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第325話「城壁の声」
城壁の上、見張りが二人いる。
風が吹く。
どちらも喋らない。
以前はもっと賑やかだった。
交代のたびに誰かが冗談を言った。
今はない。
人が減った。
残った者は疲れている。
一人が遠くを見る。
広場の方角。
ゼルの姿は見えない。
距離がある。
だが存在は知っている。
知らない兵はもういない。
「……まだいるのか」
呟く。
もう一人は答えない。
答える気力がなかった。
風だけが通り過ぎる。
城壁はある。
だが守る意味が、少しずつ変わってきていた。
外からではなく。
内側から、何かが崩れていく。
そういう感触だった。




