第46話 力の怪物
―王都外縁・荒野―
風が吹く。
何もない地平。
だが。
「……止まれ」
ゼルが言う。
足が止まる。
「……?」
リリアが首を傾げる。
「……何かいますか?」
「いる」
短い返答。
「……強い」
その一言。
―気配―
重い。
圧力。
空気が沈む。
「……これ……」
リリアの声が震える。
「魔術じゃない……」
違う。
これは。
「……“力”だけだ」
―登場―
地平の先。
一人の男が歩いてくる。
ゆっくりと。
迷いなく。
足音が響く。
それだけで。
地面が震える。
―カイン―
「……見つけた」
低い声。
視線がゼルに向く。
「お前か」
「ゼル・アークレイド」
名前を知っている。
―対峙―
「……そうだ」
ゼルが答える。
「お前は」
「……カイン」
短い確認。
―異質―
何もしていない。
魔法も使っていない。
なのに。
圧倒的。
「……」
ゼルの足が止まる。
一瞬だけ。
―初反応―
「……やばい」
リリアが呟く。
「……これは……」
「勝てないかもしれない」
―カイン―
「……来い」
ただ一言。
構えもしない。
武器も持たない。
それでも。
絶対的な圧。
―ゼル―
「……」
見ている。
分析ではない。
“本能”。
―衝突―
次の瞬間。
カインが踏み込む。
――速い
「……っ」
ゼルが反応する。
だが。
間に合わない。
―一撃―
拳。
ただそれだけ。
だが。
空気が裂ける。
衝撃が爆ぜる。
ゼルの体が吹き飛ぶ。
―衝撃―
「……!?」
リリアの声。
信じられない。
今まで。
ゼルが押されたことはない。
―静止―
土煙。
沈黙。
「……」
カインが立っている。
動かない。
ただ。
待っている。
―ゼル―
ゆっくりと立ち上がる。
「……なるほど」
低く呟く。
「これか」
―締め―
理論では測れない。
計算も意味を持たない。
ただの“力”。
それだけで。
すべてをねじ伏せる存在。
それが。
カインだった。




