第413話「黒い指先」
城の中枢部に隣接する、古い公文書の保管庫。オーリアスは、誰もいない広い部屋の片隅で、自分の使い古された作業机の前に座っていた。手元には、公式記録を完全に塗り潰すための濃厚な黒インクと、毛先の潰れた筆がいつも通り整然と並べられている。
しかし、彼が今日開くべき帳面は、棚のどこを探しても残されていなかった。昨日までに、上層部から厳命されていた「ガルド」に関するすべての戦功および名誉の剥奪作業は、一枚の例外もなく綺麗に処理し終えていたからだ。これ以上、この城の歴史から消し去るべき名前は存在しない。
オーリアスは自分の両手を目の前にかざし、じっと見つめた。爪の隙間や皮膚の皺には、何度洗っても落とすことのできない頑固な墨の汚れが、まるで消えない呪いのように深く染み付いている。
行うべき任務は何もないが、勤務の終了を告げて退出の許可を出すべき上官も、すでに数日前から姿を見せていない。彼はただ、静まり返った部屋の中で、引き出しの奥の虚無を見つめながら、時間が過ぎるのをただじっと待ち続けていた。
暗闇はどこまでも貪欲に彼らの光を吸い込み、一歩進むたびに周囲の壁面が不気味に変形していくかのような錯覚を覚えさせた。それでも彼らの足取りが乱れることは決してなかった。




