第96話 次の標的
―王都外縁・荒野―
風が戻る。
砂が流れる。
何もない空間。
さっきまで。
確かに戦いがあった場所。
―リリア―
「……あの人……」
カインの方を見る。
動かない。
静かに横たわっている。
―ゼル―
「……終わった」
それだけ言う。
確認でもなく。
報告でもない。
ただの事実。
―リリア―
「……はい……」
小さく頷く。
まだ実感がない。
だが。
終わったのは分かる。
―沈黙―
数秒。
風の音だけが響く。
戦いの余韻。
だが。
ゼルは見ていない。
過去も。
今も。
振り返らない。
―ゼル―
「……次だ」
小さく言う。
―リリア―
「……次……」
その言葉に。
息が止まる。
分かっている。
これは終わりじゃない。
―意味―
一人終わった。
それだけ。
まだ。
終わっていない。
―回想の断片―
裏切り。
地下施設。
十年。
そして。
妹。
ルナ。
―ゼル―
「……あと三人」
静かに呟く。
感情はない。
ただ。
順番を確認するように。
―リリア―
「……」
言葉が出ない。
その声の中に。
何もないから。
怒りも。
悲しみも。
もう。
残っていない。
―本質―
復讐は。
感情ではない。
作業だ。
順序だ。
終わらせるための。
―ゼル―
「……エリナ」
名前を口にする。
次の標的。
―空気の変化―
ほんのわずか。
だが。
初めて。
“違い”が出る。
―リリア―
「……その人が……」
恐る恐る聞く。
―ゼル―
「……関わっている」
短く答える。
それ以上は言わない。
だが。
それで十分だった。
―締め―
一人終わった。
だが。
復讐は終わらない。
残っている限り。
順番に。
確実に。
終わらせるだけだった。




