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第40話 理論の否定

―魔導区画・上層監視塔―


「……修正」


 リシェルが呟く。


 だが。


 手が止まる。


「……違う」


「どこを直せばいい?」


 初めての迷い。


―崩壊の自覚―


「……計算は正しい」


「式も間違っていない」


「構造も問題ない」


 確認する。


 一つずつ。


 何度も。


「……なら」


 沈黙。


「……なぜ崩れる」


―思考停止寸前―


 答えが出ない。


 初めて。


 完全に。


―核心へ―


「……もしかして」


 小さく呟く。


「……間違っているのは」


 喉が詰まる。


「……理論……?」


 空気が止まる。


―否定―


「……違う」


 即座に否定する。


「そんなはずはない」


「この理論は完成している」


「証明もされている」


「実績もある」


 必死に積み上げる。


 自分を。


―崩し―


「……じゃあなぜ外れる」


 ゼルの一言。


 それだけで。


 全部が止まる。


―沈黙―


「……」


 答えられない。


 何も。


―自己否定開始―


「……いや」


「理論は正しい」


「なら」


「使い手の問題か?」


 その瞬間。


 思考が凍る。


―最悪の答え―


「……自分が」


「間違っている……?」


 言葉にしてしまう。


―崩壊加速―


「……そんなはずはない」


「俺は間違えない」


「……俺は……」


 言葉が弱い。


「……間違えない……はずだ」


 “はず”がつく。


―完全否定寸前―


「……違う」


「違う違う違う」


「俺は正しい」


「理論も正しい」


「全部正しい」


 繰り返す。


 だが。


 もう。


 信じられていない。


―ゼル―


「……終わりだな」


 静かな声。


 リシェルが顔を上げる。


「……まだだ」


「まだ終わっていない」


 必死に言う。


 だが。


 その声には。


 もう。


 確信がない。


―締め―


 天才は、自分を疑わない。


 だが。


 一度でも疑った瞬間。


 その力は。


 すべてを崩す。



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