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第342話「最後の番」
ユクトは城壁の上で番をしている。
十八年間、ずっとここに立ってきた。
父も番兵だった。
祖父も番兵だった。
だからユクトも番兵になった。
それだけのことだった。
今朝、隣の番兵が来なかった。
代わりに来た上官が言った。
「今日から、お前一人でここを守れ」
「一人で、ですか」
「そうだ」
「理由は」
「ない」
上官は行った。
ユクトは一人、城壁の上に立った。
本来なら五人がかりで見張る区画だ。
東を見る。西を見る。下の街を見る。
人はいる。動きもある。
いつもと変わらない街の光景。
だが、何かが違う。
何が違うのか、うまく言えない。
静かすぎる、のかもしれない。
王都がこれほど静かな朝を、ユクトは知らなかった。
十八年、ここに立ってきた。
それでも、今朝の静けさは初めてだった。
東の空が白んでいる。
ユクトはただ、城壁の上で番を続けた。
誰かが来るまで、それだけ続けるつもりだった。




