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第384話「天秤の不動」
ゼルは、昨日と全く同じ場所にただ静かに佇んでいた。
王城前の広場。
民の足跡も、近衛兵の気配も完全に途絶えた白い石畳の上で、彼の影だけが朝の光を浴びて静かに伸びている。
城壁の向こうの最深部には、ヴァルディスがいる。
二人の間の距離は、最初に対峙したあの日から一歩も縮まってはいない。
しかし、二人を囲む王都の空気は、すでに完全に生命の気配を失っていた。
ゼルは目を動かすことなく、ただ静かに城の門を見つめていた。
彼の内に宿るのは、元凶に対する個人的な憤怒ではない。
それは、積み重なった罪の重さを正確に計測し、正しい罰を下すための、冷徹な法そのものだった。
カインもガルドも、すでに己の罪の報いを受けて表舞台から消え去った。
残された最後の駒であるヴァルディスが、自らの合理主義の檻の中で身動きを止めるときを、彼はただ待っている。
物理的な剣を振るう必要はなかった。
国としての制度が崩壊し、民が去り、すべてが空虚に還るそのプロセス自体が、この国に下された最大の裁定だった。
目に見えない天秤の針は、すでに完全に傾き、固定されようとしていた。




