第41話 制御不能
―魔導区画・上層監視塔―
「……まだだ」
リシェルが呟く。
「理論は正しい」
「なら……修正できる」
震える手で魔法陣を組み直す。
だが。
―歪み―
魔法陣が不安定に揺れる。
「……なぜだ」
「なぜ安定しない」
計算は合っている。
だが現実が従わない。
―無理な制御―
「……出力、さらに上昇」
「限界突破」
安全域を完全に無視。
「止めてください!」
補助術者が叫ぶ。
「このままでは暴走します!」
「問題ない」
即答。
「制御できる」
その一言が。
一番危険だった。
―暴走開始―
――軋む
魔法陣がひび割れる。
光が乱れる。
「……っ」
「……制御が……」
数値が跳ねる。
出力が不安定になる。
―崩壊連鎖―
一つの魔法陣が崩れる。
その影響が広がる。
二つ。
三つ。
すべてが連鎖する。
「……止まれ」
「……止まれ……!」
リシェルが叫ぶ。
だが。
止まらない。
―現実の崩壊―
塔が揺れる。
床がひび割れる。
空間が歪む。
「……っ……!」
魔力が溢れる。
制御不能。
―ゼル―
「……限界だな」
静かな声。
リシェルが顔を上げる。
「……まだだ」
「まだ制御できる……!」
だが。
目が焦点を失っている。
―完全崩壊―
魔法陣が暴発する。
光が暴れる。
衝撃が広がる。
「……あ……」
リシェルの手が止まる。
「……崩れる……」
初めて。
理解する。
―無力―
何もできない。
止められない。
ただ。
崩れていくのを見るだけ。
―締め―
天才はすべてを制御する。
だが。
制御できないものに触れた瞬間。
その力は。
世界ごと壊す。




