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裏切られた俺だけが覚醒した 《契約支配(ドミネーション・コントラクト)》 ――奪われたすべてを、奪い返す 〜今さら謝ってももう遅い〜  作者: 竜太郎


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340/444

第340話「荷造りの朝」

 王都の商人ジルダは、今朝から荷造りをしている。


 店ではなく、家の荷造りだ。


 妻が訊いた。


「どこへ行くの」


「バルカスだ」


「なぜ」


「……商売のためだ」


 妻は何も言わなかった。


 子供たちはまだ眠っている。


 ジルダは棚から壺を一つ取り出した。

 金の壺だ。緊急用の、家族しか知らない壺だった。


 中を確認する。枚数を数える。


 足りるか、足りないか。


 足りるだろう、たぶん。

 バルカスならしばらくは商売になる。

 王都はもう、商売にならない。


 なぜかは言えない。でも、分かっている。


 今の王都に残ることは、流れに逆らうことだ。

 川の流れが変わったなら、船も変えるべきだ。

 それが商人というものだ、と父から聞いた。


 妻が台所から出てきた。


「朝飯は」


「食べる」


「……いつ出る」


「明後日」


 妻は頷いた。それだけだった。


 ジルダは壺を布でくるんで、荷物の中に入れた。

 子供部屋の方を、一度だけ見た。

 それから、また荷造りに戻った。

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