表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏切られた俺だけが覚醒した 《契約支配(ドミネーション・コントラクト)》 ――奪われたすべてを、奪い返す 〜今さら謝ってももう遅い〜  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
434/444

第434話「五つ目の鎖」

 王城北端。


 黒い石だけで築かれた高い塔が、朝霧の向こうに静かにそびえ立っていた。


 飾りはない。


 紋章もない。


 ただ一枚の鉄扉だけが、この塔が誰のために存在するのかを無言で物語っている。


 人々はいつしか、この場所を「贖罪塔」と呼ぶようになっていた。


 ゼルはヴァルディスを伴い、その前で足を止める。


 鉄扉が低い音を立てて開く。


 その瞬間、内部から四つの泣き声が流れ出た。


 ガルド。


 リシェル。


 エリナ。


 カイン。


 彼らは死してなお終わることを許されず、自ら他者へ与えた恐怖と苦痛を、自身の魂で永遠に受け続けていた。


 肉体は朽ちない。


 意識は眠らない。


 時間だけが終わりなく積み重なる。


 ヴァルディスの足が止まる。


 その顔から血の気が引いた。


「違う……私は……国家のために……」


 言葉は続かなかった。


 ゼルは何も答えない。


 静かに背へ手を添え、一歩だけ前へ押した。


 ヴァルディスの身体が塔の中へ消える。


 重い鉄扉が閉じられる。


 その瞬間。


 四つだった泣き声へ、新たな一つが重なった。


 五つ。


 贖罪塔は、その瞬間に完成した。


 誰へ見せるための刑でもない。


 誰かを恐れさせるための見せしめでもない。


 これは、自ら裏切りを選び、多くの命を踏みにじった五人だけが受け続ける、終わりのない判決だった。


 ゼルは塔へ背を向ける。


 二度と振り返らない。


 復讐は終わった。


 ここから始まるのは、罪を忘れず、それでも生きる者たちの国を築くための長い時間だった。


 朝日が黒い塔を静かに照らしている。


 その石壁の奥では、五つの泣き声だけが、誰にも届くことなく永遠に響き続けていた。


(次話へ)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ