第401話「歴史の集積」
城の奥深くにある薄暗い文書保管室で、オーリアスは自分の使い古された机の前に座っていた。手元には、古い記録を完全に削り取るための墨消しの道具が、いつも通り整然と並べられている。
だが、彼が棚から取り出して開くべき帳面は、もうどこにも残されていなかった。昨日までに、上官から指示されていた「ガルド・レイヴァン」に関するすべての名誉ある戦功記録は、一枚残らず綺麗に削り終えていたからだ。次の処理指示を出すべき上官は、今朝から一度も姿を見せていない。広い部屋の中には、オーリアス一人しかいなかった。周囲の頑丈な棚には、名前だけを消され、誰の功績か分からなくなった無数の歴史の骸が並んでいる。
これ以上、この城の中で消すべき過去の名前は残されていなかった。オーリアスは自分の指先を見つめた。爪の隙間には、何度洗っても落とすことのできない頑固な黒い墨の汚れが深く残っている。行うべき仕事は何もない。しかし、勤務の終了を告げて退出の許可を出す者もいない。
彼はただ、誰も来ない静まり返った部屋の中で、引き出しの奥を見つめながら時間が過ぎるのを待っていた。彼が消した歴史の重みだけが、誰もいない部屋の空気を完全に支配していた。オーリアスは一度も振り返ることなく、城の出口へと続く冷たい階段を静かに下りていった。




