第十一歩 研鑽 歩くための
実は番外編の一つ前のお話
その意味は特にない
***メリトット内部練兵場***
(外壁内にあるのになかなか広い広場だ。)
「どう?いつかは壊滅した村の子が住む予定だけど、いまはこうしてひろーい訓練所になってるの!凄いでしょ!」
いや重ェよ!今後の予定は言わなくていいだろ!わざわざ町の中に作ってるのさすが規模の大きな町だって思ったのに!
「まぁ今は都市の連中も狙ってくるかもだし内部にあるのは助かるか。」
そう言っている間に俺と話していたメルアシアはいつの間にか俺を抜かしてほかに訓練を受ける村人が並んだ前の台の上に乗った。
「みなさーん!準備はできてますかー!うん!それでは訓練会を始めまーす!」
コールアンドレスポンスを経てメルアシアが堂々と司会を取り仕切っている。この人昨日ベッドの上でごろごろ駄々こねてる奴とは思えないな~。
「久々の訓練会だけど皆さぼってないよね。」
「久しぶりだけどさぼってはないよー。」
「サボってはないけど最近全然訓練してないよー。」
どういうことなんだろ。戦う訓練さぼってないのに全然訓練してないって。
そう思ってたら村人の子が続ける。
「そりゃそうだよねー。」
「だって私たちが戦うのって片手間レベル。井戸の水をくむより全然時間かけてないからね。」
皆くすくす笑って。ねー!と確かめ合ってる。この文明レベルで専業の戦士は早々実現できないのか。これは都市との力の差を感じてしまう。
「何と今回はゲストがいます!この世界より未来?違う世界?より来ましたケイさんです!」
皆俺の方を向いて拍手してくれる。なんかめちゃくちゃ照れるな。
「せっかく今回はケイさんがいるということで超未来式のストレッチを教えてもらいました。筋肉痛とか後日のだるさとか全然なくなるらしいからね。みんな頑張ってやろうね。ということでコンコが手本になるのでみんなでストレッチしましょう。」
メルアシアは「メルアシアはどんなストレッチしても次の日寝てるんでしょ。次の日動きがぎこちなくなる私たちの気持ちは分からないのにー!とヤジを受けながら代から降りてくる。
そうしてみんながストレッチしている間にメルアシアは俺のところに来た。
「ケイはもうストレッチ終わってるからね。みんなの訓練の邪魔にならないように早めにプロテクタ着けちゃおっか。」
メルアシアはそういうと、てきぱきと一か所にまとめてある訓練用の道具を持ってくる。何というかトロイメライで初めて訓練したときに先輩に助けてもらったのを思い出す。厳しかったけど男っていう奇異の目は気持ち少なかった。
「・・・ごくっ!凄い・・・良い体じゃん・・・。」
声が聞こえた方を見るとグリスが座って俺の絵をかいていた。
・・・。
「何してるの。」
そう呟く。そりゃそうだグリスはこの村の執政を担っている。そりゃ複数人いるけどここにいていいの?今忙しくない!?というより聞かなかった振りしたいこと言ってたけど。
「あんたの体に興味があって。じろじろ見てるの。明らかに美術品の体をしてる。私たちみたいにくびれはあるけど、それと違って筋肉でパンプアップして上半身の発達のせいでそうなってるみたい・・・。でも太さはない筋肉による膨張みたいなのは感じない。ほらメルアシアもよく見てる。」
もう何も言うまい。あとメルアシアの視線はそんないかがわしいものじゃない。
「うんん。私はちょっと気になったことがあったの。・・・。うんとりあえず外傷は大丈夫そうだね。具合はどんな感じ?」
「大丈夫だよ。」
森での戦闘もこの街でのあれもしんどかったがもう回復は十分だ。あとは少しの運動後のだるさがあれば、自分が生き生きしてると感じられる。
「じゃあ始めようか。」
俺のプロテクタをつけ終えた後、メルアシアは紗陽に重量を寄せた木刀を俺に渡す。
「いきなり戦うのか・・・。」
メルアシアは木刀を構えて俺の前に立つ。まだ剣の振り方も習っていない。・・・。いや怖いのはそこじゃない。俺はこれから人と戦うための準備をする。俺が今まで戦っていたのはシィクロウィーンだ。それも機械に頼っての戦いだ。
「・・・。」
メリーの言葉を思い出す。人と殺し合うのも初めてで戦う力も機械で補っておるか・・・。なんだ、それならばハンデは一つだけだ。この世界のだれがひと殺しをしたことがある?軍隊にあってもそうそう手は上がらぬ。
・・・別に俺だけがこれからの戦いに不安なわけじゃないんだ。覚悟もゼロから覚えていこう。
「よしやろう。」
「うん。いい顔だね。」
メルアシアが気合を入れるのを感じて俺も剣を構える。
「私に勝てるように考えてみて。」
俺が構えて様子を見ているとメルアシアはじりじりと間を詰める。先に動いた方が主導権を取れると思う。でも戦いに長けた人の動きをまず見たい。そんなのんきに思っているのが間違いだった。
「なっ!」
瞬間俺の足が宙に浮いているのが見えた。背中から地面に叩きつけられる!いつの間に足払いを!だが寝転がってなんていられない。俺は頭が地面にぶつからないように両手で保護した後その手をばねに飛び起きる。
「その起き方!すぐに相手を見れないよ!」
メルアシアの声は右から聞こえてくる!まずい回り込まれた!
俺は無理やり体を右に向けてメルアシアの剣を受け止める。俺は必死に防ぐが受け止める体勢なんてできてない・・・。防御を崩されて何発も撃ち込まれる。プロテクタ越しに響く衝撃は生身に恐怖を響かせる。
「もっと本気で行くから!」
メルアシアがさらに足払いをかけてくる。今度は飛び退いて躱せた!斜め横に飛び込みながらしゃがんで放っていたのか!だがそれは撒き餌のためにゆっくりと放ったものだった。俺の視線はメルアシアの剣から離れていた。
「こっちをご注目!」
その声に反応できた時には胸に木刀を突き立てられた。肺中の空気をすべて吐き出させられて俺ははるか後方に吹き飛ぶ。
「かぁはぁ!」
ぎりぎりで受け身を取る。まだ剣は手放していない。
「とどめだよ。」
メルアシアは右手に持った剣を肩の高さに構え切っ先を向けてくる。そのまま全力疾走で突貫してくる。
(怖い!)
素直にそう思ってしまった。どうする逃げられる?いや加速してる間にやられる!受け止めるか?!あの勢いを?なら弱点を考えろ。全力疾走してるなら迎撃が難しいだろ!
俺は立ち上がって右に飛ぶ。そっちはメルアシアの左側!剣の持っていない方だ!
「頑張ったね。」
俺の横なぎの一撃は振り始めしか繰り出せなかった。がら空きだった俺の脇腹にメルアシアの飛び蹴りが刺さっていた。俺の測ったタイミングは爆発的な瞬発力で飛び込んだメルアシアによって先に潰された。最初から俺とメルアシアの大きな違いは剣だけを武器にしていなかったところだった。
「く・・・そ・・・。」
俺は地面に倒れこむ。そもそも『俺自身』が鍛えてない身で言うのもおこがましいけど・・・。悔しい・・・!
「うーん。聞いていた通りではあるけどね。ケイは本当に不思議な鍛え方してるんだね。」
俺たちはみんなが訓練をしている隅っこの方で座って休んでいた。ていうかグリスの描いてる紙が俺たちの背と同じくらいの高さになってるんだが。
「俺の鍛え方が不思議って?」
俺はメルアシアの評価を聞く。降水確率50%くらい煮え切らない評価にやきもきする。
「体が覚えてるって感じだよ。方針はこうしよう。とか、こうすれば有利だ。みたいなセオリーを考えていない動きだった。けれど構え方・体捌きは素人じゃないよ。何となくわかるでしょ?機械に操られていてもそれだって、体を使ってるだから体は学習していくんだと思う。」
思えば機械に操られているのはダンスレッスンで先生に後ろから腕を掴まれて指導されているようなものだった。だからこそ少しずつでも体に動きが馴染んでいたんだ。
「普通は体鍛えつつ模擬戦で腕試し。それを訓練にフィードバックしていくから体のキレと戦術の確立を両立していくの。だから片っぽしかできてないのが不思議なの。まぁ体の動きも経験の裏付けがなくてふわふわだったけど。」
ふわふわだったのか・・・。体はカチカチってグリスが呟いてる。
「それでも構えは良かったよ。攻撃にも防御にも適したスタンダードな構えだね。」
知らなかったな。自分が命を懸けている型なのに・・・勝手にへこむ。
「よかったじゃないですか。」
グリスが横から話しかけてくる。
「よかったのか?」
マジでシンプルな感想を言う。だってなんでよかったなんて言われたか分からない。
「ほらこれを見て。」
グリスが山のように積まれていた紙の束の一部を掴んで俺に見せてくる。
そのままそれを素早くめくり始める。パラパラ漫画だ。
「すごい俺とメルアシアの立ち合いがアニメーションになっている。」
グリスがむふーと胸を張る。カメラみたいに自分の目で正確に俺たちの動きを記録して神速ともいえる筆を振るったのか・・・。こいつ変態の目じゃなくて画家の目だったのか・・・。
「ケイの動き自分で思ってるより良くない?そもそもゼロからスタートでもおかしく無かったじゃん。だからこれだけリードが付いたスタートができたのラッキーじゃん。」
確かにそうだ。なんでへこんでたんだ。中途半端に実力があるってわかるとプライドが出てきてしまうものか。
「そりゃ。そんなのでへこんでたらこの先やってられないから。でも体格作りも基礎も吹っ飛ばせる。すぐに実践するのに一番壁になるところをクリアできてるのはラッキー。正直実践まで護身術すら教えられないかもしれないと思ってたから。」
メルアシアの分析にプロを感じた。背中を預ける人になりうるか馬車に隠れたお姫様になるかの分水嶺だった。
「足手まといにならないように頑張るよ。」
俺の意気込みにメルアシアは笑う。
しかし懸念が消えれば余裕が出る余裕が出ればよそが見えてくる。・・・やっぱり気になる。
「なあグリス?その山になってる紙の束って全部パラパラ漫画なのか?」
俺はグリスの見せてくれた紙の束を指さす。とんでもない量だし持って帰れるのか?
「そうだけど。」
グリスはきょとんとする。いやきょとんとすることだろうか。
この世界は基本的に羊皮紙だ。いや羊皮紙さえも少なく、蝋板が主要だ。いわゆる紙といえるものが無い。なのにグリスが使っているのは上質紙にしかみえない。それをこんなに大量に?だったらこれを売れば大儲けなんじゃないか?
「それどこで買ったんだ?」
あー。とグリスは得心言ったようにうなずく。メルアシアすらそうだったねと驚いてる。
「これ。」
「あ゛っあ゛あ゛・・・」
シィクロウィーンの
首が瓶の中に詰まっていた・・・。いや気持ち悪!すっごく苦悶した表情を浮かべてる。口が瓶の口に合わせてあって気持ち悪い。というか生首で何で入ってんの?再生しないの。
「なんでこんなの持ってるの?」
「それって入手方法?それとも理由?」
そんなの両方に決まってるだろうが。そういう前にグリスは解説を始めた。
「この子は私とお絵描き勝負で負けたから爆散して首だけになって私の奴隷をやってる。ほら。」
「ヴォェェェェェ!」
シィクロウィーンの鼻をつまむと口から大量の上質紙とボトルに入ったインクを吐き出す。
やばい鳥肌が立つ。このシィクロウィーンの入手経緯も紙とかの入手方法もすべてが俺の脳の理解を拒否させる。
「えっと・・・入手法も持ってる理由もわかった。もうしまってくれ・・・。」
「いや?まだしまわないよ?」
いやしまってほしいが。そんなお気に入りなん?お気に入り拒絶されて怒ってるん?
「これ売ったらよくないって思うでしょ。」
紙とインクを取ってグリスはそう言う。
「ということではい。」
グリスはインクと紙を俺に渡してくる。口から出てきてるけど別に湿ってない。それを差し引いても持って居たくはないけど。
「それ持って私から離れて。」
グリスがそういうので俺は怪訝そうに離れる。あれ?手元がやけに軽く・・・。
「消えてる!?」
さっきまで持っていた紙とインクボトルがきれいさっぱり消え去っていた。確かに持っていたはずだ!冷たくなかったし氷なんかじゃ決してなかった。
「このシィクロウィーンは私に屈服して物資を受け渡してるからこいつが認めるものを描かないと消えるんだよ。そしてそれをできるのは私だけ。」
ようは白紙とか文房具として売れず絵画とかにしないと消えるってことか。そうなると用途が限られてくるのか?
「グリスが描いてティッシュペーパーとかに使えないの?」
「芸術が穢された瞬間消えるよ。」
マジで使いにくいな・・・。
「だから地図とかを描いて都市に売って・・・あ。これメルアシアにも村長にも言ってないっけ。」
グリスは悪びれずに言う。メルアシアは真顔のまま固まる。
「ねぇグリスその地図って都市の中とかだよね?村落を繋ぐ道とかじゃないよね?」
メルアシアがグリスに詰め寄る。グリスはそっぽを向いて空の鳥を描き始める。
「・・・・・・。」
メルアシアが無言の圧力をかける。どっかの裏に連れ込まれそうな雰囲気だ。
「大丈夫だよ。地図は半分偽物だから。卓上旅行用にしかならないって。」
「それでも都市の密貿易の商人が遭難して問題になりかねないんだけど・・・。」
ん?もしかして都市が村落の要求を突っぱねるような決断したのも妖術まがいの筆記具作成と行方不明者が出たのが遠因の一つじゃないのか・・・。
「ほっほら!今はそれより訓練だって。時間はないんでしょ?やらなきゃほらほら!がんばって!」
メルアシアは納得いかない顔をしてるけどもっともだし俺とメルアシアはため息をついて訓練をするのだった。
俺たちは基礎を固める訓練をその日は続けた。
***翌日***
おれはメルアシアの審判の元ともに訓練している子と模擬戦をしていた。
「やぁ!」
その子が振るう木刀を受け止める。確かな技術を感じる一撃は重いが俺は揺らがない。
「はぁーー!」
俺は工夫も無しに愚直に押し返す。そのまま俺は頭突きをぶつける。プロテクタ同士がぶつかるが体勢を崩して勝負が決する。
「いやー力強いね。」
その子が笑って褒めてくれる。
「いい試合だったよ。」
俺は手を貸して立ち上がらせると治療のためその子は下がっていった。
「なかなか良くなったんじゃないかな。少なくとも戦場で右往左往はしなくてもいいくらいだよ。」
メルアシアが褒めてくれる。すぐには強くはなれないけど俺に適した戦い方を考えていた。
「筋力は群を抜けているし基礎体力だって抜群。俊敏性その他身体能力は超一流。この世界で身体測定したら十本指に入るんじゃないかな。」
俺は人体に対する研究の進んだトロイメライで戦うための体づくりをしてきた。だから体づくりという面では負けることはないだろう。それに俺の研究をしてた人曰く男女で身体能力は顕著に違うそうだ。
でも十本指なんだな。
「だからごり押せるだけの戦い方を身に着けようよ。それがどんな技術より強い戦い方だよ。」
スマートじゃないけれど勝てばいい。いまはそう思い込むだけだ。
「元気そうだねー!」
俺たちが頷き合っている後ろからやかましい声が聞こえる。
ていうか!めっっっっちゃびっくりした!なんも気配無かったもん!
俺が振り向くとそこには思いもよらない人が立っていた。
「レイナ!」
そこには汗だくのレイナが鞄を持ち上げて笑っていた。
「フィレリアからのお知らせ持ってきたよ!」
つまりそれって。わざわざそれを確実性のあるレイナが持ってきたのは。
「いまの情勢と今後の動きが書いてあるの!やったね!ケイ!」
メルアシアは手を取ってぴょんぴょんはねる。やったこれで交渉が進む!
「でも取り敢えず水浴びしたいんだけど。ケイも一緒に来て。」
えっ!なんで!
「とんぼ返りしなきゃいけないからさっさと行くよ。」
そう言われると恥ずかしいとか言っていられない。めちゃくちゃドキドキするけど、俺は村のはずれの小さな滝へレイナ・グリス・メルアシアの四人で向かった。
俺は滝つぼで湯あみをしているレイナを背に岩に座っていた。さすがに向かい合って話せない。だってレイナは素っ裸だ。
「数日前の情報なことは勘弁してね。」
レイナは前置きをして話し出す。全然俺がいるのに気にせず水浴びをしている。そりゃ男女の違いなんて俺しか男が無いから分からないのは仕方ないんだろうけど。女友達と同じ感覚なのはな・・・。
でも今はそんなことは気にしてられない。
「まず初めに安心てほしいこととして教会と都市は交渉を一時停止しているよ。都市の人たちは教会の城壁の外に駐屯してるんだ~。」
ありがたいそれが分かるとこれから聞く状況を少し楽に聞ける。
「それは良かった。本題を緊張せずに聞けるよ。」
「そうそう。ドキドキしたまま話聞くのつらいもんね。で、その本題だけど都市の要求の内容はケイの処刑だった。」
「まぁ・・・そうだよな。」
俺はそう相槌を打つしかできない。メルアシアも伺うように俺を見る。・・・しょっぱなから殺しに来たからそんな気はしてた。
「都市があなた様を消したい理由ははっきり表明していないけれどいくつか推測は立ってる。」
メルアシアはすでに受け取っていたフィレリアの手紙を俺にも見せてくれる。
そこにはフィレリアの予想が書いてあった。それをレイナがそらんじる。
「一つクレインは人が老いない。それは聖書曰く新たな生命が生まれないから。都市は人口の増加やリタイアがない。だから身分ががちがちに固まって政府であっても商会であってもどこでも昇進は起こらない。いってしまえば地位を脅かされることはないんだよね。でも老いたり新しい人が入ればその地位は安泰ではなく脅かされるようになる。それは都市の人間にとって未知の恐怖になるね。だから私たちの対となる男性のケイさんを消そうとした。
二つケイさんがこの世界に来た時シィクロウィーンに対してはなった攻撃。あれはこの世界では未知の技術です。これに比肩する技術をケイさんが持っているとすると都市の優位性が損なわれるためそれの阻止のため。
三つ大義名分が教会に喧伝される前につぶしたい。」
「なんだ?それ・・・。」
二つ目まではすらすらと読めたが途中でつまってしまった。それを補足するようにメルアシアが口を開く。
「聖書に書いてあったこと男性の降臨がされたとき罪が消えてる証。そして人の罪を清算しようと活動していたのは教会だよ。宗教が道徳程度の浸透でも奇跡を起こせば注目されるし立場も上がっていく。聖書にはさらなる恩恵が書いてあるし実績ができれば政府より教会支持も強くなる。だからそれをさせたくない。」
技術とは別角度の立場逆転か。人心の分よりこっちの方がきつそうだな。
「なるほど・・・。都市が俺を邪魔に感じるもの当然か。だから排除されそうになった。もし都市の攻撃の理由が一番目の理由が一番きついな。他はうまいこと交渉すれば解決できそうだけどこれだとな・・・。」
「フィレリア曰く三つの複合でそれがいちばん比重が高いらしいよ。」
だよな・・・。都市の代表と話している以上断片的にでも要求がわかってるはずだ。
俺はこの世界に楔を打ち込んでトロイメライとつなぐネットワークを構築する必要がある。それにはこの世界の人に接続のための機械を破壊されないように交渉と維持のお願いが必要だ。
「教会から俺に要求しているものは変わらず人工子宮で間違いないな?」
「変わらないよ。どれだけ都市の機嫌を損ねようと村落の維持するために絶対必要。」
都市にそれを認めさせないと余裕のない教会と村落では守り切れないし維持できない。教会や村落も都市の支援なしで成り立たないのにそれだけ強硬に要求する人工子宮か。新たな生命が生まれれば老化が始まり都市の不興を買って村落は滅ぶかもしれない懸念の未来と人口が減り続ける現状絶対に持たないときが来る確定事項だと前者を選ぶしかないか。
「そういえば都市は村落と貿易しててそれなりに助けられてたよな。それでも都市は譲歩できないのか。フィレリアも交渉のカードにしないわけないだろうし。」
「都市の対応は分かんない。でも多分フィレリアも言っただろうし突っぱねられた。何かあるんだろうね。もう一つの懸念点である防衛についてだけど。」
たしかシィクロウィーンの防衛に村落を盾にしてる。そのおかげで都市まで襲いに来るシィクロウィーンは少ないらしいが。
「都市は前から城壁の補修として暗幕がかけられてたんだけどそれが改修工事だったみたい。」
「そうして分からなかったの?」
メルアシアがレイナに聞く。責める気はないんだろうけど少し語気が強い。死活問題だから仕方ない。
「あんまり探りをかけると都市から支援で脅されるんだよ。まだ全然改修ができてないみたいだし気が付ける段階じゃなかった。」
簡潔だけど都市の力が響く一言だ・・・。
「そういえば都市はどうやって教会の人を抱き込んだんだ?」
正直みんな言いたくも聞きたくもないだろうけど・・・だからこそ一番言いやすい俺が言う。
レイナもメルアシアもうつむいているのか一瞬沈黙が挟まる。
「・・・。教会は知っての通り都市の人間で構成されてる。それにみんな疑似家族のソロルスを築いてる。その多くは一つの商館だったりの組織単位に所属してて、そこから教会に送り出してるよ。だからみんな所属してる組織の状況に縛られる。経営状態のよくない子が狙われたみたい・・・。いや、あいつらは壁を改修している時点で村落を切り捨てることを決めていた。フィレリアはみんなを怖がらせないため言わなかったけどケイが居ようが居まいが、いつかはこうなっていたと思うんだ。だから政策で意図的に教会に来ている子のいるソロルスを弱らせた。そうできたと思う。」
俺が居なくても起きてたか・・・。どう見るべきだろうな。都市の準備が整う前に動かせたか。それともフィレリアたちが情報を集めて気がついて対抗の準備する可能性を潰したか・・・。
「あはははは!」
メルアシアは大きな声で笑い始める。
「メルアシア?」
俺が不安に駆られて名前を口にすると。
「それならよかった。都市が壁を改修してるならそれは村落から輸入してたもの。騙されて自分たちが背負う十字架を運ばされてた。そんなの後悔してもしきれない。教会も・・・つらい思いをしたと思うけどもっと大変なことになってたかもしれない。両者ともに反撃の気力が無くなるくらい。軍団長なら絶対やるから。ケイありがとうね今なら反撃ができるよ!」
本当にポジティブだよ。だからこそ過酷な村落でも生きていけるのか。
「そうやられた分は倍返しで反攻だよ!その筒に作戦の書かれた紙が入ってる。」
後ろからレイナの声が響く。レイナがメルアシアに渡していた金属製の筒を指さしたんだと思う。メルアシアはそれを見ている。
「その筒は接合に氷の奇石が使われてる。よっぽどのことがない限り作戦予定日の二日前まで開かないことになってる。村長の家で作戦の予定日を言うね。」
奇石。教会の避雷針みたいなやつか。時限性の接着剤みたいなことが出来るやつもあるのか便利だな。
「都市のやり方は腐った部位を少しずつ切除していくだけ。いつか自分たちが切られる番になるのに目をそらしてるだけだよ。そんな相手に勝たなきゃ。
「「「勝とう!!!」」」
***村長の家レイナ出立寸前***
「もう行くんだな。」
俺は村長の家の扉に手をかけたレイナに呟く。久しぶりに会えて嬉しかった。それだけに無意識に寂しかったのかもしれない。
「うん。また・・・」
「カチコミじゃオラッ!」
裏返る声とともにレイナの掴んでいた扉が勢い良く開かれる!スミちゃんだ!
「変な人来た・・・。」
レイナは危機を察してするりと村長宅から抜け出す。しんみりしそうだったのに!なんでこんな別れになるんだよ!
「えっ・・・。もしかしてウチミスった。」
スミちゃんが雰囲気をさとって突然青くなる。まずいほっとくと無限に落ち込み始める・・・。
「だいじょうぶ・・・大丈夫だよ。」
ひゅーひゅーと喉を鳴らして目をぐるぐるにさせて本当につらそうに動悸を起こしてる。
さすがに心配になる・・・。お化け屋敷で強がりが死にかけてるような感じだ。
俺の声も聞こえてるかどうか・・・。
「大丈夫だってお見送りした後だから。」
俺がフォローするがまだ瞳孔がん開きになってるスミちゃん。
「そ・・・それもあるけど・・・。しらないひとのオーダーメイドなんて初めてだから緊張がやばい・・・。」
あれだけ試練を課しといてまだ緊張するのか・・・。なんていうのはさすがにかわいそうか。
「受け取ってくれ・・・。」
上目遣いでスミちゃんが渡してくる。
「ありがとう。」
俺はスミちゃんから剣を受け取る。スミちゃんの手が冷たい本当に怖がりだな。
受け取った剣は斜陽だと錯覚ほど俺の手になじんでた。
「俺のイメージ通りだ。」
スミちゃんはかみしめる表情で溜めた後、ぱぁっと明るい表情を見せる。
「じゃあもう帰るから!」
そう言ってスミちゃんは帰っていく。これで来客は打ち止めかな。
「っはぁはぁはぁ。」
あれまだスミちゃんが帰ってなかったの?
そう思った瞬間ばたりという音がする。
「グリス!」
グリスが地面に顔面から倒れこむ。大丈夫なのか立った体勢からそのまま倒れたぞ!
俺がグリスを抱きかかえる!大丈夫なのか・・・。
「腱鞘炎が気持ちいい!」
「薬草が必要だね。」
いやグリスがおかしなこと言ったからってそんなこと言うなよ・・・。
「で腱鞘炎の薬?頭の薬?」
俺の言葉に「ついてきて」とだけメーフィアが答えた。




