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第45話 残されたもの

―王都外れ・静かな路地―


 人通りの少ない場所。


 石畳の上。


 リシェルが立っている。


 何も持たず。


 何もすることもなく。


「……」


 ただ、立っている。


―思考―


「……自分は」


「何だった」


 小さく呟く。


 答えは分かっている。


「……天才」


 そう呼ばれていた。


 そう扱われていた。


 だが。


「……それだけだ」


 その一言で終わる。


―過去―


 思い出す。


 研究室。


 魔法陣。


 理論。


 積み上げてきたもの。


「……すべて」


「失った」


 否定はしない。


 できない。


―空白の確認―


「……残っているものは」


 考える。


 静かに。


 ゆっくりと。


 そして。


「……自分だけか」


 結論。


―理解―


 地位はない。


 評価もない。


 研究もできない。


 だが。


 “自分”は残っている。


―選択―


「……なら」


 わずかに目が上がる。


「もう一度、組み直す」


 静かな決意。


 叫ばない。


 誇らない。


 ただ。


 事実として受け入れる。


―変化―


 歩き出す。


 ゆっくりと。


 どこへ向かうかも決めずに。


 だが。


 止まらない。


―ゼル―


「……」


 その姿を見ている。


 少しの間。


 何も言わず。


「……そうか」


 小さく呟く。


 それだけ。


―締め―


 すべてを失った天才は。


 初めて。


 “何も持たない自分”になる。


 そして。


 そこから。


 何を作るかは。


 もう誰にも奪えない。



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