令嬢レベル3-69
「少し無理をさせたね。髪が乱れてしまった」
中央からアレン様のエスコートで端に向かって歩いていると、化粧直し…と言うよりは少し火照った熱を収めるための休憩を促される。確かに少しばかり足が疲れたので、この後きちんと社交をするためにも休憩を取ろうと思ってーーーーぐいっと押しのけられた。
「……?」
「王子様!次は私と踊ってください!」
はい?私、今誰かに押されてーーー
ぐらっと体が傾く。アレン様は見知らぬ令嬢の向こうで懸命にこちらに手を伸ばすけれど、その手は令嬢に阻まれて届かない。
そんな慌てた表情、初めて見ましたわ。
「カレディ!!」
「カレディ!!」
アレン様とお兄様の呼ぶ声を聞きながらドサッと床に倒れ込んだ。
ーーーーービキッ
咄嗟に手を伸ばして受身はとったけれど……その際手首を捻ったのか、ものすごく手首が痛い。
だけどそれよりも、だ。
この場を何とかしなくてはならない。
パーティのど真ん中で主催の娘が押し倒されるなど、あの少女はもう庇える余地が無い。そして少女だけでなく私も無様な姿を完全に晒してしまった。
「あっ…」
「退け!大丈夫かいカレディ」
「連れて行け!大丈夫かいカレディ」
少女はすぐに警備兵に捕まりオロオロする中連行されて行った。
アレン様もジャンお兄様もすぐにそばに膝をついて助けてくれる。利き手は痛いから反対の手で差し出されたアレン様の手を取って立ち上がる。
アレン様はすっと目を細めると、ひょいっと私を姫抱きしてきた!
ま、待ってくださいまし!ドレスも重いですし私も重いですのよ!?
「皆、騒がせてしまってすまないね。少し抜けるがパーティを楽しんでくれ」
「…頼む。妹は大丈夫だから、音楽を再開しておくれ!騒がせて済まないね」
暴れたら不安定になり余計危ないだろうから、重さが気になるけれど大人しく連行される。
ジャンお兄様が一瞬悔しげな顔を見せたけれど…主催二人と抜けるなんて有り得ない。お兄様はその場に残ってパーティの再開を始めた。
そんな声を聞きながら、私は休憩所へと連れていかれた。
「重いですわよ、今更ですけど」
「はいはい。で、どこを痛めた?」
「…大丈夫で「あの者はもう庇うな。これだけの人前でやらかしたのだから処罰は免れられぬ。カレディに何かあって、それが分からないとなれば私たちは今後ずっと気に病むことになるぞ」」
未使用の休憩所のソファに下ろされながら抵抗を試みるも、心底心配している真摯な目で見つめられて諦めて嘆息をつく。
「右手首を。田舎でまだマナーも未熟な少女でしょうから情状酌量を求めますわ」
「私が何もせずともディティリスの男どもが黙ってないだろう。最早あの少女はカレディが自分の手で罰する範囲外だ。ララ、手当てを」
私の手首を触って様子を確かめるアレン様が呼ぶとすぐに…ララとドロシーが入ってきた。どうやらドロシーも心配して駆けつけてくれたようだ。
「待て、お前の入室は許可してないぞ」
だが、ドロシーが入室する前にアレン様はそんなことを言った。ドロシーは驚くも、扉の出入口のところで既で止まった。




