第423話「帳面の余白」
中央行政区の一角にある、古い税務管理所の公文書保管庫。オーリアスは、誰もいない広い部屋の片隅で、自分の使い古された作業机の前に静かに座っていた。手元には、公式記録を完全に塗り潰すための濃厚な黒インクと、毛先の潰れた筆が、いつも通り整然と並べられている。
しかし、彼が今日開くべき台帳は、棚のどこを探しても一冊も残されていなかった。昨日までに、ヴァルディスから直接命じられていた「ガルド」に関するすべての戦功および過去の経歴の抹消作業は、一枚の例外もなく綺麗に処理し終えていたからだ。これ以上、この城の歴史から消し去るべき名前は存在しなかった。
オーリアスは自分の両手を目の前にかざし、じっと見つめた。爪の隙間や皮膚の皺には、何度洗っても落とすことのできない頑固な墨の汚れが、まるで消えない呪いのように深く染み付いている。行うべき任務は何もないが、勤務の終了を告げて退出の許可を出すべき上官も、すでに数日前から姿を見せていない。
彼はただ、静まり返った部屋の中で、引き出しの奥の虚無を見つめながら、時間が過ぎるのをただじっと待ち続けていた。彼が消し去った歴史の重みだけが、誰もいない部屋の冷たい空気を完全に支配していた。オーリアスはゆっくりと立ち上がり、城の出口へと続く冷たい石の階段を、音もなく静かに下りていった。




