第365話「書記官の選択」
文書保管室のオーリアスは、自分の引き出しの一番奥から、一冊の小さな帳面を取り出した。それは、公的な記録には決して載せることのない、彼個人が長年の勤務の中で書き留めてきた覚書だった。
城内の役人が何人減ったか、どの部署がいつ閉鎖されたか、その具体的な日付と名前が細い文字で記録されている。彼が国から命じられた仕事は歴史を消すことだったが、彼が自発的に行ったのは事実を書き残すことだった。部屋の外からは、誰の足音も聞こえてこない。
オーリアスはインク瓶の蓋を静かに閉め、ペンを箱の中へと片付けた。彼が消すべき過去の名前はもう残っておらず、彼に新しい命令を下す上司もいない。彼は自分の指についた黒い墨の汚れをもう一度見つめてから、私物の帳面を外套の内ポケットへと深く押し込んだ。
オーリアスは立ち上がり、椅子を机の下へと正しく収めた。彼がこの部屋に留まる理由は、完全に消失していた。彼は部屋の重い扉を閉め、鍵をかけることなく廊下へと歩き出した。
彼が去った後の文書保管室には、名前を消された無数の書類だけが、暗闇の中で静かに埃を被り始めていた。消された英雄たちの名前の代わりに、ここにはただ完全な静寂だけが残されていた。彼は一度も振り返らず、城の出口へと続く冷たい階段を静かに下りていった。




