335/444
第335話「ゼルの夜」
夜になってもゼルは広場にいた。
椅子がある。
毛布がある。
リリアが用意した。
ゼルは断らなかった。
必要なものは受け取る。
それだけのことだ。
夜の広場は静かだ。
露店は閉まっている。
人通りは少ない。
遠くで犬が鳴く。
百二十二日目が終わろうとしている。
ゼルは目を閉じない。
暗闇の中で、王城を見ている。
灯りが減った。
以前より確実に。
数えている。
窓の灯り一つひとつを。
消えた灯りは戻らない。
それでいい。
戻る必要はない。
風が吹く。
ゼルは動かない。
ただそこにいる。
それが今の仕事だ。
夜が深くなる。
灯りがまた一つ、消えた。




