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第346話「ゼルの視点」
ゼルは朝、王城を見る。
毎朝同じ場所に立つ。
変化を見るためではない。
変化を測るためだ。
昨日と今日で何が違うか。
人の流れ。声の量。空気の重さ。
今日は兵士が少なかった。
五人いるはずの交代が、三人だった。
作戦があるわけではない。
指示を出したわけでもない。
なのに、減っている。
ゼルはそれを確認して、次へ視線を移した。
正門の門番が、以前より動作が遅い。
判断を、誰かに確認してから行っている。
自信が消えている。
それも、指示した結果ではない。
ただいることで、何かが変わる。
ゼルはそれを十年前から知っていた。
地下施設の中で。
存在するだけで、周りが変わっていった。
だから閉じ込めた、と彼らは言っていた。
ゼルは視線を正門から外した。
今ならその理由が分かる。
存在は、言葉よりも重い。
だから今、ゼルはここに立っている。
何も言わずに。それだけでいい。




