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第72話 触れてはいけない存在

―王都・中央通り―


 空気が重い。


 人の流れが止まる。


 誰も近づかない。


 ゼルと貴族たちの周囲だけ。


 不自然に空いている。


―貴族A―


「……何だ、その目は」


 苛立ちを隠さない。


 だが。


 足が動かない。


 無意識に。


―ゼル―


「……何もしていない」


 淡々と返す。


「ただ立っているだけだ」


―圧―


 それだけで十分だった。


 呼吸が浅くなる。


 心拍が速くなる。


 理由は分からない。


 だが。


 “怖い”。


―貴族B―


「……ふざけるな!」


 叫ぶ。


 恐怖を打ち消すように。


「たかが落ちぶれた男が……!」


 前に出る。


 無理やり。


―接触―


 手を伸ばす。


 ゼルの肩へ。


 その瞬間。


―止まる―


 動かない。


 触れる直前で。


 完全に。


―異変―


「……あ……?」


 手が震える。


 動かせない。


 まるで。


 “拒絶されている”。


―ゼル―


「……やめておけ」


 静かな声。


「これ以上は壊れる」


―理解不能―


「……何を……」


 言葉が続かない。


 体が言うことを聞かない。


―発動―


「……従え」


 小さく。


 それだけ。


―結果―


 貴族Bの体が崩れる。


 膝をつく。


 そのまま。


 頭を下げる。


―強制―


「……は……?」


 本人が一番驚いている。


 だが。


 止められない。


―絶対命令―


「……謝れ」


 ゼルが言う。


 それだけ。


―強制実行―


「……も、申し訳……ありません……!」


 声が震える。


 涙が流れる。


 意思とは関係なく。


―崩壊―


「……な、なんで……!」


「やめろ……!」


 止めようとする。


 だが。


 止まらない。


―周囲―


 他の貴族たちが固まる。


 理解できない。


 ただ。


 恐怖だけがある。


―ゼル―


「……触れるな」


 静かに言う。


「壊れる」


 事実として。


―締め―


 力を見せたわけじゃない。


 戦ったわけでもない。


 ただ。


 “少し触れただけ”。


 それだけで。


 戻れなくなる。



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