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第378話「錆びゆく義務」
王都を守るための内壁の詰所。
数少なくなった近衛兵の一人が、壁の武器掛けから一本の槍を取り出し、古い布で穂先を拭いていた。
いくら強く擦り付けたところで、鉄の表面に浮き出た黒い錆を落とすことはできなかった。
武器を磨くための上質な油の配給が止まってから、すでに二週間以上の時が流れている。
彼らの装備は、敵との戦いによって破損したのではなく、ただ時間が経過するという事実の重みによって、使い物にならなくなっていた。
「……もう、これを磨く意味もないな」
兵士は、乾いた声で呟き、布を床に放り投げた。
詰所の窓からは、はるか遠くの正門前に立ち続けるゼルの姿が、陽炎のように微かに揺れて見えた。
あの男は、十日前の朝から一度も剣を抜いていない。
ただそこに静かに立ち、城を見つめているだけだった。
その言葉のない圧倒的な裁定の圧力が、詰所に残された兵士たちの戦う意志を、内側から磨り潰していた。
国を守るという義務感は、油の切れた機械のように錆びつき、機能しなくなっている。
兵士は、曇った槍を再び武器掛けに戻すと、冷たい長椅子に深く腰掛け、ただ朝が過ぎていくのを待った。




