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第99話 思い出せない記憶

―王都・上層区・エリナの部屋―


 朝。


 光が差し込む。


 静かな部屋。


 整っている。


 完璧に。


―エリナ―


「……」


 椅子に座っている。


 動かない。


 ただ。


 考えている。


―違和感―


「……何かが」


 小さく呟く。


 同じ言葉。


 何度も。


―本質―


 分かっている。


 “欠けている”。


 だが。


 それが何か。


 分からない。


―記憶の底―


 暗い場所。


 冷たい空気。


 声。


 誰かが。


 何かを言っている。


―エリナ―


「……誰……?」


 初めて。


 言葉にする。


―断片―


 黒い髪。


 静かな目。


 何も言わない。


 ただ見ている。


―反応―


「……」


 胸がわずかに動く。


 違和感ではない。


 もっと別の何か。


―理解未満―


 知っている。


 はずなのに。


 名前が出ない。


 意味が繋がらない。


―拒絶―


「……違う」


 すぐに否定する。


 思考を止める。


―理由―


 考えると。


 “崩れる気がする”。


―回避―


 立ち上がる。


 窓の方へ向かう。


 外を見る。


―現実逃避―


 王都。


 人の流れ。


 いつも通り。


 変わらない。


―エリナ―


「……関係ない」


 言い切る。


 それで終わらせる。


―侍女(入室)―


「……失礼いたします」


 扉が開く。


 いつも通り。


―侍女―


「……本日のご予定ですが――」


―エリナ―


「……いい」


 即答。


 考える時間もない。


―侍女―


「……ですが……」


 言葉を続けようとする。


―エリナ―


「……必要ない」


 冷たく言う。


 感情がない。


―沈黙―


 侍女は何も言えない。


 それ以上。


 踏み込めない。


―退出―


「……失礼いたしました」


 扉が閉まる。


―再び一人―


 静かになる。


 だが。


―違和感の残留―


「……」


 さっきの記憶。


 完全には消えない。


 薄く。


 残っている。


―締め―


 思い出せない。


 だが。


 消えてもいない。


 その曖昧さが。


 少しずつ。


 心を削っていく。



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