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第326話「市場の算術」
王都中央市場。
老いた女商人が帳簿を開いている。
数字を確認する。
先月より仕入れが減った。
値段は上がった。
客の数は変わっていない。
だが買う量が減った。
全部つながっている。
三十年、この場所で商売をしてきた。
王が変わった。
戦争があった。
飢饉もあった。
それでも市場は動いた。
今回は違う。
戦争ではない。
飢饉でもない。
ただ、王都が信用を失っている。
それだけで、こんなに変わる。
帳簿を閉じる。
隣の店を見る。
昨日まであった干し肉が今日はない。
仕入れが来なかったのか。
それとも店主が判断したのか。
聞く気にはなれなかった。
数字は正直だ。
嘘をつかない。
それが怖い。




