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裏切られた俺だけが覚醒した 《契約支配(ドミネーション・コントラクト)》 ――奪われたすべてを、奪い返す 〜今さら謝ってももう遅い〜  作者: 竜太郎


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345/444

第345話「地方の声」

 街道の宿場町で、旅人が話している。


「王都、本当に変わったのか」


「変わったというより……静かになった」


「静か?」


「人が減ったんじゃない。動きが減った」


「違いは」


「……人はいる。でも、みんな次を待ってる」


 宿の主人が酒を注ぎながら、黙って聞いていた。


 旅人はもう一人いた。王都帰りの商人だった。


「ゼルっていう名前、知ってるか」


「ああ、最近よく聞く」


「俺は本人を遠くから見た」


「どうだった」


 商人は少し考えた。


「……動かなかった」


「動かない?」


「王城の前に立ってた。ずっと。何もしてなかった」


「それで王都が静かになったのか」


「そうじゃないと思う」


「じゃあ何が」


 商人はまた少し考えた。


「……ただいるだけで、何かが変わる人間っているんだよ」


 宿の主人が、注いでいた酒を止めた。


「……昔、そういう人間の話を読んだことがある」


「本で?」


「歴史書で」


 旅人が黙った。


 歴史書に載る前の人間が、今ここにいる。

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