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第358話「開かれた城門」
王都を外部の脅威から守るための北門。
鉄で補強されたその巨大な門扉は、今朝もなぜか半分ほど開かれたままで固定されていた。
門を警戒するべき近衛兵の数はわずかに二人。
彼らは槍の柄を地面についたまま、虚ろな目で門の下を通り過ぎていく人々を眺めていた。
家財道具を小さな荷車にまとめた家族連れが、引き止められることもなく門の外へと出ていく。
兵士はそれを咎めない。名前を尋ねることも、通行の目的を問うこともしない。
かつて通行税を厳しく徴収していた臨時の役人は、もう詰所のどこにもいなかった。
「……門を閉めなくていいのか」
一人の兵士が、乾いた声で隣の同僚に尋ねた。
「閉めたところで、この城の中に誰も残らなくなるだけだ」
もう一人が表情を変えずに答えた。
強固な城門は、すでに外敵の侵入を防ぐための機能を失っていた。
そこにあるのは、ただ国から人が零れ落ちていくための、大きな穴だった。




