第73話 理解できない恐怖
―王都・中央通り―
静まり返る。
誰も動かない。
ただ一人。
地面に膝をついた貴族Bだけが。
震えている。
―貴族B―
「……やめてくれ……」
「勝手に……体が……」
涙を流す。
止められない。
理解できない。
―残された者たち―
「……何をした」
貴族Aの声が震える。
怒りではない。
恐怖だ。
―ゼル―
「……何もしていない」
淡々と答える。
「条件が揃っただけだ」
―意味不明―
「……条件……?」
理解できない。
だから。
怖い。
―崩れ始める理性―
「……ふざけるな……!」
貴族Cが叫ぶ。
恐怖を振り払うように。
「こんなものがあるか!」
「ただの幻だ!」
現実を否定する。
―誤った選択―
前に出る。
無理やり。
ゼルに向かって。
―ゼル―
「……やめておけ」
静かな声。
「次は軽く済まない」
―無視―
「黙れ!」
拳を振り上げる。
その瞬間。
―発動―
「……従え」
短く。
それだけ。
―結果―
貴族Cの動きが止まる。
完全に。
次の瞬間。
そのまま。
地面に頭を叩きつける。
―強制行動―
「……やめろ……!」
「やめろぉぉぉ!!」
叫ぶ。
だが。
止まらない。
何度も。
何度も。
頭を打ちつける。
―崩壊―
血が滲む。
意識が揺れる。
それでも止まらない。
―周囲―
「……な……」
「……なんだ……これ……」
残った貴族たちが後退る。
完全に理解が追いつかない。
―ゼル―
「……理解できないか」
淡々と呟く。
「なら」
「理解しなくていい」
―宣告―
「結果だけ受け入れろ」
―絶望―
その一言で。
すべてが終わる。
抵抗の意味がないと。
本能が理解する。
―締め―
力が分からない。
仕組みも分からない。
対抗もできない。
その時。
人は。
ただ壊れる。




