第411話「風車のきしみ」
王城の最下層からさらに深く、地下の構造物へと繋がる大規模な換気風車。巨大な木製の歯車は、連結部の油が完全に切れた状態で、外部からの微風を受けてなおも虚しく回り続けていた。木と木が激しく擦れ合う高い音が、まるで巨大な怪物の呻き声のように、無人の地下通路の奥深くにまで反響している。
本来であれば、この異常音を検知した時点で、専属の職人たちが複数人で交代しながら、巨大な注油用の器具を持って修理に当たるべき案件だった。しかし、通路の入り口に設置された管理小屋には、破れた衣服と錆びついた工具が散乱しているだけで、人の気配は絶えて久しい。
下級の衛兵が一人、重い足取りで通路を通りかかったが、その歯車の悲鳴を聞いても足を止めることはしなかった。彼の懐には、未払いの俸給に関する抗議書面が虚しく折り畳まれたままになっている。
城内の中枢が機能していない以上、ここで施設の維持に尽力したところで、それを評価する者も、対価を支払う者も存在しない。衛兵はただ無感情に歯車を見上げ、そのまま光の射す地上出口へと歩き去っていった。
冷気は彼らの肌を容赦なく刺し、呼吸をするたびに肺の奥が凍りつくような錯覚すら覚えさせた。しかし、彼らはその過酷な環境すらも、すでに日常の一部として受け入れていた。




