第42話 折れた理性
―崩壊する監視塔内部―
轟音。
崩れ落ちる魔法陣。
歪む空間。
制御は完全に失われている。
「……あ……」
リシェルが立っている。
動かない。
いや。
動けない。
―現実の認識―
「……止められない」
小さく呟く。
「……全部」
「……崩れている」
視線が揺れる。
だが。
もう否定しない。
―理解―
「……理論は……正しかった」
かすれた声。
「……間違っていない」
自分に言い聞かせる。
最後まで。
―結論―
「……だが」
沈黙。
「……通じなかった」
その一言。
すべてを受け入れる。
―敗北の認識―
「……理解した」
「お前は」
ゼルを見る。
「理論の外にいる」
「……だから」
「勝てない」
完全な敗北。
―ゼル―
「……そうか」
短い返答。
それ以上は何も言わない。
―最後の抵抗なし―
「……もういい」
リシェルが言う。
「これ以上は無意味だ」
手を下ろす。
魔法陣を解く。
完全に。
―空白―
何もない。
防御も。
攻撃も。
理論も。
すべて手放した。
―静寂―
「……一つだけ聞く」
リシェルが言う。
「なぜ」
「壊せた」
純粋な疑問。
―答え―
「簡単だ」
ゼルが言う。
「壊せるから壊した」
それだけ。
―終わり―
「……そうか」
リシェルが目を閉じる。
「理解できない」
「だが」
「それが答えだ」
―締め―
天才は最後まで理論を信じた。
だが。
その理論では届かない場所がある。
そこに触れた瞬間。
すべては終わる。




