第43話 奪われる全て
―崩壊後の魔導区画―
静まり返る空間。
さっきまでの暴走が嘘のように。
すべてが止まっている。
「……」
リシェルは立っている。
何もせず。
ただ前を見ている。
―周囲の目―
「……あれが」
「王国最高の魔導士……?」
囁きが広がる。
「……暴走させたのか?」
「自分で?」
「……ありえない」
評価が変わる。
静かに。
確実に。
―現実―
「……制御不能」
「魔術崩壊」
「被害拡大」
報告が上がる。
「……すべて」
「リシェルの判断ミス」
断定される。
―リシェル―
「……そうか」
否定しない。
もう。
意味がないと分かっている。
―剥奪の始まり―
「……本日付で」
役人が前に出る。
「リシェル・アルトレインの」
「魔導顧問としての地位を剥奪する」
静かな宣告。
「……」
反応はない。
―連鎖―
「研究権限、全停止」
「魔導施設への立ち入り禁止」
「関連資産の凍結」
一つずつ。
すべてが奪われる。
―周囲の反応―
「……終わったな」
「完全に」
「……あれだけの天才が」
誰も近づかない。
誰も声をかけない。
ただ。
距離を取る。
―リシェルの内心―
「……当然だ」
小さく呟く。
「結果がすべて」
「失敗した者に価値はない」
それは。
自分が言ってきた言葉。
―返ってくる現実―
「……これが」
「自分か」
静かな認識。
否定はしない。
―ゼル―
「……」
少し離れた場所で見ている。
何も言わない。
ただ見ている。
―締め―
力を失い。
地位を失い。
評価を失う。
天才は。
“ただの人間”になる。




