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第356話「絨毯の音」
城の東棟、かつて高官たちが頻繁に行き来していた重厚な廊下を、一人の近衛兵が通り過ぎていった。
彼の足音は、床に敷き詰められた最高級の絨毯に深く吸い込まれ、全く響かない。
並ぶ扉の一つがわずかに開いており、その隙間から室内の様子が覗けた。
そこは大きな会議室だった。
数日前まで、カインをはじめとする王国の重要人物たちが座って権謀術数を巡らせていた木製の椅子が、当時の形のまま静かに並んでいる。
長机の上には、主を失ったまま乾燥して固まったインク瓶が置かれたままだ。
彼らがどこへ連れて行かれたのか、近衛兵は知っていた。だが、それを口に出す者は城内のどこにもいない。
その事実を認めることは、自分たちが守っている王城がすでに中身のない張り子であることを認めるのと同じだったからだ。
会議室の奥は日の光が届かず、ひどく暗かった。
かつて巨大な国家の意思を決定していた空間は、いまや誰も立ち入ることのない、ただの冷え切った空洞へと変わっていた。




