表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏切られた俺だけが覚醒した 《契約支配(ドミネーション・コントラクト)》 ――奪われたすべてを、奪い返す 〜今さら謝ってももう遅い〜  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
361/444

第361話「朝の足跡」

王都中央区へと続く主要な大通りには、朝露に濡れた白い石畳がどこまでも静かに広がっている。かつては朝一番の市場に向かう群衆の活気ある声や、整然と隊列を組んだ近衛兵の革靴の音が忙しく響き渡る場所だった。


しかし、今朝の通りを歩く者の姿は一人もなく、ただ冷たい霧が地面を低く這うように流れている。一人の老いた御者が、自分の馬車の横に立ち、誰もいない通りをただじっと眺めていた。彼の馬車には、地方へ運ぶための空の木箱がいくつか積まれている。いつもなら、城門を通過する際に入念な荷物検査を行うはずの役人が、今朝は詰所の窓から顔を覗かせることすらしなかった。


御者は馬のたてがみを軽く撫で、静かに手綱を握り直した。


「……行くか」


彼は誰に言うでもなく呟いた。王都の中に留まっていても、これ以上新しく運ぶべき荷物も、それを買い取るだけの余力を持った商店も残されていない。馬車が動き出すと、車輪の軋む音だけが静まり返った街並みに不自然なほど大きく反響した。


御者は背後の王城を一度も振り返ることなく、ただ前方の開かれた街道だけを見つめてゆっくりと進んでいった。誰の指示でもなく、王都の中心から日々の営みが静かに、確実に外側へと溢れ出していた。


残されたのは、主を失った頑丈な建物と、ただ通りを通り抜ける冷たい風の音だけだった。生活という血が抜けた都市は、ただの巨大な石の塊へと変わりつつあった。誰もその変化を止めることはできず、街は静かに呼吸を止めるようにして、ただそこに横たわっている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ