のある木にはロープを別の木に括り付けて倒木の方向を制御するのは普通でしょ?ロープが緩くなってて繋がってる逆側しか通れなかったけどだからこそ今回は木が倒れることが出来てシィクロウィーンを下敷きにできた。」
よく見れば倒木の方は上の方にロープを括りもう一方の木は下の方を結んでいた。
シィクロウィーンはぶつけられた木と逆方向へ吹っ飛んでいた。
そっちはハルと倒木が吹っ飛ばされていた方向!
ハルは空中で倒木を掴む。そのままそれを操って吹っ飛んできたシィクロウィーンの脳天に突き立てた!
「立ち上がって吹っ飛ばすと真上には飛ばない。だったらシィクロウィーンを誘導すればいい。それに自分がコントロールしてシィクロウィーンに突き立てた。ハルの狙い通りだったね。」
いや普通出来ないだろ・・・。さすがは有数の指揮官。
「久しぶりに疲れたわ。」
俺たちは剣を収めて笑顔でハルさんを迎える。
「一件落着だね。じゃあ私は薬草取りの子に来てた子の治療に行ってくる。」
「ああ頼む。」
そう答えると俺は視線をハルさんの方へ向ける。
「ん?」
ハルさんはそそくさとみんなに気付かれないように花畑の奥へ消えていく。
(何をしてるのだろう・・・。)
漠然とした不安に駆られて気付かれないようについていく。
(大分奥へ来たな・・・。)
するととある花が植えてある一帯に座った。
「あぁあぁ!よかったわ!荒らされていないのね。」
(なんだ。花の心配に来ただけなのか・・・。)
何の変哲もない植物だ。キノコとかじゃない。
「ハル動かないで!」
安堵した俺の心臓を刺したのはメルアシアの冷たい言葉だった。
「動かないで。」
ハルが固まる。メルアシアは薬草取りの子を背負って俺を見る。
「ケイも護衛対象だって忘れてない?」
そう咎めるがすぐにハルさんへ目を向ける。あまりに剣呑としている雰囲気に気圧される。
「それ麻薬だよね。重傷に耐えるために禁じ手として使うための麻薬。勝手に育てていいものじゃない。」
メルアシアから出た言葉が信じられなかった。かつて俺の世界でも使われていたと言われる痛み止めの麻薬。モルヒネとかそう言った類のものを無許可で作っている。そんな事許されるわけがない・・・!
「今日飛び出したのもこれが見つかったら困るからだよね。麻薬の無許可の栽培は追放の上ほかの村への向かい入れも禁止令を通達する。」
「あぁ!そんな!」
ハルさんが悲鳴を上げる。メルアシアの判断は冷徹だ!死刑ですらなく苦しんで死ねと言っているようなものだ!
「麻薬の栽培の一番の罪はそれがほかの村人へ流行させる可能性があること。村の機能を喪失させる最悪の病だよ。釈明の余地はない。」
「これはみんなの形見なの!私が逃げてしまった時渡してくれた形見なの!」
「それが形見・・・?」
形見がそんなものだったなんて。
「足を大けがした私を救ってくれて。村が焼けて苦しかった私を救ったのも麻薬なの!お願い!私が追放されてもいい!この子たちは焼き払わないで!それを守る私を捨てないで!」
狂ってるよ・・・。言ってることが狂ってるんだ。
分かってしまった。こうなってしまった人はもう追放するしかない。そうしなければ村が壊れる。いくら有能な指揮官でも許されることではない・・・。
「行くよ。みんな。」
メルアシアは崩れるハルさんの手を取って引きずっていく。
「こんなに苦しいのが村落だよ。」
メルアシアの言葉は哀しかった。




