第442話「永遠の贖罪」
さらに長い歳月が流れた。
王国の名は歴史書の中だけに残り、王族を知る者も、ゼルの顔を語れる者も、世界から姿を消していた。
だが、一つだけ消えなかったものがある。
贖罪塔。
風雨に耐え、補修を繰り返しながら、黒い塔は静かに立ち続けていた。
塔の周囲には子どもたちが植えた木々が大きく育り、小鳥が枝でさえずり、人々は穏やかな日常を送っている。
誰も塔へ近づこうとはしない。
近づく理由がないからだ。
過去は記録として残され、未来を生きる人々は、その記録を学ぶだけで十分だった。
しかし塔の内部だけは違う。
時間は止まっていた。
ガルド。
リシェル。
エリナ。
カイン。
ヴァルディス。
五人は今もなお、自らが与えた苦痛を終わることなく受け続けている。
助けを求める声。
許しを乞う声。
怒りに満ちた叫び。
そのどれもが厚い石壁へ跳ね返り、再び自らへ戻っていく。
終わりはない。
死による救済もない。
それが、この塔に刻まれた唯一の判決だった。
夕暮れ。
黒い塔へ西日が差し込む。
王もいない。
王国もない。
それでも、人々が穏やかに暮らせる世界が続いている。
その静かな日常を遠くから見守るように、贖罪塔だけは今日も変わらず立ち続け、五人の泣き声を永遠という時間の中へ閉じ込め続けていた。
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