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第339話「観察者」
ヴァルディスは今日も、窓から王都を見ていた。
書類は机の上にある。
読まなければならないものが、三十枚以上ある。
だが今日は、読む気になれなかった。
窓の外、広場に人が集まっている。
何かを話し合っているようだった。
遠すぎて聞こえない。
だが声の調子は聞こえる。
怒っているわけではない。
怯えているわけでもない。
静かに、だが確かに何かを決めている声だった。
ヴァルディスは少し首を傾けた。
人間というのは、恐怖には動じない。
恐怖は押さえられるからだ。
だが、諦めには抵抗できない。
諦めは、恐怖とは違う。
押さえ込もうとすると、逆に広がる。
あの広場の人間たちは、何かを諦め始めている。
それが何なのか、ヴァルディスには分かっていた。
分かっていて、対処法が思い浮かばなかった。
部屋に一人、静かに立っている。
書類はまだ、三十枚以上ある。
読まれないまま、机の上にある。




