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第324話「ゼルが見ているもの」
ゼルは広場の石畳を見ていない。
王城を見ているわけでもない。
目は開いている。
だが視線は遠い。
百十八日目。
数えている。
近衛の数。
商会の動向。
貴族街の灯り。
地方から来る視線の増え方。
全部、頭の中にある。
リリアが朝の報告を終えた。
城門東、一人減。
ゼルは頷く。
予測より三日早い。
それだけのことだ。
「……次は西門です」
リリアが言う。
「分かっている」
短く答える。
広場に子供が走り込んでくる。
笑い声。
石畳を蹴る音。
ゼルはそちらを見ない。
だが耳には届いている。
この街の民は関係ない。
最初からそう決めている。
罪は罪を犯した者だけが払う。
それだけだ。
風が吹く。
ゼルは動かない。




