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第352話「七日目の色彩」
リリアは朝の光の中で、机の上に広げた大きな王都全図を見つめていた。
南区と記された区画には、昨日まで「青」の印が点々と並んでいた。兵士の数が減少している場所を示す、彼女だけの記録だ。
しかし、今朝届いた各詰所からの定時報告には、具体的な数字が一切記載されていなかった。
正確には、報告書という紙自体が、どこからも届かなかったのだ。
リリアは静かに筆を執り、黒い墨をたっぷりと含ませた。
そして、地図上の南区の境界線に沿って、迷いのない手つきで筆を動かしていく。
青い印の上から、太い黒の線が引かれていく。それは「完全な機能の停止」を意味する色彩だった。
彼女の事前の計算通りだった。
ちょうど七日。
南区は、王城の命令も、兵の気配も、何一つとして届かない空白の地へと変わった。
リリアは筆を置き、墨が乾くのをじっと待った。
誰かが物理的に占領したわけではない。
世界が勝手に動き、勝手に色を変えていく。
彼女が見つめる地図の半分は、すでに以前とは全く異なる不気味な黒に染まっていた。




