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パラレルワールドハレム  作者: 和泉日生
11/18

十一歩目 試練?

今回はまだ投稿が早かったけど体調不良がたびたび再発して悲しい

俺は今何を見ているのだろう。


「やだー!やだよー!」


目の前でじたばたしている物質が何なのか理解できずに俺は慄いて立ち尽くしていた。


「もう起きてよ。今は忙しいんだよ。」


グリスが呆れてそれを見下ろしている。まるで残飯でも見るような目だ。


「起きて。メルアシア。」


グリスの呼んだその名を信じたくはなかった。その声でシーツをかぶりうつぶせで亀としているそれはメルアシアに見えない。というか信じたくはない。その状態でじたばたするせいでシーツに鼻水がついている・・・。


「いやだよ!私は何日も働いたんだよ!私は一日働いたら一日寝るの!ここ数日は変則的にでも毎日働いてたの!だから休むの!」


グルスはため息をつく。無理に引き剝がさないのはこれを知っていたからだろう。いや週3休どころかオセロ出勤以外拒否か。


「教会に対する顛末報告しないとだめだから早く話を聞きたいんだけど。」


グリスはカチカチのパンを水でふやかして食べる。冷たい声だ・・・。


「仕方ないよね。疲れてるんだもん。」


メーフィアさんあなた「もん」なんて使った?いや使うか?駄目だ混乱している。

そもそも。メルアシアを呼んできたのもリビングでレリアンから村長の伝言があったからだ。グリスもメーフィアを休ませたいのか部屋に戻る道中も文句を言っていた。もしかしてメーフィアに話している声色は冷徹じゃなくて事務的なだけ?

ていうか、余裕と愛嬌を見せていたメルアシアが駄々っ子になってるのが受け入れられない。


「私たちは頑張ったよ。だからレリアンにはそう報告しよう。あの子は一日働くと一日休むようにできてるんだよ。どうしようもない。」


「いやコスパ悪すぎだろ・・・。」


中堅スポーツチームみたいな成績だな。


「メルアシアはめちゃくちゃできる子なんだけどその反動も大きいんだ。」


そりゃあの怪物みたいなミリーシャの槍に瞬殺されずにインペラみたいな権謀術数の使い手の思考に対応したりスペックはすごいと思う。でもここまでふにゃふにゃに・・・。


「行きましょうか。」


俺は最後までメーフィアから目を離せなかったが後ろ髪を引かれるように部屋の外に出る。マジで理解できない。

俺はそもそももどってきた理由を詳細に思い返す。

朝起きてあいさつのためリビングに入るなり俺は顔面に羊皮紙を投げつけられていた。


「そこに書いてある通りにしろよ!じゃあな!」


レムリアの声が響いたからあいつなんだろう。羊皮紙を見るとさっきのメルアシアに対する命令が書かれていた。それに。


「徴兵同意書だっけ。レムリアに投げられてたの。」


俺はポケットに折りたたんで入れていたそれを取り出して広げる。グリスはそれを物珍しそうにのぞき込む。


「専属の兵隊って・・・こんなのメリトットの誰も書いたことないよ。専属の兵隊はここでは見ないね。」


俺はその言葉に違和感しかない。何というか電脳世界で毒が効かないからって、電脳世界で現実で食べたら死ぬものを食い漁っている連中の所業ぐらい違和感がある。


「そうなのか。」


「他の仕事の合間に有志の子が村を守ってる。みんな余裕ないからね。」


そう聞くとなんかしなきゃいけない気になるけれど・・・。お世話になるのは多分短い期間だし下手に仕事を教えてもらうのも迷惑なだけか。


「でどうすればいいのかな。契約書にはパンフレットなんてはさまってなかった。」


「なにそれ?せっかちなレムリアに説明なんて期待しない方がいいよ。」


どうでもいいけど、なんにでもヘルプのある俺の世界とのカルチャーショックを感じてしまった。俺たちは便利すぎる世界に生きてるのかもな。


「しかし困ったね。私は軍事のことは分からないから。」


俺とグリスは二人で訳もなく見合っていた。


「忘れてた!」


バンと扉が解き放たれる。俺たち二人でびくっと見つめ合う。勿論そんな奴は一人だけだ。俺たちが驚いているのにも気にせずレムリアは言いたいことを押し付けてくる。


「忘れてた!契約するなら訓練用の剣作れ!スミちゃんに頼んでおいたからよろしく!」


また消えた。いやまだ足りねぇよ。誰だよスミちゃんって。


「スミちゃんか・・・。スミちゃん・・・か。」


グリスが頭を押さえてる。いやまだ面倒ごとがあるのか・・・。




***スミちゃんの家***


「さいっ!あくだっ!厄災だー!」


村の外縁のさらに外壁を超えてさらに外!そんな辺鄙なところにレリアンが突撃してきた!その瞬間に今日の安寧がないことを悟ったんだ。


「なななななな何しに来たぇ。」


焦って飛び起きてレリアンに枕を投げつける。やべ!下地面じゃん。枕が地面に落ちてうちの方がダメージを受ける。


「昨日男が来たのは知ってるな!では頼んだ!」


「待って!行かないで!」


ていうか枕をぶつけたの無視かよ!陰キャにはお辛いだろうが!それより!


「そうだな。注文用紙に概要を書いとくぞ。」


「ごめんて!まくら投げたの謝るからちゃんと話して!」


涙がちょちょぎれてきた。なんでこんなに押してるのに壁と話してるくらい反応が返ってこないんだ!ドッチボールだろこれじゃ。


「!!!」


やっとレリアンは落ち着いてくれた。もっもっ、と二人で座ってお高いパンを喰らった。勿論おごらせた。固くないし塩味が効いて最高!この町一の鍛冶屋を自称している私でもこんなものは頻繁には食べられない高級品だ。

そしてレリアンは内容を一通り話してくれた。いちいち飛ばしてくる内容を引き戻すのがつらかったな。


「話は分かったでも条件がある。」


「こんな高いパンを奢らせて?」


それを言うな。脇腹が痛くなる。でもそもそも誰もかれも振り回してるこいつが言うな。

いつもいつも無茶な納期の発注ばかりしてるしみんな辟易してる。

そうだ!こいつなら何言ってもいいか。見てろよ能天気な顔しやがって。そのアホ面をすぐゆがめてやる。




***城壁の上にスミちゃんが孤独に***

いまウチは単眼鏡を片手に城壁に立っている。この単眼鏡は科学の村?とかいうところで作られたシィクロウィーンを観測するためのものだ。だから貸してくれた警備員が白い目で私を見てくる。孤独だ。


「立ててないですよ。」


後ろにいる・・・。いや後ろで支えている警備員のレッチェが呟く。


「うるさい黙って支えていろ。」


ここマジで高いんだよ・・・。なんでこの高さで胸壁が腰の高さまでしかないんだよ!高所恐怖症の身からすると足がすくんで腰を支えられている状態でようやく腰砕けで済んでおるわ。

・・・いやレッチェに後ろから押されそうで怖い。ウチは好かれてな・・・。嫉妬されているからな。


「ふぅ・・・。」


さてなぜ私がこんなことをしているかだ。それはウチは剣を打つ相手を見定めなければならないからだ。ちょうど単眼鏡で村長のいるこの村の中央にある家から人が出てくるのを観測する。


「あれがケイというやつか。」


遠くてよく見えないが多分そうだろう。


「遠目でしか見えませんでしたが私たちよりがっちりとしてましたね。それでもガチムチではなくすらっとしてる印象でしたが。」


たぶんこの村に来るときに見たんだろうけど、目がよすぎだろ。今もなんか見えてる風だし。


「しかしちゃんと一人だ。レリアンの阿保も言うこと聞けるじゃあないか。」


奴は背嚢を背負ってこちらの住処へ向けて向かってくる。


「なんで歩いてくるところなんて見るんですか?」


一応聞いとくか感と暇人風情が、という空気を感じるがこれはウチにとって大事な儀式なんだよ。


「ウチが会うにふさわしいメルヘンアンドファンタジー精神を持っているか試すんだよ!」


「それは大変ですね。」


レッチェぇ!なんでみんなそんなにウチに無関心なんだよ!そりゃめんどくさい奴だけどさぁ!


「だって知らない人怖いだろ!もしおっかない人だったら・・・ウチは目の前で吐いてしまうぞ!ゲロを!」


レッチェの奴全然聞いてないじゃないか。さっきも言ったけど!ウチは繊細なんだ

わがハートは風に吹かれただけで砕けるぞ!


「なんでウチがくそ暑い中、髪をちりちりにしながら鍛冶屋なんてやってると思っている!」


「知らないよ。」


どんどん雑になるな貴様。いらだってる声が怖いぞ。


「人が怖いに決まってるじゃないか!だから知らない人に合わなくて済む鍛冶屋をやっているんだ!そんな仕事なんて限られてるからな。たまたま空いていたこの仕事をやるしかなったんだよ!」


「そんなに人と会うの嫌?」


「たとえ慈母のような人でも初対面なら手を差し伸べられた瞬間に気絶する。」


「じゃあこんなことしてても意味ないじゃない。」


うるさい!

そんなこんなしてるうちに奴が歩き出した。さてそろそろレムリアに用意させたウチに会うための第一関門がすぐそこにまで迫っている。

ウチは奴に注視する。奴の前にふらふらと迫りくるのはコードネーム栃少女だ。


「いけ!栃少女!」


ウチの叫び声にレッチェが引いているぅ!

だがどうでもいい!実況だ!栃少女は奴にもたれかかるようにぶつかる。

ここからは奴の気持ちになって実況してやる。

ごめん大丈夫?とケイは言っているぞ。栃少女の方はそのまま横に倒れ始める。いいぞ良い演技だ。すかさずケイは抱きかかえる。そうだ地面は整備されていない小石が刺さると痛いからなそういった気を使えるムーブは加点だ。


「・・・っ!」


あいつ・・・自らの膝を地面につけないで抱えてからお姫様抱っこに移行してやがる。栃少女の服を地面につけて汚さないだけじゃなくて自分の服すら汚さずにこれから会うウチに失礼がないように配慮している・・・。やるな。


「あんだけよさそうな人なら試練なんていらなかったね。」


敬語を捨てやがったねレッチェ。


「いやダメだ。表面よさそうでも裏で悪口をいうからなもっと追い詰めないと。」


「裏で悪口を言うのは君だよ。」


「うるさいな!私が言うのは心の中だ!あれだぞ!私が自警団に納入しに行ったときレリアンの悪口が言われてた!」


「あんたじゃないじゃん。」


「うるさい!相手が誰であろうとそういうのを口に出すのはそれだけでやばい奴なんだよ。ウチは心の中だけだよ!それは天と地ほどの差がある!だってお前実際にキレる奴と心の中でキレる奴どっちと仕事したい!」


「あんたどっちとも仕事できないじゃん。」


なんでこいつの言葉はキレッキレなんだ!


「最大限熟慮して推敲して譲歩して心の声だろ!いやそもそも、誰もキレさせないようにみんな気を使うの一番だろ!」


「あんたはできないけどね。ていうか何で陰口の話がキレるかの話になってんの。」


さて実況に戻るか。


ケイ:(グリス曰くスミちゃんってやばい人らしいからなー。やばい人って粗探し怖いし)


栃少女を村長の家に送ってからケイは戻ってきたな。

悠々と歩いてやがる。人助けしてずいぶん気持ちいだろうな。だがまだ関門はあるぞ!

少し進んで中心の栄えているあたりから外れて少し寂れたあたりに奴が差し掛かった。

・・・少し不安そうだ。それはそうだあの辺りは治安が比較的悪いスリとかもたまにいるあたりだ。


「もし、貴様が食べ物持ってるならわたくしにくれてやってくれませぬかしら。」


第二関門だ。こんな視線の恐ろしいところで、あり得ない口調の女が飯をたかってくる。通称ヤバ女!疑わないわけがない。絶対なんか・・・なんか囲んで叩かれる未来しか見えないだろう。


「栃女の次は栗女とかじゃないの?」


レッチェうるさい。

勿論それだけじゃない。奴の持っているご飯はパン一つそしてウチに渡すお土産だけ。


「土地勘のない場所。しーかーもー雑多でわたしすら迷う地区だ!貴重な食料を渡したくはあるまい~。」


「それはあんたが外に出ないからじゃない?」


「それはあんたが警備の仕事やってるからだよ!一般人は自分の町ですら大道一本逸れれば未知のゾーンだよ!」


皆もあるだろ!この住宅街が一直線に道がつながってたら近道なんだけどな~。つながって無かった時に引き返すの大変だな~って思ったこと!


「思ったんだけど男の人に驚かないで演技する住民って変じゃない。」


レッチェうるさい。

おおっ!ケイが膝をついているヤバ女に目線を合わせる。服は汚れるが仕方あるまい。どうする?!

パンを取り出してヤバ女に見せつけた!


「どうする理由を説明して生殺しか?!」


「そんな性格の悪いことアンタしかしないだろ。」


レッチェは鈍感だからそう思うんだ。飯を持たないで外に出るやつがどこにいる!持ってないんです。なんてあからさまな嘘ででごまかされると内心寂しくなるんだよ・・・。


「世の中には選ぶだけで人を傷つける選択肢があるんだよ。行けるときに行くわとか言われたら一緒に遊んでくれるほど仲良くなかったんだな・・・ってショックを受けるだろ!」


「いやそれは実際に都合とか気分の問題だろ。」


「同じ言葉でもウチとレッチェにかけられるのは全然違うんだよ。適当にやってね!と適当でいいよ・・・。ぐらい違うんだよ!」


「相槌ぐらいめんどい奴来たな。」


「相槌って怖いんだよ。話を続けてほしいのか遮るのも面倒だから無視してるのか分からない奴も多いからどうしたらいいんだよ。」


「まぁ雰囲気だよね。」


「雰囲気ってなんだよ!顔にも出さないものは化粧にでもしないとわかんねぇよ!でも不機嫌な化粧なんてされたらウチは心臓が止まる。」


「それはもうお前を殺すって言ってるようなもんだよね。」


「たまにずっと怖い表情の人がいるけどあれ殺人罪適用すべきだよ・・・。」


「でもそういう人大体優しいから人を見た目で判断しちゃだめだよ。その人たちも傷ついてるんだから。」


「本当にやさしい人ならそんな表情でずっといないんだよ・・・。傷つくなら表情筋を鍛えろよ・・・。」


「スミちゃんは人に求めてばっかだね。」


レッチェうるさい。

お。なんかずっとごそごそやっていたケイが水筒を取り出した。右手にパン左手に水筒だ。まさかっ!

そのまさかだ!ケイの奴!貴重な水を!そこらへんで汲めない水を!パンに振りかけやがったんだ!

ウチははっと気が付く。そうだ目の前にいるヤバ女は乞食!病人のように顔色の悪い人間だ。そんな奴に固いパンを食べさせるなど言語道断!


「うちの想定していた良い奴ポイントをたやすく超えてくるだと!」


「ひねくれてるスミちゃんの期待してるいい奴ポイントなんて立ち上がるだけで天井にぶつかるでしょ。」


レッチェの毒づきは鬼畜ポイント100ポイントだよ。

べちゃべちゃのパンは正直うまそうじゃないが。そもそもうまいパンなんてそうそう買えない。ヤバ女がペコペコお辞儀して二人は別れた。

太陽を見て小走りになってるな。私との待ち合わせに間に合わせようとしてるのも好印象だ。


ケイ:(やばい人は時間時間にうるさいからなー。急いでいかないと)


「今のところ点数はどうなの~。」


レッチェがにやにやしてやがる。クソ納期のクソ注文するクズ・・・・・・よりは不快指数はマシなにやつき顔だ。


「及第点・・・。」


レッチェの顔は不服だが嘘はできない。職人たるもの評価に誠実にしなければならない。それがプライドというものだ。


「だが次だ!次!たまたまうまくいっただけかもしれん。一回の傑作は素人の仕事だ。職人は常に高い品質を維持できてこそだ。」


「あれはあんたの仕込みなの?」


レッチェうるさ・・・。

むむむ、好奇心旺盛な女の子にやたらと話しかけられているな。そもそも男って謎生物だしミーハーは入れ食い状態だろうな。


「ええい!まどろっこしい相手してないで早く第三関門へ着け!」


「ここで無視する人にスミちゃん話せるの?」


スミちゃんは無理だ!

・・・やっときたか。道の中央に馬車が置いてある。あれが第三関門だ。

いわゆる幌馬車といったものだ。分からない人に説明するとテントみたいなものをかぶってる馬車だ。一見ふっつうの馬車だ。でも誰でも知っている大事なものがない。


???:「うーん困ったなー。馬が逃げちゃったなー。一人じゃ何にもならないなー。弱ったなー。このままじゃ罰金でお葬式も上げられないなー。」


コードネーム栗少女が嘘っぽいでかい独り言を発しながらチラチラとケイを見る。栗少女が御者台の上でくるくると頭を振っているそしてケイをちらちら見る。気になってるな。いや演技へたくそか。目を合わせないぞ。


「栗少女め・・・大根だぞ・・・」


「えっマジで栗少女だったの!?」


栗女とか言ってなさっき。


「ふつうまるで知らないどころか見たこともない男に助けを求めるなんておかしいでしょ。」


レッチェうるさい。

ちっ!栗少女の奴そんなことも分からなんだか!だが織り込み済みだ。


助手:「またやらかしたのかいマロン!そこの人手伝ってくれよ!」


助手の助け来た!これにはケイも無視はできない。


栗少女:「駄目ですよ!だって・・・。神話生物ですよ。怖いですって!何してくるか・・・。」


おっ!これはまさかさっきチラチラ見ていたのは警戒して逆に助けてほしくないから!見ることで牽制してたのか。チラチラ見るのは伏線この言葉を際立たせるためか!

さぁどうする相手は拒否してるぞ!


「私の言ったことを覚えてるな。男とかいう意味不明なやつと仲良くする気なんてない。怖くて警戒心爆上げだ。それでも優しくしてくれるやつじゃないウチは話せる気がしない。」


「難儀すぎません?」


栗少女は恐怖を浮かべた瞳でケイを一瞥した後、何とかなりませんか?と助手に呟きます。


助手:「私にはどうにもできないよ・・・。」


助手が本当に困ってるように俯く。よしよしうまい具合に困って膠着しているな。


「ああっと!消えた!置き去りにして消えた!」


どこに行ったあいつ!ケイはどこだ!


「はっ!」


あいつ自警団を呼びやがった!


ケイ:「俺が村長に報告するのでそういう事で対処お願いできますか?」


やったな・・・。賓客待遇たる立場を活かして恐らく罰則の取り消しを村長に取り計らうつもりだ。それだけじゃあない自警団が助けるという体を取ることでケイが助けることにはならない。栗少女に対するケアも万全だ。


自警団:「どうしました。」


自警団の人が栗少女に尋ねる。


助手:「馬が逃げちゃったんです!」


自警団:「放馬した馬の確保を頼む。あとはこいつを道のど真ん中からどかすぞ。」


なんと!奴が御者台から見えない真後ろで馬車を押して力になっている。


「だがそこに罠が仕掛けてあるのだ!パンが馬車の幌の隙間から覗いているからな!普通の奴じゃないぞ。小麦ではなくライ麦で作っているのは予算を感じるが・・・今日焼いたばかりのふわふわのもの。レリアンですらこれを使うといった時、焦ってるような極上品だ。最前列だけにははちみつをかけたあまーい香りを漂わせているものが置いてある。奴も飯がくそまずいことは知っているはずだ。三か月保存前提で焼いたパンはとても食えるようなもんじゃない。むしろ腹を崩壊させるレベルだから食べない方がいい。」


「なんでそんな使わなそうな罠に金かけてんの?」


うっ保存パンのこと思い出して胃が!

・・・さぁ誘われろ。誘われてしまえ。昼ご飯を栃少女にあげてしまったんだ。これから六時間以上空腹でいいのか?しかも馬車を押す重労働をするんだぞ?。自らが押す方向からあまーい香りが揺らめく。だがいくら押しても近づいてこない。どうだ?うまそうだろ?ここからでも馬車の中に視線が固まっているのが分かるぞ。物欲しそうな表情だ。おっ!手が離れたぞ!どうするやってしまうのか!


ケイ:「はぁぁぁぁ!」


ケイが叫ぶ!

奴の手がぁ!背嚢にぶち込まれて袋を引っ張り出して頭にかぶる!窒息するからやめろぉ!それは責任取れないぃ!


「あいつ!この重労働をするのに気密性抜群の袋をかぶってでも誘惑を断ったのか!」


すごい!あいつは!


「で、なんで誘惑を試す必要があったの?」


「・・・特に理由はない。裏がある奴怖いぐらいだ。」


しかし恐ろしいまでの誠実さだ・・・!とちったときに裏で笑われる想像をしないで済みそうだ。


「あれやばくない?息もろくにできないって・・・。このまま倒れたらスミちゃんの責任だよ?」


レッチェの発言に背筋が凍り付く。そうだよな・・・このままケイが死んだらウチは重罪人・・・!


「レッチェ・・・。一応聞いてやるこのままケイが死んだらウチはどうなる・・・。」


レッチェは顎に手を当てて思案するとてもなやんでいるとは思えないカジュアルシンキング。


「そりゃシィクロウィーンの弾除けだよ。」


何かがひゅんとする・・・。


「やだやだやだやだ!死んじゃうよ~!」


あれだ!鏡を出せ!ウチは適当に置いてあった鏡を手に取って太陽を見る。

そして反射でここにうちらがいることを知らせようとする!


「栗少女はこっち見てるか!」


ウチはレッチェの肩を掴んで怒鳴る。そんな育児に協力しないからメスにシバかれたオス猫みたいな顔をするな!

面倒くさそうな発声で!見てるよ・・・という声を聞いた後、ウチは指差しでケイについて知らせる!見えろ!


「いや指さしても見えないでしょ。」


「よし確認しに行った!」


嘘でしょ・・・。そんな声が聞こえたが栗少女は馬車の後ろに回ってケイを止めた・・・。




30分後奴らは先のパンをほおばりながらみんなで談笑していた。ケイはすでに待ち合わせ時間に間に合わないからか逆にゆっくりしている。減点だけどもういいや・・・。


「とりあえず私が終わるのは逃れた・・・。ええい!私を驚かせたやっぱ減点だ!」


「畜生だってよく言われない?」


ふっ。と私は気を失う。


「起きて最後の関門のところにケイが来たよ。」


ウチはその声で目を覚ます。やばかったな・・・。死刑に緊張しすぎて気絶してしまった。


「最後の関門は場所しか知らないけどどんなことやるの?」


レッチェはめちゃくちゃあきれた目で見てくるが、なんだかんだ起こしてくれるのは優しい。

友達と戯れるにゃんこのように愛い奴だ。


「大したもんじゃアない。訓練したカラスに仕掛け人がカギを取られるからチェイスしてもらおうという程度だ。大丈夫直ぐに落とすように指示している。」


考えるのがめんどくなってひねりも無しだ。強いて言えばくたくただろうし精神的に揺さぶれるくらいだ。疲れたからと言ってぶっきらぼうに扱われると傷つくからな。


「?そうなんですか?」


なんでレッチェの奴そんなに怪訝そうなんだ?そろそろ仕掛けの時間か。さーて。あそこの見張り塔の上にカラスを操る人が・・・。


「あ”あ”ぁ”!」


カラスなんていねぇじゃあねぇか!そこにいるのはオオタカだよ!鷹匠の腕にオオタカが止まってんだよ!オオタカは鷹匠の使役する鷹でも鷹狩で大活躍する優れたハンターだ。


「なんで鷹なんだよ!?獰猛な爪で小動物を引き裂くパワーを持ってるんだよ?!なんで?カラスを手配したはずだよ?!」


「カラスの方は人が捕まらなかったそうです。片手間の大道芸ですから祭りでもない限り別の仕事してますよ。」


えっ!本当にあれがいくの?遠目でも鷹はでかいよ?レッチェの奴が目をキラキラさせてるよ?雪を見たわんこぐらい目がキラキラだよ?レッチェの奴は狩猟で肉調達してんだよ鷹匠と一緒の時もあるんだよ?狩りで優秀な鷹匠じゃないの!?


「だだだ大丈夫なんだよな・・・?襲ったりしないよな?」


だいじょうぶ・・・だいじょうぶ・・・。鷹が襲うのは小型動物だ。人間なんて襲うはずはない。


「あの子はなんでも襲うように教育されてる子だよ。」


「なんだってー!」


いやそんな気がしてたけど!そんなやつ連れてくるな!


「即刻中止を伝えろ!今すぐに!」


「歩いて行っても間に合いませんよ?」


くっそ!何試すような目で見てやがるレッチェの奴・・・。旗とか角笛と・・・。だめだそんな暗号決めてない・・・。そうだ!さっきの鏡!あれなら伝わるはず・・・。


「鷹匠はどっち見てる。」


「こっちとケイの方を交互に見てるよ。」


よし!ウチは鷹匠の方に鏡を向けて光を反射させる。


「気付け気付け!」


あっ鷹匠さんが気が付いた!


「で、どうやって伝えよう・・・。」


間違って伝わったらヤバイ。確実な方法は!


「あれがいいんじゃないですか。光らせる回数で短文を伝えるやつです。軍事訓練した人ならみんなわかるはず。」


いや、私は知らないが。何見てやがる!多分自意識過剰だけど年がら年中恥さらしてるからないつでも白い目で見られてる気がするんだよ!


「どうやるんだ?」


「右手を上に左手を横に伸ばす鏡を左手に持ってね。まず、行を指定する。」


[あかさたな]ってやつだよな。まずはそれかなかなか面倒そうな伝達方法そうだな。


「短い光を伝えたい行の数を点滅させる。それから一度長く光を当てる。次に列を指定する。」


[あいうえお]ってやつだな。


「列も行と同じように指定する。ここまで説明したらわかるでしょ。もうケイさんが来るよ。」


マジか!焦ってきたわ!リハ無しは通常の1.1倍緊張する。元の数値がでかすぎてそれだけでも超インフレしてる。


「急いで!ケイさんきちゃうよ!」


「せかすなよ!やるぞ・・・![いくな]だけで分かるだろ!伝われ!」


まず―!右手を上にひだり手を横に!よしこっち見てる!次に鏡だ。


「手が震えてきた・・・。大丈夫だ。落ち着くんだ・・・。[い]だな。」


一回短く点滅次に長く照らす。そして一、二。よし!次は[く]だ。一、二大丈夫落ち着け・・・。震えてきた。一!二!三!四!


「あ゛っ!!」


「えっ!どうしたの?」


レッチェの奴が私のつぶれるような悲鳴にぎょっと目をむく。やばい納品日を一日間違えた気分だ。


「[く]って打とうとしたら勢い余って一回多く点滅させちゃった・・・。」


うちの小さな声に一瞬フリーズしてレッチェが震える。


「[け]って打った・・・つまり[行け]って言っちゃった・・・。」


レッチェも顔が青くなる。


「訂正して!鏡を左手に持って両手を横にしたら最初からやり直せるから!」


「もうだめだ!さっき鷹匠が〇して、もうウチらの方を見てない!」


どうするウチ!鷹匠がケイを襲うだけならウチは知らなかったでレリアンと責任半分こだ!ワンチャン死刑以外もあったかもしれないかもしれない!でもゴーサイン出しちまった以上全部うちの責任だどうやっても言い逃れできない!


「うわー。もう死ぬんだ!仲間だった奴に家畜みたいに扱われて戦場でポイ捨てされるんだ!」


「ととととにかく行く末を見ましょう!ケイさんが無事ならそれだけ罪が軽くなる可能性があります!」


レッチェ・・・。お前たまに口調ぶれてるけどいい奴だよなぁ。

ウチは単眼鏡を覗き込む。

ここで本来の作戦をおさらいしよう。本来はカラスにコードネーム椎少女からカギを奪わせる。それを追ってもらおうという筋書きだ。コンセプトは・・・。疲れてるのに構ってくれるか・・・と。ウチがお祭り苦手で。でもカラスを操る芸を見たかった。・・・本当に見たかったな。


「キッキッキッキッキッキッ。」


オオタカが金切り声を上げて椎少女に飛び込む。いやあぶねぇだろ!なんで鷹匠も疑問の声上げなかったんだよ!


ケイ:「危ない。」


ケイがオオタカの強襲に気が付いて背嚢を投げ捨てて椎少女を押し倒してオオタカを躱す。だはオオタカは旋回して再びケイたちに襲い掛かる。

おいおい!ケイが腕を振り回して追い払おうとしてるのにそれでもカギを狙って突っ込む。やばいぞ!お互い譲らな過ぎて絶対怪我するって!


「やめてくれ!」


思わず声が漏れる。オオタカは振り回したケイの腕を爪で切り裂く。苦悶の表情を飛び散る鮮血が隠す。


「二人が逃げたよ!」


レッチェが叫ぶ。ケイと栃少女が立ち上がって裏路地に逃げ込む。ここからは見えないなどうなっている。




ケイ:「何か狙われるものは持ってないか!」


ケイが椎少女に話しかけると椎少女がカギをケイに差し出す。


栃少女:「これぐらいしか持ってないの。」


ケイ:「少し貸してくれ。」


そういうと二人は路地裏に隠れた。


ケイ:「なんであいつは追ってくるんだ。」


ケイは庇に遮られた空を見る。そこには猛禽類が旋回している・・・。


ケイ:「仮にカギを狙ってるってことは誰かが操っている可能性があるか。」


ケイ:(茅葺の一階建てばかりしかないこの村で俺たちを見れる高所と言えば火事とかを知らせる塔だけだ。)


ケイがなにかきょろきょろしていると思ったら椎少女をその場において走り出した。裏通りを走り回って今は見張り塔と隣接する家の隙間へ隠れてた。

素早く表通りに回り込んでみたが鍵が閉まってた。すぐに大鷲に襲われないように裏通りに戻る。


ケイ:「最上部まで登れそうな凹凸はあるが。あまりボルダリング向きとは言えないな。」




やっと見えた!

おい!あいつ腕から出血してるのによじ登るつもりかよ!落ちたら死ぬぞ!ああもう!ウチがやきもきしているうちに隣の家の1.5倍くらいの高さまで塔に上りやがった。これ以上の高さは落ちたらやばいって。ほら!下見ただろ?たけーだろ?腕から血が滴ってるだろ?


「いや登るんかい!」


「まずいよ・・・ほらあれ・・・。」


うちのツッコミにレッチェが汗を垂らして補足をいれる。

大鷲が気が付いてる。腕に力をいれて登んなきゃいけないのに力んだら出血が痛む。でも大鷲が接近しているのを見たケイは速度を上げて登る。やめろって!滴った血は掌にもついてるの!滑るの!


ケイ:(俺が右手でカギを取ったことを覚えてるな。執拗に狙ってくる。)


大鷲がケイを攻撃する!ケイは自分の背中で右手をかばうように登攀を続ける。まじかよスピード上げてやがる・・・。背中はとうに服が剝げてそれだけじゃなく皮膚が禿げ上がってる・・・。ケイの下には血が小雨かと思うほど滴っている。鷹匠が塔の淵の様子を見に来る。きれいな二度見だ。焦った鷹匠は指笛を吹いて突撃準備をさせて右手をかばいにくい状況で再び指笛を吹いてオオタカに攻撃させる。だが、音を情報を与えてしまった。ケイに攻撃タイミングを読ませてしまった。これまでのオオタカの突進の癖と突進開始の指笛の合図があればケイには十分だった!ケイは右上半身を外に投げ出すように右手の裏拳をオオタカの頭へ叩きつける。左手だけで体を支えて右半身の投げ出す遠心力から繰り出される裏拳はオオタカを撃墜した。あとは上を目指すだけ。ケイは見張り台までたどり着く。

鷹匠は驚き慄いてペタンと地面にしりもちをついている。対してケイは鍵を左手に持ち替え、真っ赤な血まみれ右手にはナイフをもって肩には叩き落したオオタカの羽根を乗せていた。どう見ても異常殺人鬼。


「許して・・・。スミちゃんに言われてやったの・・・。」


聞こえなかったけど鷹匠は多分うちのせいにした。だってこっち指さしてたし。




***近くの診療所***


「つまり、スミちゃんが俺を試すために鷹匠さんを雇ったのか。」


「はい。」


俺とオオタカが治療を受けながら話していた。俺の実力を確かめたかったのか?でもさすがにやり過ぎじゃないか。死ぬところだったぞ。

いや、しかしそこまでしないと会うに値しないってことか。本当に気難しい人なんだな。

ってなるか!ここまでやるのか!スミちゃんとかいう鍛冶屋!協力してたやつすら、怪我しかけたんだぞ。弱った虫をおもちゃと判断した猫より残虐だ。どれだけドクズ野郎なんだよ!


「俺はもう行くよ。こんなことスミちゃんをしばかないと。こんなので人が死んだらたまったもんじゃない。おれがどんな手段とっても止めて見せる。」


俺は背嚢を背負い。まだ痛む手に地図を握ってすでに暗くなり始めた空の下へ繰り出す。




***城壁の外***


城壁を越えてすぐ右に曲がり見えた小屋の前に立つ。鍛冶すれば火事になる。だから村の中ではなく外にある。俺はノックもせずにスミちゃんの小屋の中に乗り込んだ。


「オイ!ゴルルァッ!ふざけてんじゃねぇぞ!人の命掛かってんの知れねぇのか!火事場に籠ってる職人様はよぉ!」


ずけずけと土間に入り込む。突然の来訪にスミちゃんは驚きの表情を浮かべているが他人事のように見えてイラつく。


「あのオオタカをけしかけたのあんただよな?この手を見てみろ!包帯を剥いてやろうか!?ウイルスが入って青紫に変色してんだよ!ワクチン打ってるから俺は大丈夫だ!でもほかの人だったらどうなる?!それだけじゃないオオタカは普通に人を殺せるぞ?!まさか危険性を考えずにやったわけじゃないだろうな?」


「ごめ゛ん”ね゛!!!(死ぬこと以外)罰は受げるがら゛!ごめ゛ん゛ね゛!!!」


スミちゃんは俺に抱き着く。俺の胸に熱い涙がしみこむのを感じる。


「だったらやるな!」


「ぞう゛だよ゛!あんなはずじゃながっ゛だでも゛!まじがっででもあ゛あ゛じだウヂがわ゛る゛い゛!」


スミちゃんの泣き顔に気おされてしまった。泣く子には勝てないというけどコップを割った幼児を怒れないのとおなじ気持ちだった。

いや!こいつ!このまま俺の腹にナイフを突き立てるつもりか!されるか!


「騙されんぞ。下種野郎!」


「なんでぇ?!」


おれの膝蹴りにスミちゃんは力なく突き飛ばされる。ごろごろ転がるがその体から金属の音はしない。ナイフは持ってないのか・・・。


「酷いだろ!謝っただけだろ!」


・・・まさか本当なのか。鷹匠さんいわく行けって言ったのはこいつだこの態度を完全には信じられない。


「くぞがー!あの鷹匠に頼んだのはウチじゃないんだよ~!」


「はぁあんたが[行け]って言ったんだろ。」


スミちゃんはぶんぶん首を振る。首がちぎれそうな勢いだ。もちろんすぐぐったりする。三半規管はコーヒーカップ回ってるだけで酔うタイプか。


「それは打ち間違いなんだよ!」


俺は怪訝な表情を浮かべつつスミちゃんの釈明を聞く。


「つまり。レリアンがやらかしたのか。」


聞く限りではスミちゃんもやらかしているけどレリアンの責任も大きい。あの人村長の秘書みたいなことやってたけど大丈夫かな。


「でもケイを試すために各所に迷惑をかけたのはウチだ。いや後悔はしていない。ただこうなったことは反省はしている。」


スミちゃんは面倒な人間なのは分かるけど。邪悪な奴じゃないんだろう。恐らく。


「おれはもう許すよ。でも後でみんなに謝ろうな。」


「みんなにっ!!」とスミちゃんは顔を真っ青に染めて震えあがる。あんだけ迷惑をかけた後だからな。おれも警備でへまをやらかした時は気が重かったな。


「大丈夫だ。俺も一緒に謝りに行くから。一人でやらせないよ。」


スミちゃんがうなだれていた顔を上げてぱぁっと太陽が差し込む。


「ウチと一緒に謝ってくれるのか?!ありがとう!」


なんか妙に感極まっている。すごい感極まっている。眼がしらに涙がたまり目じりが赤くなってる。犬と飼い主の一生を愛情とともに追っていくドキュメントを見た時ぐらい感動してる。なんで?怖い!


「もう時間がないからほら!ほっ本題に入っていいか?剣を作ってくれるんだよな?!」


スミちゃんが食い気味に。


「もちろんだ!いい奴をこしらえてやるぞ!」


めっちゃ張り切ってる。なんもいってないけど・・・。紗陽が戻る前までのつなぎなんだけど・・・。


「命を守るのが私の仕事だ。ウチは自分の作るものに誇りも持たない。そもそも好きで始めた仕事じゃない。でも帰ってきた刀の数が減ってるのはへこむ。」


刀の数か・・・。鍛冶屋らしい目線だ。そうまで言われたら繋ぎなんて言えない。メインにはできないけどできるだけ活躍の場を作ってやりたい。と思ってしまう。


「まずは訓練用の木刀だな!」


そう言うとスミちゃんは隅っこの方に置いてある木刀とおもりを持ってくる。


「これが訓練用の木刀?」


「そうだ正確にはお前用の剣を作る測定用の剣だ。お前が訓練で使ってしっくりした剣を作る。だから剣作りはお前の訓練から始まる。もっもちろんやってくれるよな・・・。」


「いや時間無いから俺がもともと使ってた紗陽に合わせるよ。」


おれとスミちゃんは二人で紗陽刀を模した剣を目指して試行錯誤した。紗陽刀は人間工学に基づいた重量配分だそうでどうもこの世界では再現するのが難しいそうでスミちゃんはウンウン悩む。


「片刃剣か作ったことないな。それにこんな重量バランスになるになるのか?材質を変えるか?いや強度が未知になるだが絶対に作ってやるよ!その剣はあんたの世界で最高の剣なんだろ!だったらそれを作れればうちの実力は折り紙付きだ。」


スミちゃんは輝く目で羊皮紙に理想を描く。


「できた!」


スミちゃんが笑顔で図面を見せてくる。


「精錬の回数を変えた鉄を数種類組み合わせて配置だったり分量だったりを変えれば多分ケイの理想の剣は作れる!待っててくれよ!あとはウチがやるから!」


あとはスミちゃん一人の時間だ。俺は太陽が完全に沈む前に帰途に就いた。




***村長宅***


「何やってんの?」


俺が扉を開けて発した言葉はただいまじゃなかった。

なんだってレリアンが宙に縛られているからだった。いやどうしてこうなるかは分かる。スミちゃんのお願いと言えど、捻じ曲げて俺たちを危険にさらしたからな。


「これに免じて許してやってくれ。」


村長は眠そうに呟く。


「すまなかった!」


レリアンが宙ぶらりんで笑顔で俺に謝る。


「じゃそういう事で・・・。こいつのせいで早くから起こされて眠いもう外すぞ。」


村長は言いたいことだけ言い捨てると早々に奥に下がっていく。


「ではケイさん。水浴びに案内します。」


グリスがタオルをもって掌で奥を指し示してくれる。


「レリアンってなんで、あんなんでも村長の秘書やれてんだ?」


「直球・・・。」


グリスはそう言いこそするけど否定はしない。


「あんなんだからだよ。百数十年同じ仕事してると惰性になっていくからね。新しいアイディアなんて生まれなくなっていくの。だから破天荒なマンネリなんて関係ない人が必要だったの。レリアンを見てると職場が常に新鮮だから。」


気持ちは分からなくない。変化がないとそれが不条理であっても普通に見えてくるそうだ。


「・・・ろくでもないことであっても。予算を食われることでも・・・。徹夜確定でも。」


「oh・・・」


徹夜確定はつらい・・・。ていうかそこまで来たら文句の方が勝りそうだけど。


「早朝に城壁で角笛で村中に響くほどの大演奏会してた時は変な笑いが出た。一時間で準備したらしいよ。」


「手際よすぎだろ・・・。」


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