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第44話 消える価値

―王都・魔導区画外縁―


 人の流れ。


 いつもと同じ王都。


 だが。


「……」


 リシェルの周りだけ。


 空いている。


―距離―


 人が避ける。


 目を合わせない。


 関わらない。


「……」


 理由は分かっている。


 全員。


―囁き―


「……あれが」


「例の……」


「暴走させたっていう」


 小さな声。


 だが届く。


「……危ないんじゃないか?」


「関わらない方がいい」


 評価は完全に変わった。


―リシェル―


「……そうか」


 小さく呟く。


 感情は薄い。


 だが。


 理解している。


―日常の喪失―


 研究室へ向かう。


 扉の前で止まる。


「……立ち入り禁止」


 封鎖されている。


 当然だ。


 自分で理解している。


 それでも。


 手が止まる。


―過去との断絶―


「……ここで」


「全部やっていた」


 思い出す。


 理論。


 研究。


 成果。


 すべて。


「……もう」


「関係ない」


 静かに離れる。


―価値の消失―


「……自分は」


「何ができる」


 考える。


 だが。


 出てこない。


―空白―


 魔術は使える。


 知識もある。


 だが。


「……使う場所がない」


 それがすべてだった。


―現実―


「……必要とされていない」


 その一言。


 重く落ちる。


―ゼル―


「……」


 遠くから見ている。


 何も言わない。


 ただ。


 確認している。


―締め―


 天才は価値があるから存在する。


 だが。


 その価値が消えた時。


 残るのは。


 “何も持たない人間”だけだった。



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