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第341話「リリアの手帳②」
リリアは毎朝、手帳に書く。
今日の日付。気温。空の色。
それから、昨日起きたことを短くまとめる。
今日のまとめを書こうとして、手が止まった。
昨日、王城の南門で兵士が三人少なくなっていた。
退役ではない。ただいなくなった。
聞けば、朝から来ていないということだった。
ゼルに報告するべきか迷った。
迷いながら、報告した。
ゼルは聞いてから、少し間を置いて言った。
「そうか」
それだけだった。
リリアは今もその言葉の意味を考えている。
驚いていないのか。
知っていたのか。
それとも、驚く必要がないほど自明のことなのか。
どれなのかは分からない。
ゼルの言葉は短すぎて、いつも何かが足りない。
リリアは手帳に書く。
「南門——兵三名、未確認。ゼル報告済み。返答:そうか」
それだけ書いて、次の行に空白を作った。
空白に意味を持たせた。
まだ分からない、という意味の空白だった。
手帳を閉じてから、もう一度開いた。
「そうか」という字を、もう一度見た。




