第416話「東棟の給湯室」
城の東棟の奥にある、官僚たちのための給湯室。かつては長い会議の合間に、高官たちが集まって地方の情勢や予算の分配について、低い声で言葉を交わしていた空間だった。机の上には、高価な磁器のカップがいくつか並べられたままになっているが、そのどれもが冷え切り、底には干からびた茶の残滓が黒くこびりついていた。
一人の若い使用人が、部屋の隅で古い薪を静かに数えていた。棚の中の備蓄は残り少なく、次の配給がいつになるかの目処は立っていない。使用人は、薪を暖炉にくべるのを止めた。部屋を温めたところで、ここに集まるべき官僚たちはもう誰も登城してこない。
カインたちが失脚し、ガルドの名前が歴史から消し去られたあの日から、この城の中にあるすべての部屋が、順番に死に部屋へと変わっていった。使用人は空の籠を抱え、何もせずに部屋を出た。
彼の足音だけが、誰もいない東棟の長い廊下へ虚しく響き渡る。灯りの消えた給湯室の窓からは、どんよりとした曇り空が覗いていた。城の内部を支えていた微かな温もりは、誰の命令を待つまでもなく、完全に冷め切っていた。
極限の環境が彼らの思考を鋭く研ぎ澄まし、ただ生き残るための方程式だけを脳裏に描き出させていた。目の前にある巨大な敵の気配すら、彼らにとっては排除すべき対象に過ぎない。




