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裏切られた俺だけが覚醒した 《契約支配(ドミネーション・コントラクト)》 ――奪われたすべてを、奪い返す 〜今さら謝ってももう遅い〜  作者: 竜太郎


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第360話「冷たい天秤」

ゼルは、昨日と全く同じ場所にただ静かに佇んでいた。

王城前の広場。民の気配が完全に消え失せ、静まり返った白い石畳の上に、彼は一人で立っている。

冷たい風が、高くそびえ立つ城のバルコニーから、彼の黒い髪を揺らして吹き抜けていった。


そのバルコニーの奥、薄暗い部屋の中にはヴァルディスがいる。

二人の間に、遮る壁はない。だが、言葉が交わされることも決してなかった。

南区が沈黙し、外からの物流が完全に途絶え、城内が高官を失って空虚になろうとも、ゼルの表情が動くことはなかった。

彼は、この国を力でねじ伏せるために剣を抜いたわけではない。

これまでに国家が積み重ねてきた底知れぬ罪の重さによって、制度が自ら傾き、音もなく沈んでいくその過程をただ見つめているのだ。


ゼルは、静かに視線を城の中枢へと向けた。

目に見えない罪を量る天秤の皿は、すでに片方が引き返せないほど深く、地面へと沈み込んでいた。

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